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2020.09.08 Tuesday

宇宙物理学  星の晩年と最後 (1)太陽質量の8倍以下の場合

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    ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****


    星が太り始めてから先の運命は、主に星の質量によって大きく異なってくる。
    まずは太陽の質量の8倍以下の恒星の場合だ。
    以下では太陽を例にして説明する。


    太陽の今後の進化をHR図で示す。
    残念だが英語版しか見つからなかった。
     
         画像はウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)からお借りしました。 → こちら

    なお、年齢や期間や星の大きさなどは、本などによって少し異なっているので、注意されたい。


    今回の主なキーワードは以下の3つだ。
      ・赤色巨星
      ・惑星状星雲
      ・白色矮星



    赤色巨星

    中心核の水素を使い切ってしまうと、星は主系列から外れて次のステップに進む。

    エネルギーを生み出すことができなくなった中心部は、周りの圧力に負けて収縮していく。
    だがこのときに熱が発生し、中心核(コア)を取り巻く水素の外層が熱核融合反応を起こし始める。
    反応が起こる領域が大きいので、大量のエネルギーが発生する。
    そのエネルギーは外に向かって流れ、星は膨張する。
    その結果、星の表面積が増えるので、表面の温度が下がって星の色は赤くなる。
    この状態を「赤色巨星」というが、太陽も約50億年後には赤色巨星となって現在の100倍以上に膨れる。

         画像は AUSTRALIA TELESCOPE NATIONAL FACILITY からお借りしました。 → こちら


    赤色巨星の段階は10億年ほど続く。
    その後、中心核の収縮が進んで温度が3億度程度になると、ヘリウム原子核の核融合反応が起こる。
    すると、太陽はまた収縮して現在の太陽の10倍程度の大きさに戻る。
    これがHR図にある「Horizontal branch」という状態だ。
    この状態は1億年程度続くが、ヘリウムの核融合反応はやがて止まり、中心部に炭素や酸素の原子核がたまってくる。
    ついには中心核周辺のすぐ外側でヘリウムの核融合反応、さらにその外の球殻で水素の核融合反応が起こり、太陽はまた膨張する。
    これがHR図にある「Asymptotic branch」という状態で、今度は現在の太陽の200倍程度にも膨れ上がるかもしれない。

         (注) 各部のスケールは正しくない



    惑星状星雲

    赤色巨星は外層部が不安定で、ときどき周りの空間に大量のガスを放出する。
    そしてついに中心部の燃料が尽きて熱核融合反応が止まると、外層部を吹き飛ばしながら、中心部分が急速に潰れて縮んでいく。
    吹き飛ばされたガスは中心に残った星に照らされて輝き、こと座のリング星雲のような「惑星状星雲」をつくる。
    この惑星状星雲のガスはその後も広がっていき、10万年もたつと星雲としての形を失い、まわりの空間に溶け込んでしまう。
    このように存命期間が短いので、見つかっている惑星状星雲は数千個ほどしかない。

         画像はNASAのウェブサイトからお借りしました。 → こちら


    こと座のリング星雲は地球から約1600光年離れていて、リングの直径は約1光年で、毎秒19kmの速さで広がっている。
    この速度から計算すると、リングをつくっているガスは数千年前に中心にある星から放出されたことがわかる。
    「惑星状星雲」とは何とも紛らわしい名前だ。
    昔、望遠鏡の性能が良くなかったとき、惑星のように見えたのでこの名前が付いているが、惑星とは全く関係ない。



    白色矮星

    外層部が吹き飛ばされることで、太陽は表面温度が10万度程度の高温の中心核がむき出しになる。
    それでも潰れて縮んでいくのが止まらない。
    中心部で熱核融合反応が起こっていた頃は、自分の重力で潰れようとする力を、熱による圧力で跳ね返していた。
    でも今はそんな力は無い。

    でもここで量子力学の不思議な力が現れる。
    それは「電子の縮退圧」と呼ばれるものだ。
    潰れていく中心核では、原子核(陽子など)や電子がぎっしりと詰まった状態になる。
    この電子どうしが触れ合うほどになると、電子どうしが反発する力がどんどん強くなってくるのだ。
    そして中心核の重さを支えられるまでになると、ついに収縮が止まる。
    この圧力は温度には依存しない。
    電子は小さく圧縮された空間を極めて高速に飛び回っていて、光の速さの50%を優に超えることも多いという。

    このような状態のむき出しになった中心核を「白色矮星」という。
    大きさは地球程度で、密度は現在の太陽の数万倍にもなる。
    白色矮星には熱源がないので何十億年という時間をかけて冷えていく。
    やがて黄色矮星となり、赤色矮星となり、完全に冷え切った黒色矮星となって、生涯を終えることになるのだ。


    太陽系から最も近い白色矮星は、太陽からたった8.6光年の距離にある。
    それはシリウスの伴星だ。
    シリウスから10天文単位ほど離れていて、シリウスの周りを約50年かけて回っている。
    地球ほどの大きさで、密度は1立方センチメートル当たり1トンにもなるという。


    これは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が2011年8月1日に公開したファインリング星雲(Fine Ring nebula)だ。
    「白色矮星」が殻状の残骸に囲まれている。

         画像はこちらからお借りしました。 → こちら



    太陽質量の半分以下の恒星の場合

    質量が小さく、太陽質量の半分以下の恒星では、少し異なる部分がある。
    これらの星は表面温度は低く色が赤いので、赤色矮星と呼ばれる。

    水素からヘリウムへの熱核融合を終えると、それ以上の核融合は起こらずに恒星は収縮していく。
    恒星の外層の部分は、収縮で得られるエネルギーをもらって膨らんでいく。
    外層は宇宙空間に流れ出すようだが、惑星状星雲を形成することはないらしい。
    一方で、コアは電子の縮退圧によって止まるまで収縮し、白色矮星になる。



    参考図書
      ・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
      ・「ベテルギウスの超新星爆発」、野本陽代、幻冬舎新書、2011年
      ・「日本人と宇宙」、二間瀬敏史、朝日新書、2013年
      ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年











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