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2020.10.11 Sunday

宇宙物理学  アンドロメダ銀河は渦巻銀河か?

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    ***** 宇宙の構造 (3) 天の川銀河とその仲間 > 局部銀河群 *****


    谷口義明さんが書かれた「アンドロメダ銀河のうずまき」は、とても面白い本だ。
    ぜひ読んで欲しい。
    ここで、その一部を紹介する。



    アンドロメダ銀河は本当に渦巻銀河なのだろうか?

    谷口義明さんは次のような疑問を投げかけている。
       アンドロメダ銀河は本当に渦巻銀河なのだろうか?
       星々がつくる円盤状の構造はあるが、本当に渦があるのだろうか?
       渦なのか環のような構造なのか、いまひとつ判然としない。

    たしかに、アンドロメダ銀河の写真を見ても渦巻がよく分からない。
    斜めから見ているせいだと思っていたが、どうもそれだけじゃないようだ。


    紫外線と中間赤外線(24um)では、リングのような構造が見える。

         紫外線(2色合成 遠紫外線は青、近紫外線はオレンジ)
         画像はGALEXのサイトからお借りしました。 → こちら

         中間赤外線(波長24um)
         画像は NASA JPL のサイトからお借りしました。 → こちら

    中間赤外線では、主にダストの熱放射が見えている。
    ここには示さないが、中性水素原子ガスや水素分子ガスも似たような分布をしている。
    ということは、アンドロメダ銀河では、星が生まれやすい冷たいガス雲がリング状に分布していることになる。
    この領域では星が誕生して紫外線を出しているので、紫外線でもリング状に見えていたのだ。

    どうやら、アンドロメダ銀河はリング銀河である、と言ってもよさそうだ。
    しかし、他のリング銀河のように、きれいに円盤の中身が抜けているわけではない。
    円盤部にもまだたくさん星々が見えるからだ。

    リング銀河とは耳慣れない言葉だが、他にも見つかっている。
    ただし、渦巻銀河や楕円銀河のようにたくさんあるわけではない。
    頻度としては、近傍の宇宙にある数千個の銀河を調べて、ようやく数個見つかる程度だ。
    リング銀河も含めて、何か特異な形をしている銀河をまとめて「特異銀河」と呼んでいる。


    では、リング銀河はどうやってできるのだろう?
    どうも、円盤銀河に対して、その回転軸方向から別の銀河が衝突するとリングができるらしい。



    アンドロメダ・ストリーム(アンドロメダの涙)

    アンドロメダ銀河の周りの淡い構造を調べてみると、南東側に淡く吹き出たような構造が見つかった。
    この吹き出た構造は「アンドロメダ・ストリーム」(アンドロメダの涙)と呼ばれている。
    これは約10億年前に小さな銀河が衝突した痕跡のようだ。
    その銀河の推定される質量は、小マゼラン雲程度だという。

    下の画像で、左下方向に伸びているオレンジ色のものがそれだ。
    なお、左下隅の明るい天体はさんかく座銀河M33だ。

         画像は CANADA-FRANCE-HAWAI TELESCOPE のサイトからお借りしました。 → こちら


    その後も、異なる衛星銀河の合体の名残りと思われるストリーム構造が見つかっている。



    M32との遭遇

    アンドロメダ銀河をリング銀河にしたのは、M32かもしれないそうだ。

    以下のようなシナリオが考えられている。
    M32は、かつてはかなり大きな円盤銀河だった。
    約20億年前に合体軌道に入り、
    アンドロメダ銀河の潮汐力の効果で円盤にあった星々が剥ぎ取られていく。
    軽くなった銀河がアンドロメダ銀河の円盤に衝突する。
    何度かアンドロメダ銀河の円盤を通過し、さらに質量が軽くなって、現在の位置に来る。

    現在のM32の中心部にある大質量ブラックホールはかなり大きい。
    だから、元々はかなり大きな円盤銀河であったという考えは理にかなっている。



    M33との遭遇

    PAndAS(パンダス)計画というのがある。
    カナダのヘルツバーグ研究所のグループが立ち上げたプロジェクトだ。
    アンドロメダ銀河とさんかく座のM33との関係を調べている。

    両者には数十億年に及ぶ遭遇の歴史があるという。
    26億年前、M33はアンドロメダ銀河に最接近した。
    その距離は約160万光年。
    正面衝突ではなく、そばを通り過ぎただけである。
    9億年前には最も遠ざかり、700万光年ぐらい離れた場所まで移動する。
    その後、互いの重力で、また近づき始める。

         画像はCFHTのサイトの資料からお借りしました。 → こちら



    ハロー

    HST(ハッブル宇宙望遠鏡)で、背後にあるクェーサーのスペクトル観測を行った。
    クェーサーがアンドロメダ銀河のハローを通過して観測される場合は、ハローにあるガスによる吸収が見えるのだ。
    その結果、半径100万光年という、アンドロメダ銀河本体の10倍以上も大きなハローが存在することが分かった。
    念のために言っておくが、これはダークマターハローではない。

         画像はハッブルサイトからお借りしました。 → こちら



    参考図書
      ・「アンドロメダ銀河のうずまき」、谷口義明、丸善出版、2019年
      ・「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」、谷口義明、光文社新書、2019年











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