2020.08.03 Monday
宇宙物理学 電磁気学 (1) 磁場とは?
***** 基礎物理学 > 電磁気学 *****
太陽の磁場の話をする前に、電磁気学を少し勉強しようと思う。
電気の振る舞いは何とか分かるのだが、磁気の振る舞いはどうもイメージが湧かない。
しかし宇宙物理学には磁場の話がよく出てくるので、何とか頑張ってみよう。
[電磁気学は苦手だ]
電磁気学は大学の1年で必修科目として習ったが、「div」や「rot」などが馴染めずに単位を落としたという苦い経験がある。
カリキュラムの構成上、これを落とすと4年間での卒業は不可能だった。
しかし単位を落とした学生があまりに多かったので、幸いなことに特別な計らいで救済された(苦笑)。
そんなわけで、電磁気学は今も苦手である。
似たような概念を示す言葉が複数存在することは、頭が混乱してしまう要因のひとつだ。
・電界と電場 (磁界と磁場)
・電束と電気力線 (磁束と磁力線)
どうも、理学系(物理系)では電場や磁場という言葉を使い、工学系(電気系)では電界や磁界という言葉を使うようだ。
以下では主に、電場、磁場、電気力線、磁力線、という言葉を使うことにする。
電気は「電気力線」で「りきせん」と読み、磁気は「磁気力線」ではなく「磁力線」で「りょくせん」と読むのはご愛嬌だろうか?
[電荷、電場、電気力線]
電気的な力の源は電荷だ。
電荷にはプラスとマイナスがあり、それぞれ単独で存在することができる。
例えば、電子はマイナスの電荷を持っていて、陽子(ようし)はプラスの電荷を持っている。
電荷を持つ物体(粒子など)の周囲には、電場が形成される。
電気力線は電場の様子を視覚的に表現するために考えられた仮想的なものだ。
例として、2つの電荷が空間に固定された場合の電気力線を下に示す。
電気力線は、正の電荷から負の電荷へと向かう線として描かれる。
それはベクトルであり、力線の(接線)方向は電場の方向を示し、力線の密度は電場の強さを表す。
電気力線は、交わったり枝分かれしたりしないし、電荷のないところで途切れたり急に始まったりしない。
[磁荷、磁場、磁力線]
磁気も電気と同じように、磁荷が存在すると周囲に磁場が形成される。
磁力線も磁場の様子を視覚的に表現するための仮想的なものだが、これを考え出したのはマイケル・ファラデーだ。
磁力線もベクトルであり、力線の(接線)方向は磁場の方向を示し、力線の密度は磁場の強さを表す。
電気力線と同様に、交わったり枝分かれしたりしないし、磁荷のないところで途切れたり急に始まったりしない。
棒磁石の周りの磁力線は下図のようになる。
棒磁石の両端にN極とS極が局在していると考えればよい。
では棒磁石の中では磁力線はどうなっているのだろう?
参考図書には、頭が混乱してくるだけなので、それ以上踏み込まないほうが良いと書いてあった。
[単極の磁荷は存在しない]
しかし、
磁荷は必ずN極とS極のペアで存在し(これを磁気双極子と呼ぶ)、単極の磁荷は見つかっていない。
おそらく存在しないのではないかと考えられているそうだ。
ここが電荷と磁荷の大きく異なる点だ。
では磁荷とは一体何者だろう?
磁荷そのものの実体はなく、磁気の起源は電荷の動きなのだそうだ。
電荷の動きは電流と言い換えることができる。
電荷は、止まっているときには周囲に電場を作るが、動き出すと電場に加えて磁場も作ってしまうということらしい。
??? 私にとっては、このあたりが第1の関門だ。
[電流が作り出す磁場]
まっすぐな導線を流れる電流の周囲には、下図のような磁場が形成される。
図のように、下から上へと電流が流れる場合には、上から見ると反時計回りに磁場ができる。
この様子は、通常のねじ(右ねじ)を締め付けるときに対応させて「右ねじの法則」と呼ばれている。
ねじの進む向きが電流に、ねじの回転方向が磁場に対応するのだ。
電流が環状に流れる場合は、電流の微小部分がそれぞれに右ねじの法則に沿った磁場を作り出す。
それらが合成されて、下図のような磁場になる。
ただし、実際の磁場は3次元的だが、この図は断面(2次元)の様子を描いたものだ。
コイルの場合には、それぞれの環状電流による磁場が合成されると考えればよい。
そのときに、コイルの軸に垂直な成分の磁場は、隣同士で打ち消し合ってしまう。
[永久磁石]
ところで、永久磁石はどうやって磁力をつくり出しているのだろう?
電流など流れているようには見えないが、、、。
物質の磁性の起源は原子を構成している電子にある。
電子は原子核の周りを運動していると同時に自転(スピン)している。
これが磁気モーメントを生じさせるのだという。
ここで、磁気モーメントとは棒磁石をモデル化したものと考えればよいようだ。
多くの種類の原子ではいろいろな理由で磁気モーメントは打ち消し合ってしまうが、ある種の原子では残ってしまう。
そのような原子では、原子の一つ一つが微小な電磁石になっていると見なすことができる。
ただし、原子が磁気モーメントを持っているだけでは強磁性にならない。
それらが同じ方向に整列して、全体として大きな磁気モーメントを持たなければならないからだ。
[マクスウェル方程式]
電磁気学は、1865年にジェームズ・クラーク・マクスウェルによって、それまでばらばらだった電気や磁気の法則を統合して完成された。
電場や磁場の性質は、以下のたった4本の(ベクトル)方程式にまとめられている。
それぞれの式の意味合いは、概ね以下のようなものだ。
1) 電場の発生源は電荷である。
つまり、電荷のまわりには、他の電荷に影響を与える力の場(電場)が存在する。
2) 磁場の発生源はない。
電荷に対応するような、単極の磁荷は存在しない。
3) 磁場が時間的に変化すると、渦巻き型の電場が発生する。 (ファラデーの電磁誘導の法則)
4) 電流が流れると、そのまわりに渦巻き型の磁場が発生する。 (アンペールの法則)
マクスウェルの方程式に加えて、重要な式がある。
それは、電荷が電場や磁場からどのような力を受けるかを与える式だ。
その力は「ローレンツ力(りょく)」と呼ばれ、言葉で表すと次のようになる。
・電荷は電場に平行に力を受ける。
・動いている電荷は、磁場から仕事をしない方向に力を受ける。
??? 私にとっては、このあたりが第2の関門だ。
導線に流れる電流によって渦巻型の磁場が発生するのは理解できる。
だが、自由空間内を電荷が運動している場合を考えてみよう。
運動している電荷は、磁場を発生させる。
だが、その磁場は電荷に力を及ぼして運動方向を変えようとする。
電荷の運動方向が変わると、磁場の様子が変わる。
磁場の様子が変われば、、、。
で、結局どうなるのだろう?
導線に流れる電流によって渦巻型の磁場が発生するのは理解できる。
だが、自由空間内を電荷が運動している場合を考えてみよう。
運動している電荷は、磁場を発生させる。
だが、その磁場は電荷に力を及ぼして運動方向を変えようとする。
電荷の運動方向が変わると、磁場の様子が変わる。
磁場の様子が変われば、、、。
で、結局どうなるのだろう?
[特殊相対論の立場から見ると]
電荷が電場を作り、電流が磁場を作る。
しかし静止している電荷も、運動している人からみると、運動する電荷=電流に見える。
だから、電荷と電流は本質的に同じであり、従って電場も磁場も本質は同じだということになる。
??? 私にとっては、このあたりが第3の関門だ。
そう言われても、どうも納得がいかない。
そう言われても、どうも納得がいかない。
−−−−− ここまでのまとめ −−−−−
ちょっと自信がないが、磁気とは以下のようなものらしい。
・磁場を作り出す物理的実体としての磁荷は存在しないようだ。
・電気においては、電場を作り出す物理的実体として電荷が存在する。
・磁場は電流(動く電荷)が作り出す。
磁場は電場よりもその変化がとても複雑でダイナミックだ。
・電荷が動き出せば、磁場が発生する。
・その電荷の動きが止まれば、磁場は消滅する。
・電荷の動きが変化すれば、磁場の方向や強さは変化し、向きが逆転することもあり得る。
磁力線は、磁場の様子を視覚的に表現するために考え出されたものだ。
これを使って磁気の振る舞いをイメージするしかないようだ。
でも、磁力線を始点から終点まで詳細に追いかけるといったことはやらないほうがいいだろう。
どうも泥沼に入り込んでしまうような気がする。
参考図書
・「超入門 相対性理論」、福江純、講談社ブルーバックス、2019年
・「驚異の太陽」、鈴木建、日本評論社、2020年
・「超入門 相対性理論」、福江純、講談社ブルーバックス、2019年
・「驚異の太陽」、鈴木建、日本評論社、2020年