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2020.09.21 Monday

宇宙物理学  星間物質

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    ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 星団、星雲、星間物質 *****


    星間空間とは天の川銀河内の星と星の間の空間のことだ。
    銀河と銀河の間の空間とは違う。

    天の川銀河の場合の話になってしまうが、大きさや形態が同じような銀河ならば状況もあまり変わらないだろう。



    星間空間

    太陽から一番近い星までの距離は約4.3光年で、そこから次の星まではさらに何光年も離れている。
    星々で埋め尽くされているように見える宇宙空間だが、想像を絶するほど「すかすか」なのだ。
    その「すかすか」の程度は、太平洋にスイカが3個だけ浮かんでいるほどである。
    だから、星と星がぶつかることもまず起こらない。

    だからと言って、星と星の間に何も無いわけではない。



    星間物質

    天の川銀河の質量は、その9割がダークマター(暗黒物質)で占められている。
    残りの1割にすぎない「通常の物質」は、さらにその9割が恒星として存在しており、残りの1割は恒星間に「星間物質」として存在している。
    星間物質には、水素やヘリウムといった気体の状態である星間ガスや、ケイ素や炭素,鉄,マグネシウムなどによって形成されている個体粒子であるダスト(星間塵)などがある。
    星間ガスと星間塵の質量比はおおむね100:1であり、両者は広域にわたって共存している。
    その平均密度は、銀河系中心部では水素原子が1cm3あたり数個、外縁部で1個ほどである。


    星間ガスの主成分は水素であり、質量比で約70%を占める。
    円盤部に集中して存在し、恒星による円盤よりもさらに薄い円盤状の分布をしているそうだ。
    星間ガスには実に様々な相が存在し、濃淡のコントラストは10桁余りにわたり、温度も6桁もの広範囲にわたる。

    希薄な状態の星間ガスは、一般に温度も高く、ガスは電離したプラズマ状態にある。
    密度が高くなってくると、プラズマ中の正イオンと電子が結合して、電気的に中性な原子となる。
    さらに高密度な領域では、原子どうしが結合して、分子を形成する。
    この状態の星間ガスは、あたかも地球大気中の雲のような形態をとり、「星間分子雲」と呼ばれる。
    星が生まれるような領域では、普通の星間空間より100万倍も密度が高く、絶対温度で10度という極低温である。

    一方で銀河のハロー領域を満たしているのは、温度が100万度にもなる高温で密度が薄いガスである。


    星間塵は、恒星進化の過程で副産物として生成される炭素質やケイ酸塩の微粒子状の物質だ。
    これらの成分は地球上の岩石や小惑星と同じようなもので、実際、太陽系の中の小惑星や我々の地球など岩石型惑星の原料になったと考えられている。
    大きさは1/1000ミクロンという分子レベルのものから1ミクロンほどのものまである。
    星が新星として自分の表面層を吹き飛ばすか、超新星として爆発的に消滅するかして死ぬと、この塵が星間物質の中に撒き散らされる。

    可視光は、塵の微粒子によって吸収・散乱されてしまう。
    波長の短い光、つまり青味がかった光のほうが吸収・散乱されやすいため、塵は赤味がかって見える。
    この効果は「赤化」と呼ばれている。
    塵も特有の光を放つことがある。
    それは、塵が星から放射された紫外線などを吸収して熱くなるからだ。
    その「熱」エネルギーは、赤外線として再放出される。
    数10ミクロンから数100ミクロンの波長の赤外線で見ると、塵が明るく輝いている。

      赤外線天文衛星「あかり」による星間塵輻射の全天マップ
         画像はJAXAのサイトからお借りしました。 → こちら

    これは、赤外線天文衛星「あかり」の観測した全天の遠赤外線画像だ。
    90ミクロンの赤外線を赤で、140ミクロンの赤外線を青で表示した、2色合成画像だ。
    中央に水平に伸びるのが天の川で、銀河系の中心領域を画像の中心にした360°の範囲を示している。
    S字状に薄く見えるのは、太陽系内の塵による光だ。
    黒いスジ状のキズのように見えるのは、観測されなかった残り1%未満の部分だ。
    色の青いほどより温かい星間物質、赤いほどより冷たい星間物質の存在を示している。
    星間物質が温かい領域ほど、そこではより多くの新しい星が生まれつつある。



    分子雲

    星間空間の中でもガスや塵が集まって特に濃い場所がある。
    星間ガスの主成分は水素であり、水素原子として存在するが、特に密度の高い場所ではH2分子の形で存在すようになる。
    そのほかに微量の一酸化炭素,水酸分子,水,二酸化ケイ素などの分子があることから、「分子雲」とも呼ばれる。
    炭素,窒素,酸素,鉄など、現在の地球やそのほかのありとあらゆるものを作っている元素は、もともとこの分子雲に含まれていた。
    水素とヘリウムは宇宙初期に作られたが、それ以外は、遠い昔に周りの空間で爆発した超新星から放出されたものである。

    分子雲は、水素原子が1cm3あたり100個から1000万個と(通常の星間物質に比べて)きわめて高くなっている。
    一方で、分子からの放射によって効率よく冷やされるために、10Kから30kと非常に低温になっている。
    温度が低いために圧力も低く、重力によって収縮することが可能であり、最終的には星へと進化する、いわば「星のゆりかご」が分子雲である。

    天の川銀河の円盤は、「巨大分子雲」と呼ばれる新しい星の形成を行う高密度のガスの大半が貯蔵されている場所だ。
    このガスの名称に「巨大」が含まれているのは、ガス雲が100パーセクに及ぶほど大きく、(潜在的には)数100万個もの新しい星を形成するのに十分な材料を持っているからだ。
    名称に「分子」が含まれているのは、雲の中のガスが主に水素分子から構成されているからだ。


    星間分子雲は新しい星を誕生させる直接の母体として天体物理学の分野で注目されるとともに、「星間化学」という天文学と化学の境界分野を生んだ。
    現在までにおよそ180種の星間分子が、主に電波による観測で発見されている。
    星間空間を漂うガスの主な成分は水素分子であるが、最大13元素までの多種多様な分子が含まれている。
    なかでも有機分子は検出された分子種の3/4を占める。

    星間空間は周囲にある星々からの光(星間紫外線)で満ちている。
    星間分子雲の密度が低いうちは、分子が生成したとしても星間紫外線ですぐに壊されてしまう。
    そのため、大きな分子が成長することはほとんどないと言ってよい。
    一方で、密度が上がって1cm3あたり数千から数百万個になると、星間分子雲の中には星間紫外線が届かなくなる。
    その結果、分子は壊されることなく化学反応で成長し、数10万年から数100万年をかけて、様々な分子が作られる。

      天の川全体の暗黒星雲の分布
         画像は、理科年表オフィシャルサイトからお借りしました。 → こちら



    宇宙線

    宇宙空間における最も過激な存在が、宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子である。
    天の川銀河内では、ほぼ光速の宇宙線陽子が、だいたい一辺10mの箱に1個ほどの数で飛び交っている。
    この宇宙線の粒子エネルギーは恐ろしく高いところまで達していて、観測されている最高エネルギーはたったひとつの粒子で1020電子ボルトに及ぶ。
    こうした粒子は、爆発で飛び散った物質が音速をはるかに超える猛スピードで周囲の物質に衝突する際に生じる「衝撃波」において生成されると考えられている。
    ざっと10万GeV(1014電子ボルト)ぐらいまでの比較的低エネルギーの宇宙線は、超新星爆発の後に残された超新星残骸で作られていると考えられている。
    爆発で飛び散った物質が周囲の星間物質とぶつかって衝撃波を作るのである。
    それより高いエネルギーの宇宙線の起源は未だに宇宙物理学上の大きな謎として残されている。



    参考図書
      ・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
      ・「銀河 宇宙140憶光年のかなた」、ジェームズ・ギーチ、(訳)糸川洋、筑摩書房、2014年
      ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
      ・「銀河の中心に潜むもの」、岡朋治、慶応義塾大学出版会、2017年
      ・「宇宙の果てになにがあるのか」、戸谷友則、講談社ブルーバックス、2018年











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