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2020.09.25 Friday

宇宙物理学  特殊相対性理論 (2) 

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    ***** 基礎物理学 > 相対性理論 *****


    宇宙のあらゆる物体は、つねに時空のなかを一定の速さ(光の速さ)で進んでいる

    絵を描く都合上、空間は1次元とする。

    物理学者のブライアン・グリーンは以下のように言っている。

    物体は空間の中だけでなく時間の中も進む。
    そして宇宙のあらゆる物体は、つねに時空のなかを一定の速さ−−光の速さ−−で進んでいる。
    言い方を変えると、空間内を進む速度と時間内を進む速度を合わせたものは、必ず光の速度と同じになるということだ。
    これは「ん?」と感じるかもしれないが、本当にそうなのだ。

    物体が(私たちに対して)静止しており、したがって空間の中をまったく動かなければ、物体の運動はすべて時間の次元に沿って進むのに使われる。
    つまり静止した物体は時間のなかを光速で進んでいるのだ。 → 図の(1)
    しかし、物体が空間の中を進めば、時間に沿った動きの一部が空間の中を進むのに使われる。
    そのために、その物体が時間内を進む速度は小さくなるのだ。
    つまり、その物体は静止している物体より時間に沿ってゆっくり進むということだ。 → 図の(2)

    空間内で最高速度が達成されるのは、時間内を光速で進んでいた運動の全てを、空間内を光速で進む運動に振り向けたときである。
    このように考えれば、なぜ空間内を光速よりも大きな速度で進むことができないかがわかるだろう。
    空間内を光速で進めば時間は止まり、光の粒子がつけた腕時計は時を刻まないのだ。 → 図の(3)
     

      ※ この図は光円錐ではないことに注意して欲しい!
      ※ 横軸、縦軸共に速度である。


    相対性理論という名前とは裏腹に、アインシュタインのこの理論は、何から何まで相対的だと主張するわけではない。
    たしかに、いくつかの物理量は相対的だと主張する。
    速度は相対的だし、空間の距離も時間の流れも相対的だ。
    ところが意外なことに、特殊相対性理論は「絶対時空」という、きわめて重要な新しい絶対性を持ち込むのである。
    空間と時間は、それぞれ単独では相対的だが、合体させた時空は絶対的なのだ。
    ただし、一般相対性理論によって、空間と時間は絶対的ではなく、ダイナミックに変化し、質量とエネルギーに呼応して形を変えるということが明らかになる。

    私たちの直観は、光の速さに比べてきわめて遅い普通に見られる運動に基づいているので、空間と時間の本当の性質は見えていなかったのだ。



    時空の断面」という考え方

    これも物理学者のブライアン・グリーンの説明だ。

    ある空間領域を、ある時間間隔にわたって見ていくことにしよう。
    その空間と時間の領域のことを「時空領域」と言う。
    時空領域には、ある時間間隔に、ある空間領域で起こったことがすべて記録されていると考えればよい。

    絵を描く都合上、空間は2次元(X軸とY軸)とする。

    それらの時空領域を時間軸に沿って積み重ねていくと、巨大な直方体が出来上がる。
     

    その巨大な直方体を、Aさん(緑色)から見て、ある時刻に同時に起こった出来事のすべてが含まれるようにスライスすることを考えてみよう。
    スライス断面のひとつひとつは、Aさんが、ある時刻に見た空間を表している。 → 左図の(A)
    少し右にいるBさん(オレンジ色)も同様にスライスしたとする。
    AさんとBさんが相対運動をしていなければ、両者のスライス断面は重なって、同時に起こったことについて意見が一致する。

    BさんがX軸方向をAさんから遠ざかように運動すると、Bさんのスライス断面の角度がAさんのものと違ってくる。 → 右図の(B)
    この場合は、Aさんにとっての過去に回り込む。
    こうなると、両者で同時に起こったことについて意見が一致しなくなる。

    2人の相対速度が大きくなるにつれて、2つのスライス断面がなす角度は大きくなる。
    最高速度である光速に達すると、2つのスライス断面の角度差は最大の45度に達する。
    何が同時に起こったかについて、2人の報告する出来事の食い違いも大きくなる。

    さらに、2人が遠く離れていれば、角度の違いはごく僅かでも、2つのスライス断面の開きは非常に大きくなる。
    例えば2人が100億光年離れていたとする。
    互いに相手に対して静止しているのなら、空間と時間に関する2人の意見は一致する。
    しかし一方が時速16kmで歩き出すと、2人の今は150年も食い違ってしまうのだ。


    互いに相対運動をしている人の時計は異なる進み方をするせいで、同時刻の概念が従来とは変わってくる。
    これがいわゆる「同時性の相対性」(同時性は相対的なものである)と呼ばれていることだ。
    互いに相対運動をしている人は、何と何とが同時に起こったかについて意見が一致しないのだ。

    同時という概念が相対的なものになれば、「現在」も人によって異なることになり、過去・現在・未来の区別もまた相対的なものなる。


    なお時間の経過につれて空間をスライスしたものの全体は、誰がスライスしようと、まったく同じ時空のブロックになる。
    特殊相対性理論の世界では、絶対空間も絶対時間も存在しないが、絶対時空はたしかに存在するのである。



    時空

    上記のブライアン・グリーンの説明から、空間と時間の描像が従来とは大きく変わってくるのがわかる。

    ある人の空間距離は、別の人の時間間隔と空間距離である。
    そして、ある人の時間間隔は、別の人の時間間隔と空間距離である。
    空間と時間がこのやりかたで入れ替え可能なのである。
    そのために時間と空間を「時空」という一体不可分のものとして取り扱わなければならない。

    まるで禅問答のようだ。


    アインシュタインが劇的な発見を世間に伝えてから一世紀以上になるが、依然としてほとんどの人は空間と時間を絶対的なものとして見ている。
    理由はごく簡単だ。
    特殊相対性理論に実感がないからだ。
    特殊相対性理論の効果は、どのくらい速く動くかに依存し、車や飛行機の速さでは、それどころか、スペースシャトルの速さでも、微々たるものしかないからだ。



    エネルギーと質量は等価である
     

    アインシュタインは、エネルギーと質量の関係を見出した。
    それまでまったく別のものだと考えられていた「エネルギー」と「質量」が、実は等価なものであり、「E=mc2」で換算できると言うのだ。
    ここでEはエネルギー、mは質量、cは光速度である。
    なお光(光子)は固有の質量は持っていないが、運動エネルギーをもつという事実に基づいた「有効質量」をもっている。

    この発見は、「質量はエネルギーの一形態である」ということを見出したと捉えるほうが、その重大性が伝わると思う。

    特殊相対性理論は1905年の6月に論文として投稿されたが、その直後にこれを発見して、同年9月に論文の補遺として書いたそうだ。


    この式は、高校で習う「質量保存の法則」と「運動量保存の法則」だけを使って導くことができるのだそうだ。
    福江純さんの本に、1946年にアインシュタイン自身が行った初等的証明に基づいて式を導出している。
    私も読んでみて式を追うことはできたが、最初から一人でやるとは到底無理だ。


    なお等価式が成り立つのは、粒子が静止している場合だけだ。
    粒子が動き出すと運動量を持つので、もう少し複雑な式になるそうだ。



    ミンコフスキーの4次元時空

    ヘルマン・ミンコフスキーは、空間の3つの次元と時間の次元を組み合わせた4次元の時空を用いることで、特殊相対性理論が簡潔に記述されることを見出した。
    ミンコフスキーはアインシュタインの数学の先生でもあった。

    3次元の空間座標系どうしで座標系を乗り換えるときのルールは「ガリレイ変換」と呼ばれる。
    ミンコフスキーの4次元時空で座標系を乗り換えるときのルールは「ローレンツ変換」と呼ばれる。

    ミンコフスキー時空では、ローレンツ変換を行ったときに長さは不変ではないが、かわりに不変となる量が存在する。
    それは通常の空間(3次元ユークリッド空間)での長さを4次元時空に拡張した量で、「世界長さ」と呼ばれる。
    例えば、通常の空間内の点(x,y,z)と原点(0,0,0)との距離Lは
      L2=x2+y2+z2
    で表されるが、世界長さSは
      S2=x2+y2+z2−(ct)2
    という式で表される。
    ここで時間tに光速度cを掛けているのは、長さの単位に合わせるためだ。

    この世界長さの式をちょっと変形してみると、面白いことが分かる。
    虚数を導入すると、
      S2=x2+y2+z2+(ict)2
    と変形できる。
    ここで(ict)を第4の座標と考えれば、これが4次元のユークリッド空間になっていて、この式が3次元ユークリッド空間での距離の拡張になっていることが分かる。
    つまり、ミンコフスキー空間とは、4次元ユークリッド空間のひとつの座標軸を虚数にしたものなのだ。



    ミンコフスキー・ダイアグラム

    「時空ダイアグラム」なるものを用いると、物体の運動を視覚的に表現することができる。
    実際の空間は3次元もあり、時間と共に図示するのは難しいので、時空のダイアグラムでは、表現上、空間の次元を減らして表すことが多い。
    例えば、横軸に2次元空間(x,y)をとり、縦軸に時間をとる。
    時間軸は必ず縦軸で、下を過去、上を未来とする。

    静止した物体は、空間座標(x,y)の値は変わらず時間だけが過ぎていくので、静止した物体の「軌跡」は鉛直方向に過去から未来に向かって伸びる直性になる。
    一定速度で動く物体の「軌跡」は、傾いた直線になり、速度が速いほど直線の傾きは水平に近くなる。

    相対論では、単なる時空ダイアグラムではなく、「ミンコフスキー・ダイアグラム」と呼ばれる、光速度を基準にした特別な時空ダイアグラムを使う。
    普通の時空ダイアグラムと大きく違う点は、空間軸と時間軸の目盛りの取り方である。
    光の軌跡が傾き45度の直線になるように目盛りを刻む。
    例えば、時間軸を年で刻み、空間軸を光年で刻むのだ。

    ミンコフスキー・ダイアグラムにおける慣性系(物体)の軌跡を、慣性系の「世界線」と呼んでいる。
    45度に傾いた光の世界線は、ふつう「光円錐」と呼んでいる。
     

    このようなミンコフスキー空間でいろいろな運動がどう表されるかだが、まず原点に自分がいるとすると、そこが自分自身の(ここ、いま)である。
    あらゆる物体の速度は光速度よりも遅いため、物体の世界線の傾きは45度より急なので、物体の世界線は必ず光円錐の内部に含まれる。

    ミンコフスキー・ダイアグラムは、1907年にヘルマン・ミンコフスキーがはじめて導入したものだが、相対論の表現はこれによってずいぶんとわかりやすくなったと言われている。


     
    参考図書
      ・「相対性理論の世界」、ジェームズ・A・コールマン、(訳)中村誠太郎、講談社ブルーバックス、1966年?
      ・「エレガントな宇宙」、ブライアン・グリーン、(訳)林一,林大、草思社、1999年
      ・「宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体」、ブライアン・グリーン、(訳)青木薫、草思社、2004年
      ・「宇宙の扉をノックする」、リサ・ランドール、(訳)向山信治、NHK出版、2011年
      ・「重力とは何か」、大栗博司、幻冬舎新書、2012年
      ・「私たちは時空を超えられるか」、松原隆彦、サイエンス・アイ新書、2018年
      ・「超入門 相対性理論」、福江純、講談社ブルーバックス、2019年


     








    2020.09.24 Thursday

    宇宙物理学  特殊相対性理論 (1) 

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      ***** 基礎物理学 > 相対性理論 *****

      最初に断っておくが、相対性理論を系統立てて説明することなど私にはとても無理だ。
      そこで読んだ本のなかで「ふむふむ」と感じたところを寄せ集めてみる。


      相対性理論はアルベルト・アインシュタインによって構築されたもので、「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」がある。
      前者は時間と空間を物理的に考察して、それまで誰も気づかなかった時間と空間の振る舞いを明らかにしたものだ。
      ただし、互いに等速直線運動している場合しか扱えないので、特殊という名前が付いている。
       


      まずはその「特殊相対性理論」だ。



      出発点

      光の速さで飛べることができたら,自分の目の前に置いた鏡に自分の顔が映るのだろうか?
      飛んでいく光を、光速で追いかけたら、光は止まって見えるのだろうか?
      アインシュタインは16歳の頃からそんな思考実験をしていたそうだ。

      日常では、物体の速度はそれを測る人の状態によって変わる。
      例えば高速道路を時速100kmで走っている車を同じ速度で追いかけたら、まわりの景色は飛び去っていくように見えるが、相手の車はほぼ静止しているように見える。
      では光の速度はいったい誰が(どんな状態の人が)測ったものだろうか?

      電磁気学のマックスウェル方程式からは、測定の基準を定めなくても、電磁波の速度は秒速30万Kmという数字がぽろりと出てくる。
      アインシュタインは、測定の基準が出てこないなら、そんなものは必要ないのだと考えた。
      そして、光の速度が常に同じ値で観測されることを、自然界の真理なのだとした。

      特殊相対性理論における理論の柱は次の2つである。
      ・光速度不変の原理 : 光の速さは誰が(どんな状態の人が)測っても同じ値になる
      ・相対性原理 : 止まっていても動いていても、物理法則は変わらない


      この2点だけを出発点として、アインシュタインは時間と空間の驚くような振る舞いを明らかにしていった。

      その驚くような振る舞いを、とにかく列挙してみよう。
        ・運動しているものは、時間の進みが遅くなり、運動方向に縮まって見える。
           ・運動は相対的なものだから、それは互いにそう見える。
           ・しかしどちらも、自分に関しては何の変化も感じない。
        ・人はみな、自分だけの時計とものさしを持っている
           ・それらはどれも等しく正確だが、人が互いに相対運動をすると食い違いが生じる。
        ・相対運動をしている人は、何と何とが同時に起こったかについて意見が一致しない。
        ・光は追いこせない。
        ・速度は単純には足せない
        ・エネルギーと質量は等価である。
        ・速く走ると質量が増える。



      光速度不変の原理からの帰結は?

      どうしたら誰が(どんな状態の人が)測っても光の速度は同じ値になるのだろう?
      あらゆるものの速さとは、光を含めて、与えられた時間内に物体が空間を進む距離である。
      通常、距離を測るには物差しが用いられ、時間を測るには時計が用いられる。
      従って、問いは次のように言い換えることができる。
      誰が(どんな状態の人が)光の速度を測っても同じ値になるには、物差しと時計に何が起きなければならないのか?

      これを突き詰めていくと、以下のようなことを認めざるを得なくなる。
      人はみな、自分だけの物差し(空間)と時計(時間)を持っている。
      それらはどれも等しく正確だが、人が互いに相対運動をすると食い違いが生じる。
       


      特殊相対性理論はしっかりと考えれば中学程度の数学だけで理解できるという。
      ただし、その理解のためには、時間とl空間が固定されたものだという従来の常識を捨てなければならない。
      お互いに運動している2人にとって、お互いに相手の時間がゆっくりと流れているように見えるという。
      こうしたことが一見矛盾しているように見えるのは、時間や空間が誰にとっても共通のものだという固定概念によるそうだ。
      実際には、時間や空間は絶対的なものではなく、人や物の運動状態によって変化する相対的なものだったのだ。



      相対性原理

      等速直線運動をしている座標系は「慣性系」と呼ばれる。
      この「座標系」とか「慣性系」という言葉はいつまで経っても馴染めない。
      こんなことが物理が嫌いになってしまう要因のひとつなんだろうなあ?

      相対性原理は何もアインシュタインが最初に言い出したことではない。
      ガリレイの相対性原理というのがある。
      「等速直線運動をしている2つの座標系があったとき、どちらの座標系でも力学法則は同じでなければならない」というものだ。
      ある慣性系における物理現象の記述を別の慣性系での記述に変換するためには、座標変換の操作が必要となる。
      「ガリレイ変換」はそんな座標変換の方法のひとつである。
      ガリレイ変換の前後で、ニュートン力学の法則は不変に保たれる。

      しかし、電磁気学のマクスウェル方程式はガリレイ変換をすると形が変わってしまう。
      アインシュタインの相対性原理は、電磁気学でも同じ法則が成立するように求めるものだ。
      ここが、力学だけを対象にしたガリレオの相対性原理と異なる。



      時間の進みが遅くなる

      高さ3mの電車が(地表に対して)光速に近いスピードで走っていたとしよう。
       

      そして、この電車内で、光を床から発しそれを天井で反射させてまた床で検出するという実験をしたとしよう。
      これを電車の中にいる人から眺めたとすると、光は総計6mの距離を進んだことになる。
      いま議論を簡単にするため光速が秒速6mだとすると、光が発せられてから検出されるまでにかかった時間は1秒だということになる。
        → 図の左


      しかし、この実験を地表の人から見るとどうなるだろう?
      光が発せられてから検出されるまでに進んだ距離は、電車が動いている分だけ長くなる。
      例えばその距離が12mだったとしよう。
        → 図の右

      すると、地表の観測者にとっては光が発せられてから検出されるまでにかかった時間は(光の速さは誰にとっても同じ秒速6mなので)2秒ということになるのである。
      つまり、ふたつのイベント(光が発せられたことと検出されたこと)の間にかかった時間は、電車内の人にとっては1秒で、地表の人にとっては2秒なのである。



      空から降ってくるミュー粒子が見る世界

      宇宙線が地球大気に突入すると、様々な粒子に変化し、中でも「ミュー粒子」という素粒子が地上にたくさん届く。
       

      しかしミュー粒子は、平均して2マイクロ秒(50万分の1秒)程度しか寿命がないので、600mほどしか進めないはずだ。
      ところが実際のミュー粒子は、大気中を10kmも進んで地上に到達できる。

      これは、ミュー粒子が光速に近い速さで進むので、ミュー粒子にとっての時間の進み方が地上における進み方よりもずっと遅くなるためだ。
      ミュー粒子にとって自分の寿命は変化していないのだが、地上から見るとその寿命が大きく伸びて見えるのだ。
      視点を変えて、もしミュー粒子と一緒に移動したとすれば何が起きるだろう。
      実は、猛スピードで動いているミュー粒子からすれば、周りの世界が進行方向へひどく縮んでしまう。
      つまり、私たちにはミュー粒子が10kmほど進んだように見えても、ミュー粒子にとってはそれが100mかそこらにしか見えないのだ。
      このためミュー粒子は、自分の寿命の範囲内で地上に到達できる。

      相対性理論によると、猛スピードで動いているもの同士は、お互いに異なる時間の流れと異なる空間の尺度を感じることになる。
      つまり、上空で宇宙線から生まれたミュー粒子は、地上とは違う時間の流れと空間の尺度の中を進む。


      話の後半部分、ミュー粒子からは周りの世界がどのように見えるのか、というところがなかなか頭に入っていかない。
      ミュー粒子にとって周りの世界(地上の世界、私がいる世界)は広大なので、視点の転換がうまくできないのだと思う。
      頭が固いと言われればそれまでなのだが、、、。



      続く。


       








      2020.09.23 Wednesday

      宇宙物理学  閑話休題 (2) 現代物理学は厄介だ!

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        ***** 閑話休題 *****

          無謀にも、次回から基礎物理学編として、相対論と量子論に挑戦します。
          その前に、いろいろと言い訳を、、、。


        近代物理学と現代物理学

        19世紀の終わりには、力学や電磁気学をはじめとして身の回りの自然に関する物理学はほぼ完成したと思われていた。
        しかし20世紀になって、まったく新しい2つの物理学である「相対性理論」と「量子論」が誕生し、自然の描像が一変した。
        そのため、19世紀までの物理学を「近代物理学」と呼び、20世紀以降の物理学を「現代物理学」と呼んで、明確に区別することがある。
         

        また、量子論以外の物理学を「古典物理学」と呼んで区別することもある。
        ただし物理学者が古典的という言葉を使う場合、古代ギリシャで生まれたものという意味ではない。
        この括りでは、相対性理論は「古典物理学」になる。
        未来が一通りに決まってしまうという古典物理学の性質は量子論では失われてしまい、大きな違いがあるからだ。
        しかし「重力場」という概念を拡張し、実際の3次元空間が曲がることを見出した点で、相対性理論が革新的であったことは間違いない。


        どこで線を引くにせよ、物理学者たちは20世紀前半に強烈なパラダイム・シフトに襲われたわけだ。
        学校の教科書には載っていないが、物理学者とて、もがき苦しんだことだろう。
        でもそれを乗り越えることができたから、20世紀後半からの宇宙物理学の目覚ましい発展があるのだと思う。

        私はそんな宇宙物理学を勉強しようとしているのだが、パラダイム・シフトを意識した記憶がない。
        知らず知らずのうちに、乗り越えたのだろうか?
        それとも、乗り越えておらずに、昔のパラダイムの中にいるのだろうか?



        現代物理学がちっとも頭に入らない!

        宇宙物理学において、以下の基礎理論は特に重要だと思う。
          ・相対性理論
          ・量子力学
          ・素粒子論

        しかし私は、中学の理科や高校の物理ではそれらを教わっていない。
        大学の一般教養で量子力学の初歩にちょっとだけ触れた記憶はあるが、、、。
        頭の柔らかいうちに、それらのエッセンスだけでも吸収しておきたかったですね。

        最近は宇宙物理学の分野でも、ブルーバックスなど、一般向けの本がたくさん出版されている。
        それらは、最初の方で基礎理論をやさしく解説してくれているものが多い。

        でも最初の頃は、最後まで読むことすらできなかった。
        途中で頭が拒否反応を起こしてしまうのだ。
        それでも何度も読んでいるうちに、最後まで読めるようにはなった。
        しかし、ちっとも頭に残っていないのだ。

        私は何も基礎理論の難しい式を使いこなせるようになりたいわけではない。
        そんなことはどうあがいても無理だ。
        ただ、現代物理学が描き出す自然(宇宙)の姿がちゃんとイメージできるようになりたいのだ。



        頭の回路を再配線しなければならない

        物理学者のブライアン・グリーンは以下のように言っている。
        アインシュタインの発見から100年を経た今日でさえ、相対性理論を直観レベルで理解できるという人は、プロの物理学者まで含めて、事実上一人もいない。
        相対性理論が理解できたからといって、生物としての生き残りに何か役に立つのかと問われれば、だれしも口ごもらざるをえない。
        私たちが日常経験する環境で起こることは、絶対空間と絶対時間というニュートンの間違った概念でみごとに説明されてしまう。
        だから人間の知覚が、相対性理論を感知できるような方向に進化することはない。
        そのため、この理論を深いレベルで納得し、正しく理解するには、頭を使って努力することで、知覚とのギャップを埋めなければならない。
        量子力学を直観的に理解できるように頭を訓練することは、相対性理論の場合よりもさらに難しい。


        物理学者のマックス・テグマークは以下のように言っている。
        進化の過程で私たちが獲得した直観というのは、私たちの遠い祖先が生き残るのに有益だった物理の側面だけを理解できるようにできている。
        実際、投げた石が放物線軌道を描くことは直観的に理解できるだろう。
        洞窟に住んでいた時代の女性が「物質は究極的には何からできているのだろう?」などという問いを真剣に考えていたなら、その女性は背後から近づくトラに気づくことができなかったかもしれない。
        そしてそのような女性の遺伝子は、残らなかったかもしれない。


        物理学者のレオナルド・サスキンドは以下のように言っている。
        私たちは直観的なレベルで力や速度や加速を感じる。
        すべての複雑な生物は生まれつき、あらかじめプログラムされた物理的な概念を持っていて、それが進化によって彼らの神経系へしっかりと組み込まれる。
        このあらかじめプログラムされた物理学のソフトウェアがなければ、生き残るのは不可能だ。
        突然変異と自然淘汰によって、私たちはみな(古典)物理学者になったのである。
        しかし20世紀に入ろうとする頃、直観が根底から崩れてしまった。
        進化論的な力がどんなに働いても、こうした根本的に異なる世界を直観的に理解できるようになることはありえない。
        私たちの脳に配線されている現実を対象とするモデルでは、光の本当の性質も、粒子の不確実な動き方も理解できなかった。
        それらを理解するためには、生まれつきプログラムされた神経回路を再配線しなければならない。


        彼らは、私たちの持っている直観や常識では「相対性理論」や「量子力学」などを理解できないと言っているのだ。
        さあ、どうしよう?
        頭がすっかり固くなってしまった今から、頭の訓練や思考回路の再配線などができるだろうか?
        基礎理論の数学を理解するのは端から諦めている。
        せめてそれらが示してくれる自然(宇宙)の姿だけでも頭に描けるようになりたいものだ。



        ニュートン力学の世界像

        それでは古典物理学の代表である「ニュートン力学」の世界像を見てみよう。


        「絶対空間」と「絶対時間」
        ニュートンはプリンキピアで、「空間と時間は宇宙にしっかりとした舞台を与える、絶対的で普遍な実体である」とした。
        物体は空間の中で運動や変化をするが、空間自体はまったく変化せず永久不変に存在している。
        時間というものは、過去から未来に一様に流れ、かつ宇宙のどこでもまったく同じ時間になっている。
        そして、それらは誰にとっても共通なものだ。
        ニュートンによれば空間と時間は、宇宙に形と構造を与える、目に見えない枠組みだったのだ。

        「速度合成の法則」
        互いに運動しているもの同士の相対速度は、それぞれの速度の足し算あるいは引き算で求められる。
        例えば、時速100Kmで走る電車を、時速40Kmで同じ方向に走る自動車から見れば、電車の速度は時速60Kmに見える。

        「万有引力の法則」
        あらゆるモノの間には、お互いに引き合う力が働いていて、その力は物体の質量とお互いの距離だけで決まる。
        万有引力は「遠隔作用」する力であり、「瞬時」に届く。


        私はこれらに違和感は全く感じないし、多くの人もそうだと思う。



        私の世界像

        それ以外に、私は以下のような世界像を持っている。


        [物理的実在]
        私たちの目の前に広がっている世界は物理的実体であり、私たちの存在とは独立したものだ。
        つまり、人間が観測しようがしまいが、あるいは人間がこの世にひとりもいなくても、変わらずに存在しているだろう。
        それらの物理的状態は、私たちが観測するという行為とは関係なく常に定まっていて、それらは原理的に予測可能である。


        [因果的決定論]
        少なくとも物質の運動や変化に関しては、あらゆる出来事はそれに先行する出来事だけによって決定される。
        そしてそのすべては自然法則で説明できる。
        つまり、今の状態を正確に把握できれば、過去の状態が正確にわかり、未来の状態が正確に予測できるということだ。

        ただし人間が絡んでくると、自然法則とは異なる要因が影響するのかもしれない。


        結局、私の世界像は古典物理学の世界像そのものであることがはっきりした。
        やはり、20世紀前半のパラダイム・シフトを乗り越えておらずに、昔のパラダイムの中にいるのだ。


         
        参考図書
          ・「宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体」、ブライアン・グリーン、(訳)青木薫、草思社、2004年
          ・「ブラックホール戦争」、レオナルド・サスキンド、林田陽子、日経BP社、2008年
          ・「数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて」、マックス・テグマーク、(訳)谷本真幸、講談社、2014年


         








        2020.09.21 Monday

        宇宙物理学  星間物質

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          ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 星団、星雲、星間物質 *****

          星間空間とは天の川銀河内の星と星の間の空間のことだ。
          銀河と銀河の間の空間とは違う。

          天の川銀河の場合の話になってしまうが、大きさや形態が同じような銀河ならば状況もあまり変わらないだろう。



          星間空間

          太陽から一番近い星までの距離は約4.3光年で、そこから次の星まではさらに何光年も離れている。
          星々で埋め尽くされているように見える宇宙空間だが、想像を絶するほど「すかすか」なのだ。
          その「すかすか」の程度は、太平洋にスイカが3個だけ浮かんでいるほどである。
          だから、星と星がぶつかることもまず起こらない。

          だからと言って、星と星の間に何も無いわけではない。



          星間物質

          天の川銀河の質量は、その9割がダークマター(暗黒物質)で占められている。
          残りの1割にすぎない「通常の物質」は、さらにその9割が恒星として存在しており、残りの1割は恒星間に「星間物質」として存在している。
          星間物質には、水素やヘリウムといった気体の状態である星間ガスや、ケイ素や炭素,鉄,マグネシウムなどによって形成されている個体粒子であるダスト(星間塵)などがある。
          星間ガスと星間塵の質量比はおおむね100:1であり、両者は広域にわたって共存している。
          その平均密度は、銀河系中心部では水素原子が1cm3あたり数個、外縁部で1個ほどである。


          星間ガスの主成分は水素であり、質量比で約70%を占める。
          円盤部に集中して存在し、恒星よりもさらに薄い円盤状の分布をしているそうだ。
          星間ガスには実に様々な相が存在し、濃淡のコントラストは10桁余りにわたり、温度も6桁もの広範囲にわたる。

          希薄な状態の星間ガスは、一般に温度も高く、ガスは電離したプラズマ状態にある。
          密度が高くなってくると、プラズマ中の正イオンと電子が結合して、電気的に中性な原子となる。
          さらに高密度な領域では、原子どうしが結合して、分子を形成する。
          この状態の星間ガスは、あたかも地球大気中の雲のような形態をとり、「星間分子雲」と呼ばれる。
          星が生まれるような領域では、普通の星間空間より100万倍も密度が高く、絶対温度で10度という極低温である。

          一方で銀河のハロー領域を満たしているのは、温度が100万度にもなる高温で密度が薄いガスである。


          星間塵は、恒星進化の過程で副産物として生成される炭素質やケイ酸塩の微粒子状の物質だ。
          これらの成分は地球上の岩石や小惑星と同じようなもので、実際、太陽系の中の小惑星や我々の地球など岩石型惑星の原料になったと考えられている。
          大きさは1/1000ミクロンという分子レベルのものから1ミクロンほどのものまである。
          星が新星として自分の表面層を吹き飛ばすか、超新星として爆発的に消滅するかして死ぬと、この塵が星間物質の中に撒き散らされる。

          可視光は、塵の微粒子によって吸収・散乱されてしまう。
          波長の短い光、つまり青味がかった光のほうが吸収・散乱されやすいため、塵は赤味がかって見える。
          この効果は「赤化」と呼ばれている。
          塵も特有の光を放つことがある。
          それは、塵が星から放射された紫外線などを吸収して熱くなるからだ。
          その「熱」エネルギーは、赤外線として再放出される。
          数10ミクロンから数100ミクロンの波長の赤外線で見ると、塵が明るく輝いている。

            赤外線天文衛星「あかり」による星間塵輻射の全天マップ
               画像はJAXAのサイトからお借りしました。 → こちら

          これは、赤外線天文衛星「あかり」の観測した全天の遠赤外線画像だ。
          90ミクロンの赤外線を赤で、140ミクロンの赤外線を青で表示した、2色合成画像だ。
          中央に水平に伸びるのが天の川で、銀河系の中心領域を画像の中心にした360°の範囲を示している。
          S字状に薄く見えるのは、太陽系内の塵による光だ。
          黒いスジ状のキズのように見えるのは、観測されなかった残り1%未満の部分だ。
          色の青いほどより温かい星間物質、赤いほどより冷たい星間物質の存在を示している。
          星間物質が温かい領域ほど、そこではより多くの新しい星が生まれつつある。



          分子雲

          星間空間の中でもガスや塵が集まって特に濃い場所がある。
          星間ガスの主成分は水素であり、水素原子として存在するが、特に密度の高い場所ではH2分子の形で存在すようになる。
          そのほかに微量の一酸化炭素,水酸分子,水,二酸化ケイ素などの分子があることから、「分子雲」とも呼ばれる。
          炭素,窒素,酸素,鉄など、現在の地球やそのほかのありとあらゆるものを作っている元素は、もともとこの分子雲に含まれていた。
          水素とヘリウムは宇宙初期に作られたが、それ以外は、遠い昔に周りの空間で爆発した超新星から放出されたものである。

          分子雲は、水素原子が1cm3あたり100個から1000万個と(通常の星間物質に比べて)きわめて高くなっている。
          一方で、分子からの放射によって効率よく冷やされるために、10から30kと非常に低温になっている。
          温度が低いために圧力も低く、重力によって収縮することが可能であり、最終的には星へと進化する、いわば「星のゆりかご」が分子雲である。

          天の川銀河の円盤は、「巨大分子雲」と呼ばれる新しい星の形成を行う高密度のガスの大半が貯蔵されている場所だ。
          このガスの名称に「巨大」が含まれているのは、ガス雲が100パーセクに及ぶほど大きく、(潜在的には)数100万個もの新しい星を形成するのに十分な材料を持っているからだ。
          名称に「分子」が含まれているのは、雲の中のガスが主に水素分子から構成されているからだ。


          星間分子雲は新しい星を誕生させる直接の母体として天体物理学の分野で注目されるとともに、「星間化学」という天文学と化学の境界分野を生んだ。
          現在までにおよそ180種の星間分子が、主に電波による観測で発見されている。
          星間空間を漂うガスの主な成分は水素分子であるが、最大13元素までの多種多様な分子が含まれている。
          なかでも有機分子は検出された分子種の3/4を占める。

          星間空間は周囲にある星々からの光(星間紫外線)で満ちている。
          星間分子雲の密度が低いうちは、分子が生成したとしても星間紫外線ですぐに壊されてしまう。
          そのため、大きな分子が成長することはほとんどないと言ってよい。
          一歩、密度が上がって数千から数百万個になると、星間分子雲の中には星間紫外線が届かなくなる。
          その結果、分子は壊されることなく化学反応で成長し、数10万年から数100万年をかけて、様々な分子が作られる。

            天の川全体の暗黒星雲の分布
               画像は、理科年表オフィシャルサイトからお借りしました。 → こちら



          宇宙線

          宇宙空間における最も過激な存在が、宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子である。
          天の川銀河内では、ほぼ光速の宇宙線陽子が、だいたい一辺10mの箱に1個ほどの数で飛び交っている。
          この宇宙線の粒子エネルギーは恐ろしく高いところまで達していて、観測されている最高エネルギーはたったひとつの粒子で1020電子ボルトに及ぶ。
          こうした粒子は、爆発で飛び散った物質が音速をはるかに超える猛スピードで周囲の物質に衝突する際に生じる「衝撃波」において生成されると考えられている。
          ざっと10万GeVぐらいまでの比較的低エネルギーの宇宙線は、超新星爆発の後に残された超新星残骸で作られていると考えられている。
          爆発で飛び散った物質が周囲の星間物質とぶつかって衝撃波を作るのである。
          それより高いエネルギーの宇宙線の起源は未だに宇宙物理学上の大きな謎として残されている。


           
          参考図書
            ・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
            ・「銀河 宇宙140憶光年のかなた」、ジェームズ・ギーチ、(訳)糸川洋、筑摩書房、2014年
            ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
            ・「銀河の中心に潜むもの」、岡朋治、慶応義塾大学出版会、2017年
            ・「宇宙の果てになにがあるのか」、戸谷友則、講談社ブルーバックス、2018年


           








          2020.09.20 Sunday

          宇宙物理学  星雲

          0
            ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 星団、星雲、星間物質 *****

            星雲の実体はガス雲やチリ粒子だ。

            電磁波のスペクトルと放射過程の一般的な説明はこちらで説明してある。 → こちら



            星雲が輝いている仕組みで分類すると

            輝いている仕組みで分類すると以下のようになる。

            星雲
              ・暗黒星雲
              ・散光星雲
                ・反射星雲
                ・電離ガス星雲


            暗黒星雲
            チリ粒子を含むガス雲が背景の光を散乱・吸収して暗く見えている星雲だ。
            可視光で見る限り、暗黒星雲は自ら輝いている星雲ではない。
            しかし、そこに物質がないわけではなく、物質はたくさんある。
            暗黒星雲の主成分は分子ガスやチリ粒子で、その典型的な温度はマイナス260℃程度だ。
            温度が非常に低いので、ダストなどからの熱放射は主に赤外線(波長は数100ミクロン)になる。
            そして分子などからは、その種類に対応した輝線が主に電波として放出されている。


            反射星雲
            自分自身で輝いているわけではなく、近傍にある星の光を反射して輝いている。
            星からの光は主に熱放射(連続スペクトル)なので、反射星雲は連続スペクトルで輝いている。



            電離ガス雲
            強烈な光にさらされたり、ものすごい勢いでガスが衝突してくると、ガス(主に水素原子)は陽子と電子に分かれてしまう。
            これを電離という。
            電離した陽子と電子は再び結合して水素原子になる。
            これを再結合と呼ぶ。
            再結合するときに光を放射し、場合によっては再結合した後も、最もエネルギーの低い状態になるまで、どんどん光を放射していく。
            電離ガス雲は電離されたり再結合したりしながら輝いていて、その光は輝線スペクトルだ。

            強烈な光で電離されている電離ガス雲の代表格は「オリオン星雲」だ。
            「こと座のリング星雲」などの惑星状星雲もこの例だ。
            衝突で電離された電離ガス雲の代表例は、超新星残骸である「かに星雲」だ。
            超新星爆発の強烈な爆風でガスが電離して輝いているのだ。

            水素原子では、可視光領域での明るい輝線は波長が656.3nmのHα線だ。
            だから電離ガス雲は赤く写るのだ。
            また電離されるのは水素原子だけでなく、炭素や窒素や酸素など、さまざまな原子が電離される。
            それらはさまざまな波長で輝くため、かに星雲は色鮮やかな姿をしている。



            以下では、良く使われる分類に従ってそれぞれを見ていこう。



            暗黒星雲

            暗黒星雲は輝きもせず、反射もしない。
            光を吸収することで、シルエットとして見えているのだ。

            最も有名な暗黒星雲はオリオン座の「馬頭星雲」だろう。
            馬の首の部分には何もないわけではない。
            逆に冷たい分子ガスや塵粒子(ダスト)がたくさん詰まっている。
            それらが背後からやってくる星々の光を遮るのでシルエットとして見えるのだ。

              馬頭星雲
                 画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら



            散光星雲(電離ガス星雲)


            オリオン星雲
            きれいな模様は電離したガス雲の輝きである。
            この星雲の中心部には太陽よりも重い星がいくつかある。
            それらの星の表面温度は高く紫外線を出す。
            すると星の周りにあるガスは電離され、イオンになる。
            イオンは電子と衝突してエネルギーをもらうことができるが、エネルギーが低いほうが安定なので、光を放出して低いエネルギー状態に戻る。
            このとき放射される光で輝くのである。
            水素原子の場合は電離すると陽子と電子に分かれるが、また結合する。
            再結合した後、やはりエネルギーの低い状態に戻っていくが、そのとき光を出す。
            可視光で最も明るい光はHα輝線と呼ばれ、波長は656ナノメートルであり、色は真っ赤である。
            Hα輝線は他の輝線に比べて非常に強いので、オリオン星雲では赤い色が目立っている。

              オリオン星雲(M42)
                 画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら



            惑星状星雲

            惑星とは全く関係がなく、望遠鏡で見ると惑星のように見えることからこの名前が付いた。
            惑星状星雲は星の進化の終末期にできるガス雲の姿である。
            中心に残った白色矮星からの紫外線が星の周りに出ていったガスを電離して輝かせるのである。

              リング星雲(M57)
                 画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら


            数十億年後、太陽の周りにも美しい惑星状星雲ができているだろう。



            超新星残骸

            太陽の10倍以上の質量を持つ星は、最後に大爆発を起こして死ぬ。
            超新星と呼ばれる現象である。
            超新星残骸の代表格は「かに星雲(M1)」だ。

            超新星爆発はまさに大爆発で、ガスの飛び散るスピードは秒速数千キロメートルにもなる。
            そのため、ガスは激しくぶつかり、電離される。
            電離されたイオンが明るい輝線放射を出すので、美しい星雲として観測される。

              かに星雲(M1)
                 画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら


             
            参考図書
              ・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年
              ・「アンドロメダ銀河のうずまき」、谷口義明、丸善出版、2019年


             








            2020.09.18 Friday

            宇宙物理学  星団

            0
              ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 星雲、星団、星間物質 *****

              天の川銀河には約2000億個もの恒星があると言われているが、一様に分布しているのではなく、ところどころに恒星の集団がある。
              これらは星団と呼ばれ、散開星団と球状星団の2種類に分類される。



              散開星団

              散開星団は、分子雲から同時期に生まれた兄弟星の集まりだ。
              比較的年齢の若い、数100から数1000個の恒星が不規則に集まっていて、星間ガスをともなっていることもある。

              時間が経つにつれて星々の分布はまばらになり、いずれはばらばらになってしまう。
              だから散開星団として認識されるものは比較的年齢が若いのだ。

              天の川銀河の中では、星は主に円盤部で生まれるので、散開星団は天の川に近いところで多く見ることができる。


              プレアデス星団

              プレアデス星団は数千万年程度の若い星の集団で、約15光年の広がりの中に数1000個もの星がある。
              青く輝く高温の星は、太陽の数倍以上の質量を持っていて、表面温度が1万5000度以上の高温の星である。
              このような星の寿命は、1億年程度以下と短い。

              プレアデス星団の写真には、明るく輝く星の周りに淡い星雲が写る。
              この星雲は星をつくったガスの残りではなく、たまたま星団を高速で通過している星間ガスだそうだ。

              最近の赤外線望遠鏡の観測によると、プレアデス星団の中に褐色矮星がたくさん見つかっている。
              それらの星は低温であるため赤外線を放出しているが、それを捉えるためには赤外線望遠鏡でなければ観測できないのである。
               
                   画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら


              北斗七星

              北斗七星はもともとひとつの星団として生まれたものだという噂がある。
              そこで調べてみたのだが、ちょっと違うようだ。

              おおぐま座運動星団と呼ばれるものがある。
              これに含まれる星は、天の川銀河内でほぼ同じ位置にあり、ほぼ同じ方向に、ほぼ同じ速度で動いているそうだ。
              これらは約5億年前に同じ分子雲で形成され、かつては散開星団であったと考えられている。
              明るい星が多く、北斗七星の7つの星のうち、両端の2つ(おおぐま座α星とη星)を除く5つの星が含まれるとのこと。

              ということで、北斗七星の7つの星のうち5つは兄弟星のようだ。



              球状星団

              球状星団は、数10万から数100万個もの星が、お互いの重力で直径100光年程度の球状に集まった集団だ。
              ごく一部を除いて、星の年齢は100億年前後だ。
              中心部では星の間隔は0.1光年程度しかなく、なかには数光週(光が数週間で走る距離)という密集したものもある。
              ちなみに、太陽に一番近い恒星までの距離は約4.3光年もある。

              球状星団は銀河の円盤部分を取り囲むように分布していて、この領域は「内部ハロー」あるいは「恒星ハロー」と呼ばれている。
              天の川銀河では160個ほど発見されてるが、天の川に隠されて見えていない部分に、さらに50個程度あるらしい。
              アンドロメダ銀河は500個もの球状星団に取り囲まれているだ。

                オメガ星団
                   画像はESOのサイトからお借りしました。 → こちら

                M13
                   画像はNASAのAPODからお借りしました。 → こちら


              ひとつの球状星団の星々はみな同じ年齢であり、これは一つのガス雲から同時に誕生したことを示している。
              しかし、球状星団それぞれは星団ごとに年齢が異なるので、それらができた時期は異なるようだ。
              最も古い球状星団の年齢は130億年よりも古く、最初の銀河ができたと考えられている時代と一致する。

              球状星団の形成に関しては、例えば以下のようなシナリオが考えられている。
              銀河が成長しつつあるときには、その周囲では小さなガス雲どうしが衝突するだろう。
              すると衝撃波がガス雲中を伝わり、中心でスターバーストを引き起こして、一つの新しい球状星団が誕生する。
              ガス雲の中にあった物質の大半は重力で銀河に引き寄せられて、バルジの周辺で成長しつつある円盤の一部となる。
              球状星団の多くは潮汐力で引き裂かれるなどして、星々は内部ハローにばら撒かれていく。
              しかし今日まで生き延びたものもあり、それらが今日観測されている球状星団なのだろう。


              肉眼で見える最大の球状星団はオメガ星団で、数百万個の恒星が密集してる。
              ここでは通常の球状星団と異なり、新しい星も生まれている。
              このような大きな球状星団は、矮小銀河が天の川銀河に飲み込まれ、外側の星が引きはがされて中心部だけが残ったものと考えられている。
              オメガ星団の中心部には太陽質量の約4万倍のブラックホールがあるようで、母体は矮小銀河だったのではという説を裏付けている。
                →  HSTのプレスリリース

              一口に球状星団と言っても、複数の歴史があるようだ。


              球状星団は古い星の集まりだが、その中心部に非常に若い青白い星が存在することがある。
              このような星を「青いはぐれ星」と呼ぶ。
              球状星団の中では星の密度が高いため、星がニアミスして相互作用を起こすことがある。
              合体したり、外層大気を剥ぎとったりして重い青い星になったのではないかと考えられている。

                NGC1466
                   画像はハッブル宇宙望遠鏡のサイトからお借りしました。 → こちら


              また、球状星団M54は天の川銀河に属しているのではなくて、いて座矮小楕円銀河に属する星団だそうだ。
              このように銀河以外のメシエ天体では唯一、天の川銀河の外にある天体だ。


               
              参考図書
                ・「銀河と宇宙」、ジョン・グリビン、(訳)村岡定矩、丸善出版、2008年
                ・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
                ・「銀河 宇宙140憶光年のかなた」、ジェームズ・ギーチ、(訳)糸川洋、筑摩書房、2014年
                ・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年


               








              2020.09.17 Thursday

              宇宙物理学  系外惑星

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                ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 系外惑星 *****

                系外惑星とは太陽系以外の惑星のことだ。
                観測技術の進展によって、いろいろと面白いことが分かってきた。
                これを機会に太陽系を見直すと、当たり前だと思っていたことがそうではなかったことに気づく。

                NASAのこのサイトが面白い → こちら

                ただし(当たり前のことだが)、どうしても見つかりやすいものから見つかっているので、まだまだサンプルが偏っていることを忘れてはいけない。



                惑星を持つのは当たり前

                2009年に打ち上げられたケプラー宇宙望遠鏡は、トランジット法で数千個もの新しい系外惑星を発見した。
                それによって、系外惑星の統計的な性質がいろいろと分かってきた。
                  ・恒星は少なくとも1個以上の惑星をもつようだ。
                  ・ハビタブルゾーンに地球くらいの大きさの惑星(ハビタブルプラネット)がある割合は、
                     太陽型星だとだいたい2割(誤差は1割)程度
                     太陽より温度が低い赤色矮星では5割(誤差は3割)程度

                ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)とは、主星からの距離がちょうど良く、表面に液体の水を保持できるような軌道のことだ。



                系外惑星の多様性

                発見された系外惑星を見ていると、何ともはやバラエティに富んでいてびっくりする。


                灼熱の巨大惑星(ホットジュピター)
                木星くらいの質量をもつ巨大惑星が、主星に非常に近いところを公転している。
                公転距離は0.05天文単位ほどしかなく、公転周期は数日程度だ。
                太陽型星の約1%弱はホットジュピターを持っている。
                 
                     画像はNASAのサイトからお借りしました。 → こちら

                極端な楕円軌道の惑星(エキセントリックプラネット)
                太陽系には存在しないが、宇宙にはありふれているそうだ。

                主星の自転と逆向きに公転する惑星(逆行惑星)
                2019年までに10個以上発見されている。

                主星から遠く離れた大質量の惑星(遠方巨大惑星)
                およそ20天文単位より外側には木星程度以上の質量をもつ惑星は存在しないと思われていた。
                数は少ないものの、巨大惑星が惑星系の外側の領域にも存在しうることが分かってきた。

                大きな岩石惑星?(スーパーアース)、小さなガス惑星?(ミニネプチューン)
                質量と半径において、岩石惑星である地球とガス惑星である海王星のあいだに位置する系外惑星が発見され、
                スーパーアースと総称されている。
                それぞれを、スーパーアース/ミニネプチューンと分類することもある。
                宇宙ではありふれた存在であることが分かってきた。

                生命を育むかもしれない惑星(ハビタブルプラネット)
                主星からの公転距離がちょうどよく、液体の水が表面に存在できるような領域をハビタブルゾーンと呼んでいる。
                ハビタブルゾーンの中にある岩石惑星をハビタブルプラネットと呼ぶ。
                しかし、実際に液体の水があるかどうかとは無関係で、観測によって調べてみないと分からない。



                7姉妹の惑星系
                 
                     画像はNASA/JPLのサイトからお借りしました。 → こちら

                この惑星系は、赤色惑星に特化したトランジット惑星探しを行う地上観測チームTRAPISTによって発見された。
                主星は太陽系から約40光年のところにある。
                なんと7つの惑星がトランジットしている惑星系であることがわかった。
                そして、7つのうち少なくとも3つの惑星がハビタブルプラネットだった。
                さらに、各惑星の質量と半径も観測で求められ、すべての惑星が地球とかなり近い質量と半径をもちことがわかった。
                この7つの惑星はすべて20日以下の周期で公転している。
                主星が超低温の赤色矮星なので、ハビタブルゾーンは公転周期がおよそ10日附近のところにある。

                この惑星系では、ハビタブルゾーンの中に3つも惑星があるだけでなく、ハビタブルゾーンより近いところや遠いところにも同じような質量と半径の惑星がある。
                つまり、ひとつの惑星系の中に灼熱の惑星から凍りついた惑星までもがあるということだ。
                 
                     画像はNASAのサイトからお借りしました。 → こちら



                惑星系形成論の見直し

                太陽系惑星とはまったく異なる多様な系外惑星が宇宙に存在していることが分かってきた。
                このような多様な系外惑星の成り立ちは、京都モデルではほとんど説明できない。

                そのため、太陽系惑星を標準として考えられてきた惑星系形成論は、大幅な見直しを迫られた。
                しかし、全てを説明できる新しい惑星系形成論はまだ完成していない。

                新しいモデルと従来の京都モデルの最大の違いは、惑星が内側や外側に動くことを許すがどうかだ。
                京都モデルでは、惑星は形成した場所から内側にも外側にも大きく移動しないことを仮定していた。
                それに対し新しいモデルでは、惑星が形成・成長しながら、あるいは成長し終えた後で動径方向に移動する可能性を考える。
                このように惑星の軌道が時間とともに変わっていくことを軌道進化と呼ぶ。

                新しいモデルではさらに、それぞれの惑星系の環境の多様性も考慮されている。
                環境の多様性とは、たとえば伴星の有無や、形成される巨大惑星の数などだ。
                 
                     画像は茨城大学のサイトからお借りしました。 → こちら



                太陽系は特別な存在か?

                太陽系は惑星系の標準ではない。
                太陽系は多様な姿をもつ惑星系のひとつに過ぎない、というのが現状の認識だ。

                では、太陽系のような姿の惑星系はめったにない特別な存在なのだろうか?
                それとも、普遍的に存在するありふれた惑星系なのだろうか?

                残念ながら、この問いにはまだ答えることができないそうだ。



                地球は特別な惑星か?

                ハビタブルゾーンにある岩石惑星という意味でのハビタブルプラネットは、宇宙で比較的ありふれた存在のようだ。
                2割程度の太陽型星と5割程度の赤色矮星が、ハビタブルゾーン付近に地球の2倍以下の半径の惑星をもつといわれている。
                この割合はやや楽天的で、誤差もあるし、すべてが岩石惑星ではないかもしれない。
                しかしハビタブルプラネットはある程度宇宙に普遍的に存在しているようだ。

                しかし、地球のように実際に生命を育む惑星が普遍的かどうかはまだ分からない、というのが現状のようだ。



                私は、現在私たちの住む地球環境が、奇跡的な状態の積み重ねで成り立っていると感じている。
                特別という表現は使いたくないが、普遍的に存在するありふれたものとはとても思えない。


                 
                参考図書
                  ・「地球は特別な惑星か?」、成田憲保、講談社ブルーバックス、2019年


                 








                2020.09.16 Wednesday

                宇宙物理学  星の晩年と最後 (4) 近接連星系の場合

                0
                  ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****

                  私たちの太陽は単独でいるが、このように単独でいる星は全体の1/3くらいしかないそうだ。
                  連星の中でも、互いの星が接触するくらい近くを回っているようなものを「近接連星」と呼ぶ。

                  一方が赤色巨星で他方が白色矮星になったら何が起きるだろう?



                  近接連星

                  白色矮星の強い潮汐作用によってペアの星から水素ガスが流れ出し、大量に降り注がれることはそれほど珍しいことではないようだ。
                  下の絵は想像図で、左側の赤色巨星から右側の白色矮星へとガスが流れ込んでいるところだ。
                  流れ込んだガスは高密度星の周りに円盤を形成するが、これを「降着円盤」と呼ぶ。

                  ミラと白色矮星の連星系が相互作用する様子を、X線観測衛星チャンドラ(CHANDRA)が捉えた。
                  ミラは太陽の600倍の大きさにまで成長した巨星で、330日ほどで劇的に明るさを変える変光星として有名だ。
                  巨星からはX線アウトバーストが観測され、また巨星と白色矮星とをつなぐように物質が流れている証拠も見つかった。
                  下図で、左はX線画像で、右はミラの連星系の想像図だ。
                   
                       画像はCHANDRAのサイトからお借りしました。 → こちら

                  アストロアーツ・ニュースに記事がある。 → こちら



                  新星

                  ガスの供給は長期にわたって持続するので、白色矮星の表面には次第に水素が堆積する。
                  ガスは白色矮星の固い表面にぶつかって熱せられ、重力によって圧縮されて密度が高まっていく。
                  やがて核融合反応を起こす条件が整って、白色矮星の表面全体で爆発が起こる。
                  これが「新星(ノヴァ)」として観測される現象だ。
                  この爆発は一度だけではなく、何度も起こる。
                  ただし新しい水素すべてが燃え尽きるわけではない。
                  従って徐々に質量が増加していく。



                  a型超新星

                  そしてある一定の質量を超えると、その重みに耐えられなくなり、核暴走反応が起こる。
                  この限界質量は太陽質量の約1.4倍で、チャンドラセカールの臨界質量と呼ばれている。
                  この核暴走反応が星全体に広がり、大爆発を起こすのが「a型超新星」だ。
                  このタイプの超新星爆発では、全てが吹き飛んでしまい、中性子星は残らないと考えられている。
                   

                  限界質量は物理法則で決まっているために、爆発の規模がほぼすべて同じであることが期待される。
                  実際には、明るくなった後に、減光していくその速さが速い超新星ほど暗く、ゆっくりなものほど明るいことが1990年代に明らかにされた。
                  その結果、このタイプの超新星爆発の明るさが非常に厳密に求められるようになったのである。
                  爆発の明るさがわかれば、観測されるみかけの光度と比較することで、その超新星までの距離を求めることができる。
                  超新星は明るいため遠くにあっても観測できるので、遠方銀河の距離指標によく使われるようになった。


                  ここでもう一度、近接連星の進化の様子をまとめてみる。
                   
                      画像は ESO Supernova のサイトからお借りしました。 → こちら



                  鉄より重い元素の合成

                  星の中で定常状態で静かに起こる反応では、元素合成は最も安定な鉄までしか進むことができない。

                  それでは、鉄よりも重い元素はどうやってつくられるのか?
                  その鍵を握るのは中性子である。
                  中性子は電荷を持たないのでクーロン斥力が働かない。
                  したがって、容易に原子核のそばまでたどりつくことができる。
                  何らかの理由で中性子を作り出すプロセスがあれば、原子核は中性子を吸い、重い原子核になり、不安定な原子核になってベータ崩壊する。
                  中性子の吸収と崩壊を繰り返しながら鉄よりも重い元素が作られていったと考えられている。

                  鉄よりも重い元素の生成過程は主に2種類あると考えられている。
                  遅い過程(s−過程、slow-process)と、速い過程(r−過程、rapid-process)だ。


                  赤色巨星、正確には漸近巨星分枝(小質量の恒星が年老いた段階)と呼ばれる種族は、恒星が若い時代にはつくれなかった重い元素をつくることができるという。
                  水素を燃やした後にヘリウム燃焼・ヘリウムフラッシュという現象が始まると、鉄より重い元素がゆっくりと中性子を捕獲しながら、より重い原子核が合成されることが知られている。
                  つくられた粒子はその後、β崩壊して(鉄よりは重いが)安定な元素に落ち着く。
                  このスロープロセス(s-process)のタイムスケールは約1000年で、文字通り、とてもスローなプロセスだ。
                  「魔法の数」と呼ばれる特別な組み合わせの陽子数と中性子数をもつ、安定した元素がこのスロープロセスでつくられる。


                  内部環境が急激に変化する状況では、定常状態では起こり得ないような反応も起こり、金や銀そしてウランなど鉄より重い元素が生成されうる。
                  超新星爆発はまさにそのような状況で、鉄より重い元素は超新星爆発で合成されるというのが定説だった。

                  重力崩壊型の超新星爆発ではニュートリノが大量に放射される。
                  そしてそのニュートリノが中心に作られた原始中性子星から中性子をはがすということが起こる。
                  鉄を核として、極めて短い時間にそれらの中性子が大量にくっついた結果、金、白金、ウランのような超重力級の元素ができるという。
                  このプロセスは1秒以下とタイムスケールが非常に短く、早いため、ラピッドプロセス(r-process)と呼ばれている。
                  中性子はβ崩壊する前にどんどんくっついていくので、これらの重い原子核になれるのだ。
                  だが、このシナリオでは元素の観測量が十分に説明できないことが指摘されている。

                  それに対し、最近は新しいシナリオが提案されている。
                  そのひとつは、中性子星連星系の衝突・合体による元素合成だ。
                  中性子星は況芯郷契映発によって誕生するが、2個の中性子星が互いを周回しているものも考えられる。
                  中性子星連星系は、数億年かけて徐々に軌道を縮め、接近し、しまいには衝突・合体すると予想される。
                  合体した後は高い確率で1個のブラックホールになる。
                  そしてそのような衝突・合体の際には、あたりに飛び散った中性子が大量の重元素を作るはずだ。
                  中性子星連星系の衝突・合体は、超新星爆発よりもずっと稀な出来事だ。
                  しかし、1回の衝突・合体で作られる重元素が多いため、元素によっては超新星爆発よりも貢献が大きい可能性がある。

                  重力波望遠鏡LIGOが、2017年8月17日に検出した重力波は、中性子星連星系の衝突・合体だった。
                  そして様々な観測の解析結果は、重元素が大量生産されたことを示していた。
                  中性子星連星系の衝突・合体は思っていたよりも稀な現象でないのかもしれない。

                  鉄より重い元素の合成は、超新星爆発と中性子星連星系の衝突・合体、どちらでも実際に起こっているのだろう。
                  そして、中性子星連星系の衝突・合体のほうがより貢献しているのかもしれない。

                  LIGO のサイトでこんな表を見つけた。
                   
                       画像はLIGOのサイトからお借りしました。 → こちら


                   
                  参考図書
                    ・「宇宙入門」、池内了、角川ソフィア文庫、2015年
                    ・「輪廻する宇宙」、横山順一、講談社ブルーバックス、2015年
                    ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
                    ・「宇宙はどのような時空でできているのか」、郡和範、ベレ出版、2016年
                    ・「宇宙はどこまでわかっているのか」、小谷太郎、幻冬舎新書、2019年


                   








                  2020.09.13 Sunday

                  宇宙物理学  星の晩年と最後 (3) 太陽質量40倍以上の場合

                  0
                    ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****

                    太陽質量の40倍程度以上の星は、中性子星として生き残れず、潰れてブラックホールになってしまう。



                    重力崩壊

                    太陽質量の40倍程度までの星は、超新星爆発を起こしても、中心のコアは中性子星として生き残る。
                    この中性子星は「中性子の縮退圧」と呼ばれる力で支えられている。


                    しかし、この力で支えることができる質量には上限があり、中心に残ったコアが太陽のおよそ2〜3倍を超える場合は、さらに潰れてブラックホールになると考えられている。
                    この質量限界は「トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界」と呼ばれる。

                    自分自身の重さに耐えきれず、その重力によって縮んでいくしかない状態を、「重力崩壊」と呼ぶ。

                    星が縮んでいくと聞くと、星を作っている物質が星の中心に向かって落ち込んでいくことをイメージするだろう。
                    しかし、一般相対性理論ではそう考えない。
                    物質が落ち込んでいくのではなく、時空が落ち込んでいくのである。
                    つまり、あくまでも「物質=時空の歪み」なのだ。

                    そうすると、重力崩壊の意味合いが違ってくる。
                    結局、重力崩壊は時空が縮んでいくことに他ならないからだ。
                    この時空の縮む速度が光の速度を超えたらどうなるだろうか。
                    当然のことながら、その場所から光(電磁波)が私たちに届くことはない。
                    つまり、そこがブラックホールになったと考えるのだ。


                    超新星爆発が起こると大量のニュートリノが発生する。
                    だがもし、爆発を起こした超新星がつぶれて、そこにブラックホールが生まれると、発生したニュートリノはそこから出られなくなってしまう。
                    だから、ニュートリノが来なくなった瞬間をとらえることができれば、そこでブラックホールが誕生したことが分かるという。
                    スーパーカミオカンデが最大のターゲットのひとつとしているのがその現象だそうだ。



                    ガンマ線バーストと極超新星

                    中心にブラックホールができる場合は、落ち込んでくる物質のほとんどはブラックホールに吸い込まれて大きな爆発は起こさず、明るく輝くことはないだろうと思われていた。
                    これを「サイレントスーパーノヴァ(沈黙の超新星)」と呼ぶことがある。
                    暗くて観測はできないものの、このようなサイレントスーパーノヴァは天の川銀河の中に大量にあるだろうと思われていた。

                    しかし自然は、ブラックホール出現という晴れ舞台にふさわしい、もっと派手な演出を用意していたのだ。
                    それが「ガンマ線バースト」だ。


                    ガンマ線バーストは、2秒を境に継続時間が短いものと長いものに分類される。
                    それらをそれぞれ、「ショートガンマ線バースト」と「ロングガンマ線バースト」と呼ぶ。
                    このロングガンマ線バーストの正体がブラックホールをつくる「極超新星」なのだ。
                    超新星を「スーパーノヴァ」、極超新星を「ハイパーノヴァ」という。
                    極超新星は普通の超新星の10倍から100倍ものエネルギーになる。


                    多くの星は自転しているので、できるブラックホールも回転している。
                    角運動量が保存されるので、潰れて小さくなった分だけ速い速度で回転することになる。
                    こうしてできた高速回転しているブラックホールに、もともとの星の外側の物質が落ち込んで、ブラックホールのまわりに円盤をつくる。
                    これを「降着(こうちゃく)円盤」と呼ぶが、この円盤ももちろん高速で回転する。

                    円盤ができると不思議なことが起こる。
                    落ち込んだ物質の一部が自転軸の方向に細く絞られて、猛烈な勢いで飛び出してくるのだ。
                    このメカニズムは完全には分かっているわけではないが、円盤内で発生した磁場が深くかかわっていると考えられている。
                    このジェットの速度は光の速度にほぼ等しく、それがまだ落下していない星の外層の物質とぶつかってガンマ線が放射される。
                    ガンマ線の放出はジェットの方向に細く絞られており、我々がたまたまそのジェットの方向にいる時だけ、ガンマ線バーストとして観測されるのだ。
                    ジェットを考慮に入れると、ガンマ線バーストの発生頻度は、我々が検出しているより100倍も多くなるという。

                    下図はガンマ線バーストの想像図だが、リンク先には京都大学の戸谷友則さんの解説もある。
                     
                         画像は京都大学の戸谷友則さんのサイトからお借りしました。 → こちら


                    なお、ショートガンマ線バーストの正体は、2つの中性子星の衝突という説が有望だが、まだ確定的なことは分かっていない。
                    もし中性子星の合体だとすると、合体の結果、ブラックホールができるだろう。



                    極超新星爆発間際?の星

                    りゅうこつ座にカリーナ星雲と呼ばれる星雲がある。
                    地球から約7500光年彼方にあり、200光年ほども広がった大きな星雲で、現在多数の星が生まれている。
                    この星雲の中には、太陽質量の50倍以上の巨大な星が多数存在している。
                    そのなかで太陽質量の100倍程度、直径が太陽の200倍程度、表面温度4万度程度、明るさが太陽の40万倍程度という、もっとも重たく明るい「青色超巨星」がある。
                    この星をエータカリーナという。

                    エータカリーナの周りには、人形星雲と呼ばれる2つの団子が串刺し乗になったような星雲があるが、1841年のときの爆発でその一部ができたと考えられている。
                    過去にこの星は何度も爆発していることが知られている。
                     
                         画像はESOのサイトからお借りしました。 → こちら


                    最後に星全体を吹き飛ばす大爆発を起こすと考えられている。
                    星の質量が非常に大きいため、中心核はブラックホールをつくるはずだ。
                    このような爆発によって放出されるエネルギーは、中性子星をつくるような超新星爆発よりも数10倍も大きい。
                    そのため、超新星と区別して極超新星と呼ばれる。



                    恒星質量ブラックホール

                    こうしてできたブラックホールの典型的な質量は、太陽質量の数倍から15倍程度で、「恒星質量ブラックホール」と呼ばれる。
                    誕生時の恒星の質量には理論的な上限があり、それは太陽の400倍程度らしい。
                    とはいえ、爆発前に自身の輻射圧によって外層部の大部分を失っていくため、残されるブラックホールの質量は20太陽質量を超えないと考えられている。

                    現在、銀河系内に恒星質量ブラックホールはどのくらいあるのだろうか?
                    1億個から10億個と推定されるそうだが、X線天体として観測されたブラックホール候補天体の数(60数個)に比べて、まったく比較にならないくらい膨大な数である。
                    つまり、われわれの住む銀河系には、膨大な数の「暗い」恒星質量ブラックホールが潜んでいるということである。


                    これまでで最も地球に近いブラックホールが発見されたそうだ。

                    ぼうえんきょう座の方向約1000光年の距離にある恒星「HR 6819」は、5.3等級の比較的高温で青白い星だ。
                    1個の恒星に見えるが、実際には内側に恒星とブラックホールの連星があり、その外側を上記の青白い恒星が回っている三重連星系だったそうだ。
                    ブラックホールの質量が少なくとも太陽の4.2倍あるが、激しい活動性は見られず、まさに「真っ黒」だとのこと。

                    下図は三重連星系HR 6819のイラスト。
                    内側にB3型の恒星(水色の軌跡)とブラックホール(赤い軌跡)との連星系があり、40日周期で互いの周りを回っている。
                    その外側をもう一つのBe型星が回っている(水色の大きな軌跡)。
                     
                         画像はESOのサイトからお借りしました。 → こちら

                    アストロアーツのニュース記事がある。 → こちら


                     
                    参考図書
                      ・「ブラックホールで死んでみる」、ニール・ドグラース・タイソン、(訳)吉田三知世、早川書房、2006年
                      ・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
                      ・「宇宙は何でできているのか」、村山斉、幻冬舎新書、2010年
                      ・「ブラックホールに近づいたらどうなるか?」、二間瀬敏史、さくら舎、2014年
                      ・「時空のさざなみ」、ホヴァート・シリング、(訳)斉藤隆央、化学同人、2017年
                      ・「宇宙の果てになにがあるのか」、戸谷友則、講談社ブルーバックス、2018年
                      ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年


                     








                    2020.09.12 Saturday

                    宇宙物理学  星の晩年と最後 (2-2) 中性子星

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                      ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****

                      前回の続きです。


                      中性子星

                      超新星爆発で星全体が飛び散っても、中心のコアは生き残る。
                      それが「中性子星」だ。
                      これは一つの巨大な原子核といってもよいような、とても奇妙な星?だ。

                      もともとの星が太陽質量の8倍以下の場合には、中心核は白色矮星として残る。
                      そこでは「電子の縮退圧」が星が自分の重力で潰れようとするのに対抗している。
                      しかし残った中心核の質量が太陽質量の1.44倍を超えると、電子の縮退圧では中心核が重力崩壊することを止められなくなる。
                      この質量を「チャンドラセカール限界」と呼ぶ。

                      中性子星では、電子の縮退圧ではなく、「中性子の縮退圧」で重力崩壊を免れることができている。

                      中性子星は、その質量は太陽質量の1〜2倍程度で、その半径はおよそ10〜15km程度であることが観測からわかっている。
                      これは同じ質量のブラックホールの大きさの3倍ほどしかない。
                      まさにブラックホールの一歩手前の天体だ。
                      そのため、中性子星の密度は原子核と同程度から数倍程度に達し、1cm3当たり10〜30億トンにもなる。
                      物質とはいえないブラックホールを除けば、宇宙で最高密度の天体である。
                      そのため、表面での重力は地球表面での値の1000億倍以上になるというが、まったく想像もつかない。


                      中性子星の中身がどうなっているかはよくわかっていない。
                      ”宇宙に浮かぶ巨大原子核”とも言われているが、その内部はわれわれの知る原子核とも異なるようで、謎に包まれた超高密度物質である。
                      通常の原子核は質量数の大小を問わずほぼ一定の密度をもつが、中性子星は中心からの距離に応じてさまざまな密度になっているようだ。
                      2層のコア、2層の地殻、そして薄い大気があるようだが、、、。
                       
                           画像はNASAのNICERのサイトからお借りしました。 → こちら


                      超新星爆発を起こした元の星の中心核が角運動量や磁束を保存しつつ収縮すると仮定すると、生まれたての中性子星は(その表面で)1億テスラという超強磁場を持ち、毎秒数百回という高速で自転することになる。
                      中性子星の磁場をこのように見積もるのは正確さに欠けるが、概ね正しい値に導くようだ。
                      (テスラは 磁場(磁束密度)の国際単位系 (SI) で、 1テスラは1万ガウスに等しい。)
                      ちなみに,地球磁場は2万分の1テスラ,実験室で定常的に作れる磁場は最大100テスラ程度である。

                      つまり中性子星は、自転速度と磁場強度が半端でない天体なのだ。
                      また中性子星の重力によって周囲の物質が引き込まれて高温になることで、強いX線が発生することがある。



                      超新星爆発は稀な現象だが、銀河系の中でも数100年に一回程度発生する。
                      歴史的に有名な超新星爆発の1つが、1054年に出現したものだ。
                      木星ほどの明るさに見えたそうで、その残骸は「かに星雲(M1)」として現在でも見ることができる。
                      さらにその星雲の中心にはパルサーと呼ばれる高速回転している中性子星が見つかっている。

                      下の写真は、かに星雲の中心にあるパルサーの様子を撮影したものだ。
                      X線,赤外線,可視光線の画像を合成してある。(ウェブサイトではそれぞれの画像も見れる。)
                       
                           画像は「チャンドラX線観測衛星」のウェブサイトからお借りしました。 → こちら



                      電波パルサー

                      パルサーは、電磁波(光,電波,X線,ガンマ線など)を周期的に規則正しく放射している天体だ。
                      その周期は数ミリ秒から数秒と非常に短く、また電子時計にも匹敵するほどの精度だという。

                      1967年に、イギリスのケンブリッジ大学の電波望遠鏡が不思議な電波信号をキャッチした。
                      4秒間に約3回やってくるこの信号はとても正確で、その周期に1億分の1秒の狂いもない。
                      それから1ヶ月ほどのあいだに、別の場所でも似たような信号がさらに3つ発見さた。
                      最初は宇宙人が送ってきた信号なのではと考えて、この宇宙人に「緑の小人たち(Little Green Men)」と名付けたそうだ。
                      やがて、この信号を発しているのは天体に違いないということになって、脈動する星という意味で「パルサー」と命名された。


                      パルサーの正体は、超新星爆発によって生まれた中性子星から発せられる放射状のビームだ。
                      もともとの星が持っていた磁場が爆発後にきわめて小さな領域に閉じ込められるため、中性子星表面の磁場の強さは地球の磁場の1兆倍にもなる。
                      その強力な磁場によって、中性子星の表面から電子やイオンがはぎとられ、それらの粒子は光速近くまで加速される。
                      特に磁場の北極と南極には電子やイオンが勢いよく落ち込んだり放出させられたりするために、北極や南極から電磁波がビーム上に放射される。
                      磁極は天体の自転軸と一致せずにずれていることが普通なので、中性子星が自転すると放射される電磁波のビームは周りの空間を掃くようにくるくると回転する。
                      そして、ビームの方向がたまたま地球を照らす場合に地球からは周期的に電磁波のパルスがやってくるように観測される。
                      だから「宇宙の灯台」とも呼ばれるパルサーの正体は中性子星だが、中性子星の全てがパルサーというわけではないそうだ。
                       
                           画像はJAXAのサイトからお借りしました。 → こちら


                      電波パルサーの回転はだんだん遅くなり,その減速の割合から磁場の強さが推定できるという。
                      それによると,多くの電波パルサーは,(やはり)1億テスラ程の磁場を持つそうだ。
                      また,自転の減速の割合から大まかな年齢を推定することができるという。
                      それによると,おおよそ100万年から1000万年ほどで,天文学的に言えば,電波パルサーは若い(死んで間もない)天体ということになる。
                      電波パルサーの自転周期がだんだん伸びて10秒近くになると、電磁波が放射できなくなってしまうそうだ。
                      これは電波パルサーの死であろう。



                      マグネター

                      通常の中性子星よりも磁場が数1000倍も強い天体を「マグネター」と呼ぶ。
                      宇宙に存在する天体の中で最も強い磁場を持ち、その強さは人類が作り出した最強の磁石をさらに1億倍も上回るという。

                      2020年3月12日に、NASAのガンマ線バースト観測衛星がいて座の方向で強いX線のバーストをとらえた。
                      さらに地上の電波望遠鏡による追観測で、電波でもX線と同じ周期のパルスを放射していることが明らかになり、この天体がパルサーであることが判明した。
                      しかも、これまでに見つかっているマグネターの中で最も年齢が若いことも明らかになった。
                      なんと約240年ということだが、残念ながら超新星は記録されていない。

                      詳しくはアストロアーツのニュース記事で → こちら


                       
                      参考図書
                        ・「重力機械」、ケイレブ・シャーフ、(訳)水谷淳、早川書房、2012年
                        ・「ブラックホール・膨張宇宙・重力波」、真貝寿明、光文社新書、2015年
                        ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
                        ・「重力で宇宙を見る」、二間瀬敏史、河出書房新社、2017年
                        ・「銀河の中心に潜むもの」、岡朋治、慶応義塾大学出版会、2017年
                        ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年


                       








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