2020.08.01 Saturday
宇宙物理学 太陽の構造
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まずは、太陽の内部と大気の様子を見てみよう。
[太陽の内部構造]
太陽はタマネギのような多層構造になっている。
図は Wikipedia からお借りした。 → こちら
タマネギの茶色の薄皮に当たる部分が「光球」で、温度は約6000度だ。
そこから私たちの目に見える「可視光」が放たれている。
光球をめくると、米粒のようなものが下からわき上がっては下へ潜り込んでいく様子が見えてくる。
ここが「対流層」で、内部で暖められたガスが浮力によって上昇し、外側で冷やされて下降していく。
対流層の厚みは太陽の半径の約30%だ。
温度は、この層の最も内側が100万度で、外側にいくほど下がり、最も外側では1万度だ。
対流層をめくると、薄皮がまた現れる。
ケーキでスポンジとスポンジの間のつなぎとして使われる生クリームのようなこの層は「タコクライン」と呼ばれる。
ここは太陽の磁場にとって非常に重要な領域だ。
タコクラインをめくると、今度は「放射層」が現れる。
厚さは太陽半径の約50%にもなる。
温度は最も内側が700万度で、最も外側が200万度だ。
対流層の一番外側のガスは大部分が水素やヘリウムなどの中性粒子だが、対流層をちょっと中に入ると、原子核と電子がバラバラになったプラズマ状態になっている。
対流層のプラズマは対流運動のため動き回っているが、放射層ではプラズマはほとんど動いていない。
放射層をめくると、最後の層が現れる。
この部分は「中心核(コア)」と呼ばれている。
太陽の体積のたった1%を占めるに過ぎないこの中心核は、温度は約1500万度で、ガスの圧力は2400億気圧もあり、熱核融合反応によってエネルギーを生み出している。
[エネルギーの流れ]
太陽の中心部では、核融合反応で非常に高いエネルギーを持った大量の光子(ガンマ線)が生まれる。
放射層はガス(プラズマ粒子)がぎゅうぎゅうに詰まっているので、光子は周囲のガスに頻繁にぶつかってまっすぐに進むことができない。
プラズマ状態の原子核や電子は、光子を吸収して、また吐き出す。
そのたびに光子はエネルギーを少しずつ失っていく。
対流層でも似たような状況だが、放射層に比べると密度がずっと低いので、ガスは比較的自由に動くことができる。
下から熱せられたガスは、対流によってどんどん上へ運ばれていく。
光子が中心核から光球まで達するには非常に長い時間がかかり、10万年とも100万年とも言われている。
私たちは、光子がまっすぐに進むようになって、初めて見通すことができる。
ランダムウォークしていた光子がまっすぐ進むようになった位置が光球で、私たちはそこを太陽の表面として見ているのだ。
また、核融合反応ではニュートリノも生まれる。
ニュートリノはどんな高密度の物質もほとんど素通りしてしまうので、2秒ほどで太陽から逃げ出してしまう。
このニュートリノは地球にも達し、私たちの体を毎秒10兆個ほども通り抜けているという。
[太陽の大気]
光球の上空には太陽の大気が広がっている。
図は NAOJ からお借りしました。 → こちら
太陽表面のすぐ外側は「彩層」と呼ばれ、その外側には「コロナ」と呼ばれる高温で稀薄なガスが太陽半径の数倍以上に広がっている。
彩層は、皆既日食の際に太陽全面が月に隠される直前に、光球のすぐ上で赤く光り輝く層だ。
彩層の温度は6000度〜2万度で、コロナの温度はなんと100万度〜200万度もある。
彩層とコロナの間に遷移層と呼ばれる層があり、ここで温度が急上昇する。
太陽表面の光球の温度が約6000度なのに、その上の大気のほうが温度が非常に高くなっているのがとても不思議だ。
どうしてこんなことになっているのだろう?
これは「太陽コロナ過熱問題」と呼ばれ、古くから取り組まれている謎のひとつだ。
具体的にどうやって加熱しているかは依然として謎が多いが、磁場が鍵を握っているのは間違いない。
コロナをつくっているプラズマのガスの一部は、宇宙空間に流れ出る。
これは「太陽風」と呼ばれ、秒速数百kmの速度で、冥王星をはるかに越える場所まで届いている。
参考図書
・太陽と地球のふしぎな関係」、上出洋介、講談社ブルーバックス、2011年
・「太陽に何が起きているか」、常田佐久、文春新書、2013年
・「驚異の太陽」、鈴木建、日本評論社、2020年
・太陽と地球のふしぎな関係」、上出洋介、講談社ブルーバックス、2011年
・「太陽に何が起きているか」、常田佐久、文春新書、2013年
・「驚異の太陽」、鈴木建、日本評論社、2020年
太陽を理解するためのキーワードは「磁場」らしい。
そこで、次は電磁気に関して少し復習することにしよう。