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2020.09.12 Saturday

宇宙物理学  星の晩年と最後 (2-2) 中性子星

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    ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****

    前回の続きです。


    中性子星

    超新星爆発で星全体が飛び散っても、中心のコアは生き残る。
    それが「中性子星」だ。
    これは一つの巨大な原子核といってもよいような、とても奇妙な星?だ。

    もともとの星が太陽質量の8倍以下の場合には、中心核は白色矮星として残る。
    そこでは「電子の縮退圧」が星が自分の重力で潰れようとするのに対抗している。
    しかし残った中心核の質量が太陽質量の1.44倍を超えると、電子の縮退圧では中心核が重力崩壊することを止められなくなる。
    この質量を「チャンドラセカール限界」と呼ぶ。

    中性子星では、電子の縮退圧ではなく、「中性子の縮退圧」で重力崩壊を免れることができている。

    中性子星は、その質量は太陽質量の1〜2倍程度で、その半径はおよそ10〜15km程度であることが観測からわかっている。
    これは同じ質量のブラックホールの大きさの3倍ほどしかない。
    まさにブラックホールの一歩手前の天体だ。
    そのため、中性子星の密度は原子核と同程度から数倍程度に達し、1cm3当たり10〜30億トンにもなる。
    物質とはいえないブラックホールを除けば、宇宙で最高密度の天体である。
    そのため、表面での重力は地球表面での値の1000億倍以上になるというが、まったく想像もつかない。


    中性子星の中身がどうなっているかはよくわかっていない。
    ”宇宙に浮かぶ巨大原子核”とも言われているが、その内部はわれわれの知る原子核とも異なるようで、謎に包まれた超高密度物質である。
    通常の原子核は質量数の大小を問わずほぼ一定の密度をもつが、中性子星は中心からの距離に応じてさまざまな密度になっているようだ。
    2層のコア、2層の地殻、そして薄い大気があるようだが、、、。

         画像はNASAのNICERのサイトからお借りしました。 → こちら


    超新星爆発を起こした元の星の中心核が角運動量や磁束を保存しつつ収縮すると仮定すると、生まれたての中性子星は(その表面で)1億テスラという超強磁場を持ち、毎秒数百回という高速で自転することになる。
    中性子星の磁場をこのように見積もるのは正確さに欠けるが、概ね正しい値に導くようだ。
      (テスラは 磁場(磁束密度)の国際単位系 (SI) で、 1テスラは1万ガウスに等しい。)
    ちなみに,地球磁場は2万分の1テスラ,実験室で定常的に作れる磁場は最大100テスラ程度である。

    つまり中性子星は、自転速度と磁場強度が半端でない天体なのだ。
    また中性子星の重力によって周囲の物質が引き込まれて高温になることで、強いX線が発生することがある。



    超新星爆発は稀な現象だが、銀河系の中でも数100年に一回程度発生する。
    歴史的に有名な超新星爆発の1つが、1054年に出現したものだ。
    木星ほどの明るさに見えたそうで、その残骸は「かに星雲(M1)」として現在でも見ることができる。
    さらにその星雲の中心にはパルサーと呼ばれる高速回転している中性子星が見つかっている。

    下の写真は、かに星雲の中心にあるパルサーの様子を撮影したものだ。
    X線,赤外線,可視光線の画像を合成してある。(ウェブサイトではそれぞれの画像も見れる。)

         画像は「チャンドラX線観測衛星」のウェブサイトからお借りしました。 → こちら



    電波パルサー

    パルサーは、電磁波(光,電波,X線,ガンマ線など)を周期的に規則正しく放射している天体だ。
    その周期は数ミリ秒から数秒と非常に短く、また電子時計にも匹敵するほどの精度だという。

    1967年に、イギリスのケンブリッジ大学の電波望遠鏡が不思議な電波信号をキャッチした。
    4秒間に約3回やってくるこの信号はとても正確で、その周期に1億分の1秒の狂いもない。
    それから1ヶ月ほどのあいだに、別の場所でも似たような信号がさらに3つ発見さた。
    最初は宇宙人が送ってきた信号なのではと考えて、この宇宙人に「緑の小人たち(Little Green Men)」と名付けたそうだ。
    やがて、この信号を発しているのは天体に違いないということになって、脈動する星という意味で「パルサー」と命名された。


    パルサーの正体は、超新星爆発によって生まれた中性子星から発せられる放射状のビームだ。
    もともとの星が持っていた磁場が爆発後にきわめて小さな領域に閉じ込められるため、中性子星表面の磁場の強さは地球の磁場の1兆倍にもなる。
    その強力な磁場によって、中性子星の表面から電子やイオンがはぎとられ、それらの粒子は光速近くまで加速される。
    特に磁場の北極と南極には電子やイオンが勢いよく落ち込んだり放出させられたりするために、北極や南極から電磁波がビーム上に放射される。
    磁極は天体の自転軸と一致せずにずれていることが普通なので、中性子星が自転すると放射される電磁波のビームは周りの空間を掃くようにくるくると回転する。
    そして、ビームの方向がたまたま地球を照らす場合に地球からは周期的に電磁波のパルスがやってくるように観測される。
    だから「宇宙の灯台」とも呼ばれるパルサーの正体は中性子星だが、中性子星の全てがパルサーというわけではないそうだ。

         画像はJAXAのサイトからお借りしました。 → こちら


    電波パルサーの回転はだんだん遅くなり,その減速の割合から磁場の強さが推定できるという。
    それによると,多くの電波パルサーは,(やはり)1億テスラ程の磁場を持つそうだ。
    また,自転の減速の割合から大まかな年齢を推定することができるという。
    それによると,おおよそ100万年から1000万年ほどで,天文学的に言えば,電波パルサーは若い(死んで間もない)天体ということになる。
    電波パルサーの自転周期がだんだん伸びて10秒近くになると、電磁波が放射できなくなってしまうそうだ。
    これは電波パルサーの死であろう。



    マグネター

    通常の中性子星よりも磁場が数1000倍も強い天体を「マグネター」と呼ぶ。
    宇宙に存在する天体の中で最も強い磁場を持ち、その強さは人類が作り出した最強の磁石をさらに1億倍も上回るという。

    2020年3月12日に、NASAのガンマ線バースト観測衛星がいて座の方向で強いX線のバーストをとらえた。
    さらに地上の電波望遠鏡による追観測で、電波でもX線と同じ周期のパルスを放射していることが明らかになり、この天体がパルサーであることが判明した。
    しかも、これまでに見つかっているマグネターの中で最も年齢が若いことも明らかになった。
    なんと約240年ということだが、残念ながら超新星は記録されていない。

    詳しくはアストロアーツのニュース記事で → こちら



    参考図書
      ・「重力機械」、ケイレブ・シャーフ、(訳)水谷淳、早川書房、2012年
      ・「ブラックホール・膨張宇宙・重力波」、真貝寿明、光文社新書、2015年
      ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
      ・「重力で宇宙を見る」、二間瀬敏史、河出書房新社、2017年
      ・「銀河の中心に潜むもの」、岡朋治、慶応義塾大学出版会、2017年
      ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年











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