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しばらく「宇宙物理学」のブログになります。
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2020.11.24 Tuesday

宇宙物理学  原子

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    ***** 基礎物理学 > 素粒子物理 *****

    区切りの良いところで、基礎物理学を勉強しようと思う。
    今回は素粒子物理だ。



    原子の構造
     
         図は KEK のサイトからお借りしました。 → こちら

    原子の構造は、理科の授業でいつ習うのだろう? 中学?高校?
    原子は中心に「原子核」があって、そのまわりを「電子」が回っている、と習った。
    地球が太陽のまわりを回っているように、電子も原子核のまわりをくるくると回っているのだと。

    その原子核にも構造があり、「陽子」と「中性子」でできている。
    陽子の数は原子番号と呼ばれる。
    陽子は電荷を持っているので反発しあう。
    そのために電気的に中性な中性子が一緒にいたほうが安定なのである。
    中性子の数は陽子の数と同じとは限らないし、陽子の数が同じでも中性子の数が異なる原子が存在する。
    それらは同位体と呼ばれる。

    そしてさらに、陽子や中性子はクォークと呼ばれるいくつかの粒子でできている。
    今のところ、クォークはそれ以上分割できない素粒子(基本粒子)だと考えられている。

    それぞれの大きさは、大まかに言うとこんなものだ。
      ・原子 : 10-10
      ・電子 : 10-18m 以下 (大きさはゼロかもしれない)
      ・原子核 : 10-15
      ・クォーク : 10-18m以下



    電子雲

    原子の中で電子はどのように振る舞っているのだろうか?
    電子が原子核のまわりを回っているという描像は、それほど間違ってはいないだろう。
    しかし、中心から一定の距離の円軌道を、粒状の電子がくるくる回っている、という描像は古典物理学のものだ。

    では量子論ではどうなるのだろう?
    電子がたくさんあると話が厄介になるので、電子が1個しかない水素原子で話をする。
     

    左側は理科で習ったモデル(描像)だ。
    右側は量子論によるモデル(描像)で、水素原子の電子はもやもやと描かれている。

    でも、勘違いしないで欲しい。
    決して電子がぼやっと大きく拡がっているわけではないのだ。

    原子の中の電子は波の性質を強く持っているので、どこそこに存在すると示すことができない。
    量子力学では、電子がどのあたりに存在しそうかという存在確率しか示すことができないのだ。


    こんなふうに考えてみてはどうだろう?
    (架空の話で)原子の内部の電子を見ることができるハイパー顕微鏡が開発されたとしよう。
    その顕微鏡を使って水素原子の内部の写真を撮る。
    写真を撮るという操作は「観測操作」であるから、電子は観測されたとたんに粒子として現れる。
    だからその写真には、電子がひとつぽつんと写る。
    さらにもう一度、顕微鏡写真を撮る。
    すると、今度はさっきとは別の場所にぽつんと電子が写る。
    このようにして何十万回も写真を撮り、それらを重ねて出来上がったのが、上に示したもやもやした図だ。
    色の濃い部分は電子の存在確率が高く、白い部分は電子が存在する確率はゼロである。
    つまり図は電子1個の存在に対する「確率分布」を表しており、これが量子力学に基づいた「水素原子像」なのだ。

    なお、実際の確率分布は、球殻状に3次元に広がっている。
    図に示してあるのは、その断面図だ。

    この原子像では、たったひとつしかない電子の位置がはっきり示されておらず、電子の存在するであろう全ての位置がもやもやと描かれている。
    この「もやもや」は雲のように見えることから「電子雲(electron cloud)」と呼ばれている。
    しかし空の雲のように実体のある雲ではない!



    電子の軌道

    電子に許された「状態」を「軌道」と呼ぶことにする。
      本当は軌道という言葉は使いたくないのだが、他に適当な言葉が無いのだ!

    原子内の電子の状態(振る舞い)は、原子核による静電ポテンシャル中の3次元シュレーディンガー方程式を解くことで得られる。
    一般にはコンピュータを使った数値計算が必要になるが、水素原子の場合は解析的に解けるという。
    解は3つのパラメータ(量子数)で特徴づけられる。
    主量子数(n),方位量子数(l),磁気量子数(m)で、どれも整数だ。

    主量子数(n) : n=1,2,3,,,
      ・原子核からの平均距離やエネルギーに対応する
      ・高校の化学で習う「電子殻」を表す数
       電子殻の名前は、内側から順に、K殻,L殻,M殻,N殻、等

    方位量子数(l) : 0 から n-1 までの整数
      ・軌道の形を決める(電子の周回に対応)
        0 → 丸い(等方的)
        1 → 2方向に直線状に延びる
        2 → 4方向に十字型に延びる

    磁気量子数(m) : −l から +l までの整数
      ・軌道の向きに対応する
        X方向を向くのか、Y方向を向くのか、等


    量子数の組と電子の軌道名の対応を表に示す。
     

    軌道名において、数字は主量子数を示し、アルファベットは方位量子数を示す。
    一番上の1s軌道がエネルギーが最も低く、下にいくほどエネルギーが高くなる。
    1つの軌道には同じ状態の電子は1つしか入れない。
    ただし、電子はスピンを持っているので、スピンが反対向きの2つの電子が入ることができる。


    水素原子は電子が1個だ。
    通常は最もエネルギーが低い1s軌道に入る。

    例えば、酸素原子は電子が8個だ。
    エネルギーの低い軌道から入っていくので、1s軌道に2個入り、2s軌道に2個入り、2p軌道に4個入る。
    2p軌道には「席」が2個空いているが、この空いている席の数が、その原子の性格を決めているのだ。



    水素原子の電子雲

    電子雲の項のところで示した水素原子の電子雲の形は、主量子数(n)が1の場合の、最もエネルギーが低い場合だった。

    量子数によって水素原子の電子雲がどのように変わるかを下図に示す。
    量子数、特に方位量子数(l)と磁気量子数(m)によって、形が大きく変化する。
    何とも不思議な世界だ!
     



    原子の大きさ

    原子の大きさとは何だろう?

    原子核は電子をまるで雲のようにまとっているので、原子同士が近づくと、互いの電子同士の距離が縮まって反発しあう。
    だから原子が近づいたときに互いに排除しあう範囲を、それぞれの原子の大きさと見なしてはどうだろう?
    つまり直観的には、電子雲の広がりを原子の大きさと捉える、ということだ。

    実際には、原子の大きさ(原子半径)には幾つかの定義があり、場合によって使い分けられるそうだ。


    原子の大きさは、原子番号の増大と共に、単純に大きくなるわけではないという。
    周期律表で見ると、左下が大きくて右上が小さくなるそうだ。
     



    原子の中身はほとんど空っぽ

    原子の大きさに比べて、その構成要素である原子核や電子の大きさはけた違いに小さい。
    標準的な原子では、中心にある原子核の大きさは原子に比べて約10万分の1ほどしかない。
    だから、原子の中身はほとんど空っぽなのだ。
    体積で考えると、何と99.9999999999999%が何もない空間なのだ。
     


    太陽質量の8倍以上と重い星の最後は、超新星爆発を起こし、中心部の鉄のコアは中性子星となる。
    太陽はそれほど質量が大きくないので、中性子星ではなく白色矮星になる。

    太陽の半径は70万kmだが、仮に中性子星になったらそれが10kmほどに潰れてしまうという。
    中性子星では、電子が原子核の陽子に吸い込まれるとイメージしてよい。
    そうすると、今まで反発しあっていた電子がいなくなるので、空っぽだった空間が無くなって、原子核(中身は中性子だけ)が互いに触れ合うまでになるわけだ。


    中性子星のことを考えると、原子の中身がほとんど空っぽなのは、重要な意味をもっていたのだ。

    原子の大きさの定義のひとつに「ボーア半径」というものがある。
    その値は、自然定数の組み合わせだけで求めることができるという。
    これは理詰めで考えれば当たり前なのか、それとも偶然なのか、それとも、、、。

    この世界(宇宙)は奥が深い。


     
    参考図書
      ・「量子論で宇宙がわかる」、マーカス・チャウン、(訳)林一、集英社新書、2007年
      ・「破られた対称性 素粒子と宇宙の法則」、佐藤文隆、PHPサイエンス・ワールド新書、2009年
      ・「宇宙は何でできているのか」、村山斉、幻冬舎新書、2010年
      ・「量子力学はミステリー」、山田克哉、PHPサイエンス・ワールド新書、2010年


     








    2020.11.21 Saturday

    宇宙物理学  銀河の衝突・合体の痕跡

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      ***** 宇宙の構造 (4) 銀河 > 銀河の相互作用、衝突・合体 *****


      ここでは、微かな痕跡を探っていく。


      痕跡は時間と共に消えていく

      円盤銀河に衛星銀河が呑み込まれる場合を考えてみる。
      一般に、衛星銀河の質量は母銀河の質量の1/10から1/100程度しかない。
      そのため、合体しても痕跡は華々しくできるわけではない。
      また合体に要する期間は数十億年であるが、銀河は2億年程度で1回転してしまうために、痕跡は合体の期間中に薄められ、見えにくくなってしまう。



      銀河の衝突・合体の微かな痕跡

      近傍の銀河では、観測技術の進歩もあって、微かな痕跡も探れるようになってきた。
      それによって、思わぬ事実が明らかになってきている。

      痕跡には以下のようなものがあるようだ。
        ・ウォープ構造
        ・ガスやダストの拡がり
        ・他の銀河とのガスの繋がり
        ・星流(スター・ストリーム)




      [ESO 510-G13] ウォープ構造
       
           画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

      ハッブル宇宙望遠鏡が可視光で撮影した銀河で、「M104」に似ている。
      エッジオン銀河で、円盤部(ディスク)の星間物質が銀河中央の明るい光を遮って、シルエットのように見えている。

      円盤部がうねっているように見えるが、これは「ウォープ(warp)構造」と呼ばれるものだ。
      これは、最近近くの銀河と衝突し、それを飲み込んでいることを示している。

      外側の領域、特に画像の右側では、ねじれた円盤に暗い塵だけでなく、青い星の明るい雲も含まれていることが分かる。
      これは、高温の若い星が円盤部に形成されていることを示している。



      [天の川銀河] ウォープ構造、星流(スター・ストリーム)

      天の川銀河は棒渦巻銀河だが、その銀河円盤は完全に平らではない。
      片側がやや上に反り返り、もう一方の側はやや下向きに反り返る、という歪み(warp)を持っていることが、1950年代から知られていたそうだ。
      また、この歪みの位置は、回転するコマの首振り運動のような「歳差運動」と呼ばれる動きによって、円盤の中を徐々に移動している。

      ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」が観測した天の川銀河の星のデータを使い、円盤の歪みの歳差運動が詳しく解析された。
      その結果、歪みの位置が歳差運動で銀河円盤の中を一周するのにかかる時間は約6億〜7億年であることが明らかになった。
      銀河円盤の歪みは、天の川銀河に他の銀河が衝突するといった現象が原因で生じたのではと考えられている。
       
           画像は ESA のサイトからお借りしました。 → こちら


      また、天の川銀河には、幾つかの星流(スター・ストリーム)が見つかっている。
        → こちらの記事
      これらは、天の川銀河と矮小銀河の接近遭遇の痕跡だと考えられている。
      まず、天の川銀河に極めて近づいた矮小銀河が、重力(正確には潮汐力)によって引き裂かれる。
      そして天の川銀河のまわりを回るにつれて、星が矮小銀河からはぎ取られ引きずり出されて星流となるのだ。



      [アンドロメダ銀河] 星流(スター・ストリーム)、他の銀河とのガスの繋がり

      アンドロメダ・ストリーム(アンドロメダの涙)
        → こちらにも記事がある
      アンドロメダ銀河の周りの淡い構造を調べてみると、南東側に淡く吹き出たような構造が見つかった。
      この吹き出た構造は「アンドロメダ・ストリーム」(アンドロメダの涙)と呼ばれている。
      これは約10億年前に小さな銀河が衝突した痕跡のようだ。
      その銀河の推定される質量は、小マゼラン雲程度だという。


      SDSSのデータから、アンドロメダ銀河の近くに巨大な星の塊が発見された。
      これは、これまで知られていなかった伴銀河か、アンドロメダ銀河の潮汐力によって引き裂かれた銀河の残骸かもしれない 。
      アンドロメダ銀河の北東に位置することから「アンドロメダNE」と名付けられた。
      この星の塊は巨大で、見かけは満月よりも大きい(比較のために満月の画像が添えられている)。
      ただ、私にはアンドロメダ銀河の周りに大きく広がっている雲のような構造のほうが気になる。
       
           画像は SDSS のサイトからお借りしました。 → こちら


      PAndAS(パンダス)計画というのがある。
        → こちらにも記事がある
      銀河の過去を調べるために、衝突したときに銀河から外に放り出された星やガスの痕跡を探した。
      その結果、アンドロメダ銀河を取り囲む、淡い構造が想像以上に広がっていることが分かった。
      アンドロメダ・ストリーム(アンドロメダの涙)以外にも星流(スター・ストリーム)が見つかった。
      さらに、端正な姿の渦巻銀河であるM33にも、淡い不思議な構造があることが分かった。
       
           Image credit : Australian National University /
           NSF’s National Optical-Infrared Astronomy Research Laboratory.

      アンドロメダ銀河とさんかく座のM33との関係を調べているが、両者には数十億年に及ぶ遭遇の歴史があるという。



      [M81] ガスやダストの拡がり  → こちらにも記事がある

      「M81」「M82」「NGC3077」は、M81銀河群の主要メンバーである。
      左は可視光画像で、右は中性水素の電波画像だ。
      水素ガスは銀河間を繋ぐように分布しており、重力相互作用を物語っている。
       



      [ソンブレロ銀河(M104)] ウォープ構造、ガスやダストの拡がり  → こちらにも記事がある

      暗黒の帯はダストや冷たい分子ガス雲で、背後からの光を吸収したり散乱したりする。
      そのため「ダスト・レーン」とも呼ばれている。
      よく見ると、両端に僅かだがうねりが見えている。
       
           画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら


      「ソンブレロ銀河(M104)」は、本体の数倍も大きな淡い構造に包まれている。
      さらに、南北方向には土星のリングのような構造が見える。
      これは衛星銀河が合体した痕跡のようだ。
      M104本体からはかなり離れているので、まだストリーム構造が消えずに残っているらしい。

      画像は著作権の問題で掲載できないので、リンク先を直接見て欲しい。
        → こちら

      Students for the Exploration and Development of Space (SEDS) は、
      宇宙探査と宇宙開発を促進するための、国際的な学生組織だ。


       
      参考図書
        ・「巨大ブラックホールと宇宙」、谷口義明、和田桂一、丸善出版、2011年
        ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年
        ・「アンドロメダ銀河のうずまき」、谷口義明、丸善出版、2019年


       








      2020.11.19 Thursday

      宇宙物理学  銀河の相互作用

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        ***** 宇宙の構造 (4) 銀河 > 銀河の相互作用、衝突・合体 *****


        今まで用語を間違って使っていたようだ。
        衝突や合体をせずに、互いに近くを通り過ぎる場合に引き起こされる現象を、「相互作用」と呼ぶと思っていた。
        しかしこれは「接近遭遇(ニアミス)」と呼ぶようだ。
        そして、接近遭遇,衝突,合体、の全てで引き起こされる現象を「相互作用」と呼ぶようだ。



        銀河の相互作用

        銀河群や銀河団など、銀河が密集した場所では、2つあるいはそれ以上の銀河が、重力的に引き寄せ合ってお互いに影響を及ぼし合い、時には衝突・合体する場合もある。
        これを銀河相互作用と呼ぶ。
        こうした銀河相互作用、特に衝突・合体は、銀河の性質やその後の進化に大きな影響を与える。

        ULIRG(超高光度赤外線銀河)は、そのほとんどが、乱れた形態を示しており、ガスを豊富に持つ円盤銀河同士の衝突・合体であると考えられている。
        これを「湿った合体(wet merger)」と呼ぶ。
        銀河の衝突合体において、星同士が衝突することは無いが、粘性を持つガスは合体の過程で急速な角運動量を失ってコンパクトな回転する円盤を形成する。
        そこでは爆発的な星生成が起こり、合体後は急速にガスを消費しつくして、楕円銀河に進化していくと考えられている。

        ガスをほとんど持たない、楕円銀河同士の衝突合体もある。
        これを「乾いた銀河合体(dry merger)」と呼ぶ。

        赤方偏移が2から3という時代に、空間的にコンパクトで、すでに星形成を止めた質量の大きな銀河が相次いで見つかっている。
        こうした赤くコンパクトな楕円銀河は、上記の湿った合体によって形成されたのかもしれない。
        そして、さらに乾いた銀河合体を経て、現在の宇宙に見られるような巨大楕円銀河へと進化するのかもしれない。
        ただし、宇宙の初期(赤方偏移が4以上)の時代に、一度の爆発的な星形成で一気に大量の星を作って楕円銀河が生成されるというシナリオもある。


        同程度の質量を持つ2つの銀河の衝突・合体は「メジャー・マージャー」と呼ばれる。
        大きな銀河とそれよりずっと小さい銀河の衝突・合体は「マイナー・マージャー」と呼ばれる。
        この場合は、小さい銀河が呑み込まれるといったほうが適切かもしれない。



        銀河同士の相互作用による特徴的な形態

        銀河の衝突と言っても単純ではなく、いろいろな衝突の仕方がある。
        少し考えるだけで、次のようなパラメータがあることに気づく。
          ・どのくらいの質量の銀河がぶつかってきたか?
          ・そのような方向からぶつかってきたか?
          ・いつ、ぶつかってきたか?


        衝突の仕方で、銀河の形はいかようにも変形していく。
        それでも、以下のように形態に特徴的なパターンを示すことが多い。
          ・歪み(非対称)
          ・くっきりとした渦巻腕
          ・リング構造
          ・シェル構造
          ・尾(伸びた細い紐状の構造)

        ただし、子持ち銀河(M51)のようにほとんど変形を受けていないものもあり、相互作用による形態への影響の程度はまちまちである。



        銀河同士の衝突合体のコンピューターシミュレーション

        2つの同様な円盤銀河が衝突・合体する場合で、時間の単位は10億年だ。
         
             (Credit : Max-Planck Institute of Astrophysics)

        銀河が初めて最も接近するとき、潮汐力によって円盤が変形される。
        同時に、外側の星とガスは弧を描く軌道に放出されて尾を形成する。
        物質が互いの方向に引き寄せられ、分離している銀河の間に橋が架けられる。
        これらの橋は、銀河が2回目の遭遇のために戻ってきたときに破壊される。
        しかし、尾は長く生き残って成長する。
        銀河の中心が合体して楕円銀河を形成すると共に、円盤は破壊される。



        銀河同士の衝突合体のイメージ

        これは、6つの異なる銀河の画像を並べて、衝突・合体の様子を再現したものだ。
         
             画像は ESA のサイトからお借りしました。 → こちら

          1) 相互作用の最初の兆候として、接近する銀河から塵とガスを引き離して橋が形成される。
          2) 銀河の外側の範囲が触れ合うと、ガスと塵の長い尾が伸びて、コアを包み込むように後退する。
          3) これらの長い尾は相互作用の特徴であり、衝突後も長く続く可能性がある。
          4) 銀河のコアが互いに近づくと、それらのガスと塵の雲は劇的に加速され、衝撃波が形成される。
          5) ガスと塵は活発な中心領域に集まり、スターバーストが起こる。
            塵の雲が形成されると、それらは若い星の放射で加熱され、空で最も明るい赤外線天体となる。
          6) いくつかの銀河は、非常に特徴的な様相を示す。
            銀河と銀河の間を横切るダストレーン
            長く伸びる星とガスの長いフィラメント
            銀河の形の変形(ねじれ)
            スターバーストによる鮮やかな青い星団



        相互作用銀河 ハッブル・コレクション_2008
         
             画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

          上段 Arp 148、 UGC 9618、 Arp 256、 NGC 6670
          中段 NGC 6240、 ESO 593-8、 NGC 454、 UGC 8335
          下段 NGC 6786、 NGC 17、 ESO 77-14、 NGC 6050


        これは、ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ(1990年4月24日)18周年を記念して、2008年4月にリリースされたものだ。
        銀河どうしが近づくと互いの重力によって変形したり、また銀河どうしが衝突・合体することもある。
        これを見ると、銀河の相互作用にはさまざまなものがあることが分かりる。




        以下に、相互作用する銀河で姿形が面白いなと思ったものを紹介する。
        幾つかは「ハッブル・コレクション_2008」とダブっている。



        [Arp272 (NGC6050、IC1179)]
         
          画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE からお借りしました。 → こちら

        ヘルクレス銀河団内で、2つの渦巻銀河が衝突している場面だ。
        2つの渦巻銀河は、すでに1本の腕で繋がっているようようだ。
        その途中に見える塊は小さな銀河のようにも見える。



        [HCG90]
         
             画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

        1980年代、カナダ人の天文学者ポール・ヒクソンが「コンパクト銀河群」のカタログを作成した。
        これらは、孤立した「散在」銀河と高密度の銀河団に属する銀河の群れ、との間の中間的な密度環境にあると思われる。

        これは「ヒクソン・コンパクト銀河群90」の画像である。
        2つの楕円銀河の間にある、おそらくかつては渦巻銀河だった銀河が、重力の潮汐力によって引き裂かれている。
        この現象は、このような銀河群環境に置かれた銀河が、ときに経る激烈な進化のプロセスを示している。




        [NGC4650A]
         
             画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

        ポーラー・リング銀河
        バルジのように見えるのは独立した1つの「S0銀河」で、それを垂直方向から見ている。
        そして、円盤のように見えるのは、このS0銀河に降ってきたガスに富む円盤銀河の残骸である。
        この銀河にもウォーブ構造が見える。



        [車輪銀河]
         
             画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

        外側と内側にリングが見える。
        2つのリングの間には車輪のスポークのような構造も見える。
        右側に見える2つの銀河のうち、上側の銀河が車輪銀河に衝突した銀河だと考えられている。
        衝突は約2億年前に起きた。



        [Hoag's Object]
         
              画像は APOD からお借りしました。 → こちら

        1950年にアート・ホーグが発見した「Hoag's Object」は環状銀河の代表的な例だ。
        外側にはリングがあり、大きくて比較的若い青色の恒星が多く、非常に明るい。
        対照的に、中心部のボール状の構造の星々は古いて赤い。
        2つの間の「ギャップ」は、 ほぼ完全に暗く見えるが、ほとんど見えないほど暗い星団が含まれている可能性がある。



        [PGC6240]
         
             画像は HUBBLESITE からお借りしました。 → こちら

        「PGC 6240」は楕円銀河で、非常に明るい中心を取り囲むように、星で構成された何重ものシェル(殻)がある。
        このシェルはとても淡いが、全体としてバラの花のようにも、貝殻のようにも見える。
        シェルの幾つかは銀河の中心近くに形成されているが、銀河から切り離されたように見えるシェルもある。
        これらは、最近の銀河の合体の結果であると考えられている。


         
        参考図書
          ・「巨大ブラックホールと宇宙」、谷口義明、和田桂一、丸善出版、2011年
          ・「宇宙のはじまりの星はどこにあるのか」、谷口義明、メディアファクトリー新書、2013年
          ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年


         








        2020.11.18 Wednesday

        宇宙物理学  特異銀河

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          ***** 宇宙の構造 (4) 銀河 > 銀河の相互作用、衝突・合体 *****


          ハッブルが不規則銀河に分類したものの中で大きな銀河は、今では「特異銀河」と呼ばれることが多い。
          特異銀河の中には、近づきすぎたために互いの重力で大きく変形した「相互作用銀河」や、爆発的な星形成が起きている「スターバースト銀河」などがある。



          アープ・アトラス

          アープ・アトラス(Atlas of Peculiar Galaxies)は、ホルトン・アープが編さんした特異銀河の天体カタログである。
          合計338個の銀河が収録されており、1966年にカリフォルニア工科大学から第1版が発行された。
          パロマー天文台で撮影された写真を調べ、特異な形をした銀河を探してリストアップしたのだ。

          カタログにはその見かけの順に銀河が並べられている。
            001番−101番 : 渦巻銀河
            102番−145番 : 楕円銀河
            146番−268番 : 不定形の銀河や分裂しているように見える銀河
            269番−327番 : 多重銀河、スーパーウインド、長いフィラメントを持つ銀河
            333番−338番 : 上記のどれにも当てはまらない銀河


          以下に、適当に選んだものを紹介する。
          どれも姿形が面白くて、かなり多くなってしまった。



          [Arp26、M101、NGC5457]  渦巻銀河(おおぐま座の回転花火銀河)
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE のサイトからお借りしました。 → こちら

          渦状腕の構造が非対称形で、1本の腕が他よりもかなり太く見える。



          [Arp37、M77]  渦巻銀河、セイファート銀河
           
               画像は NASA HUBBLE's MESSIER CATALOG からお借りしました。 → こちら

          中心部が明るく輝くセイファート銀河である。
          近くの低表面輝度銀河と相互作用している可能性がある?



          [Arp41、NGC1232]  渦巻銀河
           
               画像は ESO のサイトからお借りしました。 → こちら

          渦状腕が不自然に曲がっているように見える。
          左上に見える伴銀河が、その原因になっているのかもしれない。



          [Arp77、NGC1097]  棒渦巻銀河、セイファート銀河
           
               画像は ESO のサイトからお借りしました。 → こちら

          明るい銀河核を持つセイファート銀河である。
          中心には超大質量ブラックホールがあり、その周囲では爆発的星形成が行われている。
          近くには2つの伴銀河があり、3つの銀河は過去に相互作用を行っていたと考えられている。



          Arp85、M51]  渦巻銀河(子持ち銀河)
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE のサイトからお借りしました。 → こちら

          小さな楕円銀河「NGC5195」と相互作用していて、両方の銀河の形が歪んでいる。
          渦巻銀河の腕は引き延ばされて、2つの銀河の間に恒星とガスのブリッジが形成されている。



          [Arp87、NGC3808]  楕円銀河+不規則銀河
           
               画像は APOD からお借りしました。 → こちら

          相互作用銀河のペアだ。
          微かに見える星のひもで繋がっている2つの銀河は、やがて絡み合い、合体してひとつの銀河になる運命にある。
          左側の銀河を取り巻く青い星の光の輪は、相互作用によって新しい星の形成が引き起こされた証拠だ。
          右側の銀河のかき乱された渦状腕で宝石のようにきらめいているのは新しい星団だ。



          [Arp 116、M60]  楕円銀河+渦巻銀河
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE からお借りしました。 → こちら

          おとめ座銀河団に属する、相互作用している楕円銀河と渦巻銀河のペアである。
          楕円銀河は「M60」で、渦巻銀河は「NGC4647」だ。
          M60は、おとめ座銀河団の中で3番目に明るい銀河だ。
          両者の重力相互作用は始まったばかりだと考えられている。



          [Arp 152、M87]  楕円銀河、ライナー(ジェットを噴射)
           
               画像は HUBBLE SITE からお借りしました。 → こちら

          おとめ座銀河団の中核をなす楕円銀河で、中心に太陽質量の65億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールがある。
          ブラックホールのジェットは、口径の大きな望遠鏡であれば可視光でも確認することができる。
          ジェットの長さは7,000〜8,000光年にも及ぶと推定されている。



          Arp153、NGC5128]  ケンタウルス座A
           
               画像は ESO のサイトからお借りしました。 → こちら

          巨大な楕円銀河で、強い電波を放射する電波銀河としては最も太陽系に近い天体だ。
          中心部には太陽のおよそ1億倍の超大質量ブラックホールが潜んでいると考えられている。
          中央の黒い帯には大量のガスや塵があり、若い星が隠れている。
          巨大な楕円銀河と小さな渦巻銀河とが衝突してできたものと考えられているが、飲み込まれてしまった小さな銀河の残骸がこの塵の帯を作っている。



          [Arp188、UGC10214]  おたまじゃくし銀河
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE からお借りしました。 → こちら

          「おたまじゃくし」と呼ばれている銀河だ。
          小さな銀河が大きい渦巻銀河に呑み込まれ、潮汐力によって小さな銀河から引きはがされた星々が形作るストリーム(星流)が航跡として残っている。
          このストリームの中で活発に星形成が行われていることを示す大質量の青い星の集団が数個見られる。
          この画像の波長では見えないが、帯には冷たいガスも含まれている。
          これらの星団の一部は、球状星団になる運命にある。



          [Arp242、NGC4676]  相互作用銀河、マウス銀河
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE からお借りしました。 → こちら

          「Mice(マウス)」と呼ばれている相互作用銀河のペア。
          このペアは将来くっついて、ひとつの銀河になる運命にある。
          最も目立つのは、相互作用の最中に重力の潮汐力によって銀河の円盤から引きはがされた星々から構成される長く青い尾だ。
          黄色とオレンジ色に輝く2つの放射光のかたまりは、合体中にも元の形を留めている2つの銀河のバルジである。
          ただし、星々を包み込んでいるガス状領域がバルジに重なり、融合し始めている。



          [Arp244、NGC 4038, NGC 4039]  相互作用銀河、触角銀河
           
               画像は HUBBLE SPACE TELESCOPE からお借りしました。 → こちら

          2つの銀河が衝突しており、互いに潮汐力を及ぼし合うことで2本の長い腕状の構造が伸びているのが特徴である。
          日本語では、アンテナ銀河、リングテール銀河、とも呼ばれる。



          [Arp 273]
           
               画像は APOD からお借りしました。 → こちら

          「Arp273」は、重力によって互いに引き寄せられている相互作用渦巻銀河のペアだ。
          重力の相互作用が星やガスや塵に潮汐作用を及ぼし、両方の銀河の構造を歪めている。
          最終的に、このペアは合体して新しい銀河になり、その過程で星やガスを再分配する。
          相互作用が原因で、銀河円盤内のガス雲が収縮することがある。
          そのため、銀河間の相互作用と合体は、新しい星の形成を引き起こすことが多い。



          [Arp319、HCG92]  ステファンの五つ子銀河
           
               画像は APOD からお借りしました。 → こちら

          左下の青い銀河を除いた4つの銀河は、「ヒクソン・コンパクト銀河群92」として物理的に結びついている。
          赤っぽい3つの銀河は相互作用している。
          この相互作用は、銀河を形態的に乱しており、ガスや星を引きはがし、かき乱された物質の中で新しい星形成を引き起こしている。
          その星形成の様子を見せているのが中央の赤い銀河から左上に向かって扇のように広がっている星々だ。
          赤や青のまだら模様は、電離したガス(H粁琉茵砲函銀河の円盤から押し出され、かき乱されて収縮したガス雲の中で形成された若く青い星である。



          [Arp 337、M82]  スターバースト、スーパーウィンド、河葉巻銀河(Cigar Galaxy)
           
               画像は NASA HUBBLE's MESSIER CATALOG からお借りしました。 → こちら

          「M82」は「M81」に近接されたためにスターバーストが引き起こされているスターバースト銀河である。
          また中心部から極方向に向かって、電離した水素ガスが吹き出している。
          これは「スーパーウィンド」という。
          M81とM82はM81銀河団と呼ばれる同一の銀河団に所属しており、お互いの銀河の中心核は15万光年しか離れていない。
          両者の接近遭遇は数千万年前と考えられている。


           
          参考図書
            ・「銀河 宇宙140憶光年のかなた」、ジェームズ・ギーチ、(訳)糸川洋、筑摩書房、2014年


           








          2020.11.16 Monday

          晩秋の庭の風景

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            今年の秋は平年よりも温かい日が多いようですが、
            ”ブルーベリー” や ”どうだんつつじ” の葉が色付いてきました。













            大きな巣を張っていたのですが、風の強い日にだいぶ壊れてしまったようです。

            少し前までは、温かい日はカナヘビが日光浴する姿をよく見かけたのですが、
            もう巣ごもりしたようです。


             

            08:02 | 庭の風景 | comments(0) | - | - | - |







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