2020.08.05 Wednesday
宇宙物理学 太陽の磁場の様子
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少し前に、太陽には双極子磁場があって、活動周期と同じ11年周期で反転するという話をした。
ところが太陽全体を見てみると、極域よりも非常に強い磁場をもった領域があちこちにあるのだ。
そんな太陽の磁場の様子を見てみよう。
太陽の磁場の様子
これはNASAの太陽観測衛星「SDO(Solar Dynamics Observatory)」のウェブサイトからお借りした画像だ。
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画像をクリックすると大きな画像で見れます。
これは、目には見えない太陽磁場の様子をコンピュータモデルによって可視化したものだ。
白線で表示されたものは「磁力線」で、それぞれがN極からS極につながっていて、磁場の向きと強さを示している。
磁力線が密集しているところが磁場の強い領域だ。
画像は極端紫外線で撮影されたものなので、可視光で見る太陽とは全く異なる姿をしている。
太陽面に見られる大きな黒い部分はコロナホールと呼ばれる領域だ。
このように太陽の磁場の様子はとても複雑だ。
まず、中央および右端に磁力線が非常に密な領域がある。
この画像ではよく見えないが、そこには「黒点」がある。
一つの黒点は一方の磁極に対応し、N極とS極のペアで現れることが多い。
ペアとなっている黒点をつなぐ磁力線は、ループの形状で上空のコロナまで達している。
磁場の典型的な強さは3000ガウスほどだ。
ちなみに、地球の磁気(地磁気)の強さは日本付近で0.5ガウス程度である。
黒点が同時に多数現れると、太陽表面はとても複雑な磁場構造を持つことになる。
磁場は太陽光球全面に広がっている。
彩層が明るく見える領域では100ガウスほどの磁場があり、またプロミネンスには10〜200ガウスの磁場がある。
弱い領域でも数ガウス程度はあるそうだ。
黒点などの活動領域の磁力線は太陽表面から出て、上層のコロナでループを描いて、再び太陽表面に戻っていく。
一方、コロナホールの磁力線は太陽表面を出た後、宇宙空間にずっと伸びていって、太陽に戻ってこない。
この磁力線に沿って太陽から噴き出しているガスが太陽風だ。
北極域と南極域には、基本的に地球の場合と同じように、それぞれN極とS極が存在している。
従来は極域付近は一様な弱い磁場(〜10ガウス)で覆われていると考えられていた。
それが太陽観測衛星「ひので」によって、黒点並みの強さの斑点状の磁場が極域全域に存在していることが分かったのだ。
それらは、大きさが小さく、かつ寿命が短く(10時間程度)、形状が不規則だという。
詳細は科学衛星「ひので」のウェブサイトで見て欲しい。 → こちら
極域の磁場は平均すると弱いが、重要な役割を果たしているらしい。
磁場の強さの測定
太陽の磁場の強さは「ゼーマン効果」を使って測定することができる。
これは、原子から放出される電磁波のスペクトル線が磁場によって複数のスペクトル線に分裂する現象だ。
具体的には鉄(Fe)の吸収線などを観測するようだ。
さらに、偏光の様子を調べることで、磁場の向き(ベクトル)を測ることも可能だという。
詳細はNAOJのウェブサイトを見て欲しい。 → こちら