2020.09.09 Wednesday
宇宙物理学 閑話休題 (1) 縮退圧と物理チャレンジ2008
***** 閑話休題 *****
縮退圧を勉強しようとネットで探していたら、面白い記事を見つけた。
2009年に大阪市立科学館の加藤賢一さんが書かれた「恥ずかしながら縮退圧」というものだ。
→ こちら
加藤さんも「フェルミ運動量」に関してネットで調べていて、「物理チャレンジ2008」に出会ったという。
物理チャレンジとは、大学等に入学する前の高校生・中学生を主な対象として、物理の面白さと楽しさを体験してもらうことを目的とする全国規模のコンテストだそうだ。
そして翌年に開催される国際物理オリンピックの日本代表選考も兼ねているらしい。
その2008年の理論問題の第3問が、白色矮星に関連したものだった。
問題文のヒントに素直に従っていけば、予備知識が無くても重要な概念の本質に触れることができるという誠に素晴らしい問題だ、と加藤さんは称賛している。
途中で使っている数学は初歩の微積分だけだ。
問題編 → こちら
回答編 → こちら
私もちょっと覗いてみたが、すぐに「位相空間」なるものが出てきて、たじろいでしまった。
歳をとって確かに頭が固くなっているのは認めるが、それを理由にできるようなレベルではないのだ。
これ本当に高校生や中学生がチェレンジするのだろうか?
凄いとしか言いようがない。
ちょっと(正直に言うと、かなり)ショックを受けた。
「宇宙物理学」をブログで解説しているのが恥ずかしく感じた。
でも、気を取り直して前を向こう。
[縮退と縮退圧]
縮退(正確にはフェルミ縮退)とは、電子などのフェルミ粒子がフェルミ分布に従うために低温で示す振る舞いのことだ。
一方で、白色矮星や中性子星などは熱核融合が起こるほど高温ではないが、それでもかなりの高温だ。
なので、どうして縮退が起きているのか、腑に落ちなかったのだ。
星の中心核は、高温であると同時に密度が非常に高い。
そのために縮退が起きやすいのだそうだ。
白色矮星では電子が、中性子星では中性子が、フェルミ縮退を起こす。
フェルミ縮退すると、温度の割にエネルギーの高い電子(または中性子)が多くなるので、圧力が高くなる。
このようにして生じる圧力を縮退圧という。
通常のプラズマの圧力は密度と温度に依存するが、縮退圧は密度だけに依存し、温度には依存しない。
だから白色矮星が徐々に冷えていっても、縮退圧の大きさは変わらす、潰れることがないのだ。