2020.10.10 Saturday
宇宙物理学 局部銀河群
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局部銀河群
天の川銀河のまわりには、マゼラン雲やアンドロメダ銀河のほかに多数の矮小銀河が立体的に分布している。
そうした銀河は50個以上あり、それらが分布している領域の大きさは差し渡し1000万光年ほどだ。
だがまだ無数の未発見の矮小銀河が存在していて、その数は10,000に達するとも言われている。
これらの銀河をまとめて「局部銀河群(The Local Group)」と呼ぶ。
(これは一般名詞ではなくて固有名詞だ。)
この用語は、エドウィン・ハッブルが著書(1936年)の中で提唱したものだ。
※書籍によっては「局所銀河群」と書かれているものもある。
画像はWikipediaからお借りしました。 → こちら
主な銀河を明るさの順に列挙する。
・アンドロメダ銀河(M31)
・天の川銀河
・さんかく座銀河(M33)
・大マゼラン雲(LMC) ※天の川銀河の伴銀河
・小マゼラン雲(SMC) ※天の川銀河の伴銀河
・アンドロメダ銀河の伴銀河(M32)
・アンドロメダ銀河の伴銀河(M110)
・いて座の不規則銀河(NGC6822) ※ バーナードの銀河
・アンドロメダ銀河の伴銀河(NGC185)
・くじら座の不規則矮小銀河(IC1613)
・アンドロメダ銀河の伴銀河(NGC147)
幾つかの銀河に関して、大きさの比率を大まかに調整して並べてみた。
一般に、銀河の数が50個程度かそれ以下の銀河の集まりを「銀河群」と呼ぶ。
銀河群は銀河の集まりとしては最小の単位であり、それより大きい銀河の集団は「銀河団」と呼ばれる。
私たちの局部銀河群は、おとめ座銀河団の周辺に散らばる多数の銀河群の一つにすぎない。
宇宙は膨張して空間が広がっているので、遠くの銀河どうしの間隔は広がっていく。
しかし、銀河群や銀河団の中の銀河どうしの距離はほぼ一定のままだ。
これはお互いの重力で引き付け合って、銀河団という一定の形の集団を形成しているからだ。
このようにお互いの重力の影響が大きい場合は、空間が広がってもその影響を受けることはない。
ただし、遠い将来において膨張速度がものすごく大きくなった場合には、その限りではないが、、、。
マゼラン雲
ほとんど天の川銀河に寄り添うように、「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」という小さめの銀河がある。
これらは天の川銀河の伴銀河で、南半球では肉眼でも見ることができる。
伴銀河とは、大きい銀河のそばにあって、その重力の影響を受けている小さな銀河のことだ。
これらは、お互いの周りを10億年程度で回っている連銀河だ。
そして天の川銀河の周りを20億年程度で回っている。
しかし、最近の観測では天の川銀河から遠ざかっていく可能性もあるらしい。
かつては不規則銀河に分類されていたが、今では渦巻き構造を持つことがわかっている。
ただし、星生成活動によるまだら模様のため、見ただけではそれはほとんどわからない。
約2億年前には、大小マゼラン雲の距離は約2000光年まで接近し、ほぼ衝突状態にあった。
大マゼラン雲に見られる規模の大きな若い星団は、このときの圧縮されたガスから生まれたと考えられている。
そして、「マゼラン雲流(マゼラン・ストリーム)」と呼ばれる、南半球の夜空を横断するような長大なストリーム構造が見つかっている。
これは大小マゼラン雲に含まれていた水素原子ガスが天の川銀河の潮汐力によって引き出されたものだと考えられていた時期があった。
しかし、実際には、小マゼラン雲の水素原子ガスが大マゼラン雲の潮汐力によって引き出されている。
このマゼラン雲流は天の川銀河を半周するぐらいの距離に及んでいるように見える。
しかし、これはごく一部で、長さはざっと100万光年もあることがわかっている。
別の記事でも説明している。 → こちら
天の川とマックノート彗星とマゼラン星雲 画像はAPODからお借りしました。 → こちら
アンドロメダ銀河
アンドロメダ銀河は天の川銀河と同じように大きな渦巻銀河だが、棒状構造はない。
そして円盤部の直径は、天の川銀河の約2倍の、20万光年以上あるとも言われている。
言って見れば、私たちの銀河の兄貴みたいなものだろうか?
でも意外と違いがあるようだ。
バルジがとても大きく、半径約2万光年以内の円盤部には星間ガスがほとんど無く、星がほとんど生まれていない。
また中心核は2つに分離して見える。
一方は古くて赤い星々が存在している。
他方は大質量ブラックホールを含むと考えられているが、なぜか青い星々が周りにある。
この星団の色から推定される年齢は1億歳から2億歳程度である。
これは、アンドロメダ銀河がかなり大きな銀河を飲み込んで現在の大きさに成長したことを示す証拠だ。
中心には2つの巨大ブラックホールが存在し、連星系となっていると思われる。
アンドロメダ銀河の伴銀河(M32,M110)は、ともに楕円銀河でガスをほとんど含まない。
天の川銀河の伴銀河である大小マゼラン星雲には豊富にガスが含まれているのとは対照的だ。
どうも、天の川銀河とアンドロメダ銀河はその生い立ちがかなり違うようだ。
アンドロメダ銀河は多数の矮小銀河が合体してできたように思われる。
しかし、こんなに近くにいるのに、そんなに違いが生じるとはちょっと驚きだ。
数十億年後には、、、
天の川銀河とアンドロメダ銀河はお互いに近づいていて、数十億年後には衝突・合体すると考えられている。
銀河内では星々はかなり離れているので、2つの銀河が正面衝突しても、星と星とが衝突する機会はほとんどない。
重力によって星の軌道が変えられるために、銀河の形は大きく歪むが、星だけに関して言えば2つの銀河は互いにすり抜けるだけだ。
しかし、星間空間にある巨大なガスとダストの雲は衝突する。
衝突によってこれらの雲は圧縮され、重力によって形が歪み、多くのスターバースト銀河で見られるような星形成の波を引き起こす。
通過するときには、お互いの銀河からガスとダストが引き出される。
そして、すり抜けた銀河は重力で再び引き戻される。
天の川銀河はアンドロメダ銀河と40億年後に最初の衝突を経験する。
その際、M33銀河もこの衝突に巻き込まれる。
最初の衝突で一挙に1つの銀河になるわけではない。
いったん、お互いにすり抜けてしまうが、強い重力のおかげで再び衝突する。
もう1回すり抜けるが、3回目の衝突で2つの銀河は1つの巨大な銀河に姿を変えていく。
これらの衝突の過程で、2つの銀河の円盤は壊れ、球のような形をした銀河になる。
ハッブルの銀河分類でいうと楕円銀河だ。
70億年後には、合体の痕跡もあらかた消えてしまう。
そのため、夜空を眺めると、ただぼうっと星々が輝いて見えるだけになってしまう。
70億年後には太陽はすでに死んでいるが、仮にあったとすれば合体した銀河のどの辺りにいることになるのだろう。
位置がどのように変化していくかを調べると、巨大な銀河の端の方にいることがわかったそうだ。
下の画像はNASAの天文学者がシミュレーションした様子だ。
画像はハッブルサイトからお借りしました。 → こちら
(1) : 現在で 天の川が見えており、アンドロメダ銀河も小さく見えている
(2) : 20億年後 アンドロメダ銀河が大きく見えている
(3) : 37.5億年後 アンドロメダ銀河が視野を埋めて、天の川が潮汐力により歪みはじている
(4) : 38.5億年後 最初の接近時に星生成が活発になって夜空が輝く
(5) : 39億年後 新しい星々の光を浴びた星雲が赤く輝く
(6) : 40億年後 最初の接近後の様子で両者は大きく歪んでいる
(7) : 51億年後 第2の接近時の様子で、2つの銀河核が輝いている
(8) : 70億年後 巨大楕円銀河が出来上がり、新しい星はもう作られない
参考図書
・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
・「ブラックホールに近づいたらどうなるか?」、二間瀬敏史、さくら舎、2014年
・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年
・「図解 宇宙のかたち 大規模構造を読む」、松原隆彦、光文社新書、2018年
・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年
・「アンドロメダ銀河のうずまき」、谷口義明、丸善出版、2019年
・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
・「ブラックホールに近づいたらどうなるか?」、二間瀬敏史、さくら舎、2014年
・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年
・「図解 宇宙のかたち 大規模構造を読む」、松原隆彦、光文社新書、2018年
・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年
・「アンドロメダ銀河のうずまき」、谷口義明、丸善出版、2019年