2020.10.08 Thursday
宇宙物理学 閑話休題 (4) 私たちの銀河の名前
***** 閑話休題 *****
Copyright: ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO
画像はGAIAのサイトからお借りしました。 → こちら
正式名称は「銀河系」、でも「天の川銀河」とも呼ばれている
天文学では、私たちの銀河は「銀河系」と呼ぶのが正式だそうだ。
私たちの太陽系があるこの銀河を「銀河系」と呼び、その外にある星の集団を「銀河」と呼ぶのだ。
英語でいえば「galaxy」は銀河で、銀河系は「The Galaxy」と定冠詞がついてGが大文字になる。
「our Galaxy」という言い方もする。
いずれにしても紛らわしい。
最近は「天の川銀河」と呼ばれることが多い。
でもいつ頃からそう呼ばれるようになったのだろう?
そもそも銀河とは、天の川を指す言葉だったようだ。
中国では天の川を銀漢(漢は中国の大河「漢水」を指す)と呼び、それから銀河の呼称が生まれたと言われている。
アンドロメダ銀河をはじめとする渦巻銀河の正体が分かったのは、1924年のことである。
もちろん、その頃はまだアンドロメダ銀河とか渦巻銀河とは呼ばれていない。
エドウィン・ハッブルが、アンドロメダ銀河までの距離を測定することに成功したのである。
ウイルソン山天文台の口径2.5メートルの反射望遠鏡で、アンドロメダ銀河の個々の星がやっと分解できるようになったためだ。
これによって、渦巻銀河は「銀河系」の外にあることが分かった。
だが、アンドロメダ銀河は例外で、その他のものも星の大集団だとすぐに分かったわけではない。
それまでの望遠鏡では、個々の星まで分解できず、雲のように見えていたことから、それらは「星雲」と呼ばれていた。
そのため、渦巻銀河は「銀河系外星雲」という呼び名が付けられた。
私は1954年生まれだが、学生の頃はまだ、M31は「アンドロメダ大星雲」と呼んでいた記憶がある。
その後、銀河系の中にある星雲の研究が進み、やがて銀河系外の天体には「銀河」の呼称が使われるようになる。
これは21世紀になる少し前の頃だと思う。
この頃から「アンドロメダ大星雲」は「アンドロメダ銀河」と呼ぶようになったのだろう。
そして、「銀河系」を「天の川銀河(Milky Way Galaxy)」とも呼ぶようになったのだろう。
でも何故、別の名前も付いたのだろう?
まあ、「天の川銀河」のほうが可愛い呼び名ではあるが、、、。
学術用語集
ところで「学術用語集」というものがあるのをご存じだろうか?
これは、文部省(現:文部科学省)の主導により編纂された、日本語の学術用語と英語を関連づけるための辞書的冊子だ。
その「天文学編(増訂版)」が1994年に発行されているのだが、どうもその中で「天の川銀河」と「銀河系」という呼び名が記載されているようなのだ。
国立情報学研究所のオンライン学術用語集サイト(Sciterm)を見つけたのだが、2016年3月末でサービスを終了し、J-GLOBALの「科学技術用語情報」の中に統合されたという。
でもそこにアクセスはできたが、欲しい情報を見つけることができなかった。
いつ頃から「天の川銀河」と呼ばれるようになったのかは、いろいろ調べてみたのだが分からなかった。
われわれの銀河に名前をつけよう!
「われわれの銀河に名前をつけよう!」という面白い題目の記事が「科学朝日」1994年9月号に掲載された。
記事を書いたのは高橋真理子さんだ。
われわれの銀河系には名前が無い。
ということは、「天の川銀河」という名前が付いたのは1994年以降かもしれない。
一応、全宇宙にたった1つのわが銀河系には「系」の字がつき、その他ゴマンと存在する銀河には系はつけない、という決まりはある。
何かいい名前はつけられないだろうか。
そんな問いかけを天文関係者にしてみたら、ユニークな名前の数々が集まったそうだ。
主な方のお名前(肩書きは1994年当時)と提案されたものを1つだけ紹介する。
・宇宙科学研究所の的川泰宣さん → 金河
・柳家小ゑんさん
・国立天文台の家正則さん
・宇宙科学研究所の平林久さん
・西はりま天文台の黒田武彦さん
・島根大学の富野暉一郎さん
・大阪大学の池内了さん
・東京学芸大学の鈴木敬信さん
全文をここに記載できないのが残念だ。
ネットで探したのだが見つからなかったので、興味のある方は参考図書を見て欲しい。
参考図書
・「村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?」、村山斉、高橋真理子、朝日新書、2013年
・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年
・「村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?」、村山斉、高橋真理子、朝日新書、2013年
・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年