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2020.10.15 Thursday

宇宙物理学  量子論 古典物理君と量子物理君の会話

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    ***** 基礎物理学 > 量子論 *****


    量子の世界では、さまざまな事が入り混じって、複雑な様相を見せつける。
    だから、まずはそれらを解きほぐして整理したい。
    でも、うまくできるかどうか、自信はほとんど無いが、、、。


    真ん中に少し低い仕切り板が配置された小さな箱を用意する。
    箱の中に電子を1個入れ、ふたを閉めてシャッフルする。
    仕切り板はあまり高くないので、シャッフルしている間に電子は自由に飛び越えられるとする。


    ここで2人を紹介しよう。
    古典物理君と量子物理君だ。
    まあ名前から特徴がわかるだろう。


    シャッフルしてから十分に時間が経った。
    電子の状態がどうなっているかを探りながら、2人の言うことを比べていこう。



    電子は仕切り板の左右どちら側にいるだろうか?

    これに対しては、古典物理君と量子物理君は同じことを言う。
    ふたを開けて覗いてみなければ分からない。

    ただし量子物理君は、
    可能性は非常に小さいが、電子が箱の壁を通り抜けて外へ出ているかもしれない。
    という。
    これは「トンネル効果」という現象だ。



    ふたを開ける前はどうだったのだろう?

    では電子が右側にいるのが見えたとして、ふたを開ける前はどうだったのだろう?

    古典物理君は、このように言う。
    そんな当たり前のことは聞くなよ。
    ふたを開けて覗いてみたら右側にあったのだから、その前から右側にあったに決まっているだろ。


    でも量子物理君は次のように言う。
    ふたを開けて中を覗いてみる前は、電子の状態は決まっていない。
    右側にいる状態と左側にいる状態が同時に存在していた。
    これは「状態の重ね合わせ」と呼ばれ、「あらゆる可能性が同時に存在できる」という量子の特性によるものだ。
    このすべての可能性が混じり合っている状態が「波」なのだ。
    けっして「本当は決まっているのだが、覗いてみるまでわからなかった」のではない。


    量子物理君が言った重要なキーワードが2つある。
       ・波
       ・状態の重ね合わせ



    では電子の位置と運動量を正確に測ってみよう

    電子はとても小さくて軽いので、位置と運動量の測定は非常に難しいだろう。
    でも不可能ではない。
    そして位置と運動量に関して測定値が得られたとしよう。

    古典物理君は、このように言う。
    測定にはどうしても誤差が含まれてしまう。
    でもこれは測定技術が向上すれば改善されていくよ。
    また今回は位置を先に測定したが、運動量を先に測定しても、同じ結果が得られるはずだ。


    だが、量子物理君は次のように言う。
    測定に関して、量子には特殊な問題がある。
    位置と運動量のどちらかだけなら正確に調べることができるのだが、両方を同時に正確に調べることはできない。
    位置の測定精度を上げようとすると、運動量の測定精度が下がってしまう。
    逆もまたしかりだ。
    またこれによって、どちらを先に測定するかで、結果が違ってくる。


    古典物理君が、こんなことを言い出した。
    同じ実験を何回も繰り返して測定すれば、知りたい値が追い込めるんじゃないの?
    それは実験や測定の常套手段だ。

    だが、量子物理君は次のように言う。
    位置や運動量は、測定する前からある値に決まっていたと考えているのかい?
    身のまわりの物は確かにそうだ。
    でも量子は違うよ。
    測定する前から、位置と運動量はある値に決まっていたわけではないよ。
    これは量子が持っている本質的な特性で、「不確定性原理」と呼んでいる。
    けっして「測定できないだけで、本当は決まっている」のではない。

    量子物理君が言った重要なキーワードが1つある。
       ・不確定性原理



    ふたを開けて中を覗いてみると、何が起こるの?

    古典物理君がこんなことを言い出した。
    量子物理君はさっき、「ふたを開けて中を覗いてみる前は、電子の状態は決まっていない」って言ったよね。
    では、覗いてみたことで何が起きたの?

    量子物理君は、ちょっと自信なさそうに言う。
    覗いてみる前は、電子は波の状態になっていた。
    でも覗いてみたことで、波が消失し、重ね合わさっていた複数の状態のうち、ひとつの状態だけが現れたのだ。
    どうやってひとつの状態だけが選ばれるのかは、誰にもわからない。
    だから、どれが現実として現れるかを予測することも不可能だ。
    ただし量子力学は、どの状態がどの程度の確率で現れるかを正確に予測することはできる。
    その予測能力は完璧なので、物理学者は絶対の信頼を置いている。

    量子物理君が言った重要なキーワードが2つある。
       ・波の消失
       ・確率



    私が思うには その1

    量子物理君が自信をもって言えないのは、もちろん私が理解できていないからだ。
    でも、「もしかしたらこういうことかな?」とおぼろげに感じていることがある。


    波が消失したのは、ふたを開けて中を観測したからだ。
    このように書くと、とても不思議な描像になる。
    でも決して、目には見えない天使のような存在が何かをしたわけではない。

    電子を観測するためには、例えば以下のようなことが必要だ。
       ・エネルギーが高い(波長が短い)電磁波を当てる。
       ・電子によって散乱された電磁波を捉えて、電子の情報を得る。
    このうち前者のステップによって、電子は波の性質が消えてしまうのだ。
    後者のステップはそれには関係ないので、観測者が人間でなくても同じ結果になる。

    波の性質が消えた電子は、粒子として現われる。
    そして電磁波を当てることを止めると、やがてまた波になっていく。

    波の性質が消えることは、空気の分子(酸素や窒素)がぶつかることでも引き起こされる。
    温度に対応した黒体放射には、エネルギーが高い電磁波がわずかながら存在することも忘れてはいけない。
    さらに確率は低いが空から降ってくる宇宙線なども要注意だ。

    だから実際には、これらの実験は真空で極低温の環境で行わないと駄目だろう。
    そうでないと、量子の本来の振る舞いを知ることができなくなる。

    つまり、波の消失を引き起こす観測という行為は、何も特別なことではないのだ。

    ここでは重要なキーワードが1つある。
       ・観測




    私が思うには その2

    ところで、観測前に「存在する」とされる波は、誰にも見ることができないものだ。
    そして観測したら波ではなくなるという。
    この描像は実体なのだろうか?
    それとも数学上のバーチャルな世界像なのだろうか?

    私は後者だと思っているが、物理学者はどう思っているのだろう?
    かなり哲学っぽい領域なので、「アンタッチャブル」な領域と捉えている人が多いようだ。
    量子力学の予測能力は完璧なので、それで良いじゃないかというスタンスらしい。


    ちなみに物理学では波が消失するとはいわずに、波が一点に収縮すると言っている。
    波が収縮するという仮定は、量子力学によって予測される確率と、実験で得られた結果とを強く結びつける。
    しかしこの仮定はいくつもの問題を抱えているように思える。

    ここでは重要なキーワードが1つある。
       ・波の収縮



    出てきた重要なキーワードをまとめておこう。
       ・波
       ・状態の重ね合わせ
       ・不確定性原理
       ・観測
       ・波の消失(波の収縮)
       ・確率



    参考図書
      ・「宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体」、ブライアン・グリーン、(訳)青木薫、草思社、2004年
      ・「量子力学はミステリー」、山田克哉、PHPサイエンス・ワールド新書、2010年
      ・「宇宙はどうして始まったのか」、松原隆彦、光文社新書、2015年
      ・「目に見える世界は幻想か?」、松原隆彦、光文社新書、2017年
      ・「量子とはなんだろう」、松浦壮、講談社ブルーバックス、2020年











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