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2020.08.28 Friday

宇宙物理学  電磁波のスペクトルと放射過程

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    ***** 基礎物理学 > 電磁波 *****


    全ての天体は、強弱はさておき、可視光のみならず、あらゆる波長帯で電磁波を放射している。
    またさまざまな放射過程で電磁波を放射している。

    しかし教科書には、物質の放射過程を理解するには、熱力学、統計力学、原子物理学、量子力学、などの知識が必要になると書いてある。
    でもそれらは横に置いといて、まずはアバウトに説明しようとしたら、自分でもよく理解していないことに改めて気づいてしまった。

    なお物理学者は、可視光によらず電磁波を一般に「光」と呼ぶようだ。



    電磁波の波長と呼び名

    電磁波はその波長に応じていろいろな名前で呼ばれている。

    ガンマ線 : <10pm
    X線 : 10pm〜10nm
    紫外線 : 10nm〜400nm
    可視光 : 400nm〜700nm
    赤外線 : 700nm〜1mm
    マイクロ波 : 1mm〜1m程度
    電波 : 1m〜100km程度

      pm=10-12m、 nm=10-9m、 um=10-6

    参考までに
      ウィルスの大きさは、数10nm〜数100nm
      原子の大きさは、だいたい 0.1nm(100pm)


    宇宙を地上(すなわち大気の底)から観測する場合、大気を通過してくる電磁波しか観測できないという大きな制約がある。
    実は地球大気は特定の波長の電磁波しか通さないのだ。
    主に可視光から近赤外線、および波長の短い電波しか透過できず、その領域を「大気の窓」と呼ぶことがある。
     
         画像はWikipediaからお借りしました。 → こちら

    電磁波のエネルギーは波長に反比例する。
    だから可視光より波長が短い電磁波(紫外線、X線、ガンマ線)はエネルギーが高く、生命にとって非常に危険だ。
    しかし大気がブロックしてくれて、それらが地表まで届くことはとんど無い。



    電磁波のスペクトルと放射過程

    光を波長毎に分けることを「分光」といい、光の波長成分(明るさの波長依存性)をスペクトルと呼ぶ。
     
         画像は KONICA MINOLTA のウェブサイトからお借りしました。 → こちら

    たとえば太陽の光をプリズムに通すと、赤,橙,黄,緑,青,藍,紫の順に並んだ虹のような色の帯ができる。
    このように連続的な波長成分を持つものを連続スペクトルという。

    一方で、赤い散光星雲ではある波長の光だけが非常に強い。
    このようなものを線スペクトルという。

    なぜこのような違いが生じるかというと、光の放射過程が異なるからなのだ。



    連続光 その1

    物体やガスなどは、その温度に応じた電磁波を放出している。
    これは熱放射(黒体放射)と呼ばれ、連続スペクトルをもつ。
    細かいことを言うと、熱平衡状態にあるとき、という条件が課されるのだが、、、。

    例えば、太陽の表面温度は約6000Kなので、その温度に見合った熱放射を出していて、放射のピークは可視光になる。
    温度が低くなれば放射のピークは波長の長い電磁波(赤外線や電波など)になり、逆に温度が高くなれば波長の短い電磁波(紫外線やX線など)になる。
    放射のピーク波長は温度に反比例し、放射の全エネルギーは温度の4乗に比例するので、連続光のスペクトルから温度を推定することができる。

    下図では縦軸横軸共に対数でプロットしていることに注意して欲しい。
     
         画像はジャパンセンサー(株)のウェブサイトからお借りしました。 → こちら



    連続光 その2

    宇宙では想像もできないくらいに高温あるいは高エネルギーの状態にあるガスがあり、それらは光速度に近い速度で運動している。
    ガスは電離しているので、磁場があると磁力線の周りを回りながら運動する。
    このような状態にある電子は、シンクロトロン放射と呼ばれる電磁波を放射する。
    超新星爆発やブラックホールのジェットなどで観測される。
    スペクトル的には連続光だが、非熱(的)放射なのでスペクトルの形が熱放射とは異なる。
     



    輝線

    輝線は、原子やイオン(電離した原子)や分子と電子が絡んだ現象である。
    原子やイオン内の電子は、取りうるエネルギーが飛び飛びの値しか許されない。
    この飛び飛びの値に対応した状態を、エネルギー順位と呼ぶ。
    外からエネルギーをもらうと、電子はエネルギーの高い順位に遷移する。
    場合によっては、原子から飛び出して自由電子になることもある。
    外からのエネルギーは、電磁波の照射や電子など粒子の衝突などで得ることができる。
    しかしエネルギーの低い順位の方が安定なので、やがてそちらの状態に遷移する。
    このときにエネルギーの差に対応した光を放射する。
    これが「輝線」だ。
    輝線の波長は原子やイオンに特有の値になるため、波長を調べることで原子やイオンの種類を特定することができる。
     
         画像はウシオ電機のウェブサイトからお借りしました。 → こちら

    水素原子では、エネルギーの高い順位から最も低いエネルギー順位(基底状態)に遷移する時に放射する輝線をライマン系列と呼び、2番目に低いエネルギー順位に遷移する時に放射する輝線をバルマー系列と呼ぶ。
    赤い散光星雲などで見られる波長が656.3nmの輝線は、バルマー系列で3番目に低いエネルギー順位から最も低いエネルギー順位(基底状態)に遷移するときの輝線だ。


    またこんな輝線もある。
    中性水素原子の陽子と電子のスピンの向きは原子の状態によって変化する。
    エネルギーが低くて安定した状態の水素原子は、陽子と電子がそれぞれ反対向きにスピンしている。
    しかしエネルギーが高い状態では、その回転が同じ方向に揃う。
    この状態は不安定なので安定した状態に戻ろうとするが、すぐに戻れるわけではない。
    同じ向きに揃った陽子と電子のスピンが逆方向になるまでには、1000万年もかかるそうだ。
    とはいえ宇宙には膨大な数の水素原子があるので、常にどこかで不安定な水素原子が安定した状態に戻っている。
    このときに波長21センチメートルの電波が放出される。



    吸収線(暗線)

    連続スペクトルにところどころ黒い線が見られることがある。
    これは上記の原子やイオンや分子に、背後から連続光が照射されると、特定の波長の光だけが吸収されるためだ。
    それは輝線となりうる波長そのもので、黒い線は「吸収線」あるいは「暗線」と呼ばれる。

    歴史的には太陽光で見つかり「フラウンホーファー線」と名付けられた。
    この暗線は、太陽の光球面で放射された連続光が、太陽大気の原子やイオンに吸収されるために生じる。
    また地球の大気に吸収されるために生じるものもある。


     
    参考図書
      ・「宇宙の誕生と進化」、谷口義明 他、NHK出版、2018年
      ・「天の川が消える日」、谷口義明、日本評論社、2018年


     








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