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2020.09.16 Wednesday

宇宙物理学  星の晩年と最後 (4) 近接連星系の場合

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    ***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****

    私たちの太陽は単独でいるが、このように単独でいる星は全体の1/3くらいしかないそうだ。
    連星の中でも、互いの星が接触するくらい近くを回っているようなものを「近接連星」と呼ぶ。

    一方が赤色巨星で他方が白色矮星になったら何が起きるだろう?



    近接連星

    白色矮星の強い潮汐作用によってペアの星から水素ガスが流れ出し、大量に降り注がれることはそれほど珍しいことではないようだ。
    下の絵は想像図で、左側の赤色巨星から右側の白色矮星へとガスが流れ込んでいるところだ。
    流れ込んだガスは高密度星の周りに円盤を形成するが、これを「降着円盤」と呼ぶ。

    ミラと白色矮星の連星系が相互作用する様子を、X線観測衛星チャンドラ(CHANDRA)が捉えた。
    ミラは太陽の600倍の大きさにまで成長した巨星で、330日ほどで劇的に明るさを変える変光星として有名だ。
    巨星からはX線アウトバーストが観測され、また巨星と白色矮星とをつなぐように物質が流れている証拠も見つかった。
    下図で、左はX線画像で、右はミラの連星系の想像図だ。
     
         画像はCHANDRAのサイトからお借りしました。 → こちら

    アストロアーツ・ニュースに記事がある。 → こちら



    新星

    ガスの供給は長期にわたって持続するので、白色矮星の表面には次第に水素が堆積する。
    ガスは白色矮星の固い表面にぶつかって熱せられ、重力によって圧縮されて密度が高まっていく。
    やがて核融合反応を起こす条件が整って、白色矮星の表面全体で爆発が起こる。
    これが「新星(ノヴァ)」として観測される現象だ。
    この爆発は一度だけではなく、何度も起こる。
    ただし新しい水素すべてが燃え尽きるわけではない。
    従って徐々に質量が増加していく。



    a型超新星

    そしてある一定の質量を超えると、その重みに耐えられなくなり、核暴走反応が起こる。
    この限界質量は太陽質量の約1.4倍で、チャンドラセカールの臨界質量と呼ばれている。
    この核暴走反応が星全体に広がり、大爆発を起こすのが「a型超新星」だ。
    このタイプの超新星爆発では、全てが吹き飛んでしまい、中性子星は残らないと考えられている。
     

    限界質量は物理法則で決まっているために、爆発の規模がほぼすべて同じであることが期待される。
    実際には、明るくなった後に、減光していくその速さが速い超新星ほど暗く、ゆっくりなものほど明るいことが1990年代に明らかにされた。
    その結果、このタイプの超新星爆発の明るさが非常に厳密に求められるようになったのである。
    爆発の明るさがわかれば、観測されるみかけの光度と比較することで、その超新星までの距離を求めることができる。
    超新星は明るいため遠くにあっても観測できるので、遠方銀河の距離指標によく使われるようになった。


    ここでもう一度、近接連星の進化の様子をまとめてみる。
     
        画像は ESO Supernova のサイトからお借りしました。 → こちら



    鉄より重い元素の合成

    星の中で定常状態で静かに起こる反応では、元素合成は最も安定な鉄までしか進むことができない。

    それでは、鉄よりも重い元素はどうやってつくられるのか?
    その鍵を握るのは中性子である。
    中性子は電荷を持たないのでクーロン斥力が働かない。
    したがって、容易に原子核のそばまでたどりつくことができる。
    何らかの理由で中性子を作り出すプロセスがあれば、原子核は中性子を吸い、重い原子核になり、不安定な原子核になってベータ崩壊する。
    中性子の吸収と崩壊を繰り返しながら鉄よりも重い元素が作られていったと考えられている。

    鉄よりも重い元素の生成過程は主に2種類あると考えられている。
    遅い過程(s−過程、slow-process)と、速い過程(r−過程、rapid-process)だ。


    赤色巨星、正確には漸近巨星分枝(小質量の恒星が年老いた段階)と呼ばれる種族は、恒星が若い時代にはつくれなかった重い元素をつくることができるという。
    水素を燃やした後にヘリウム燃焼・ヘリウムフラッシュという現象が始まると、鉄より重い元素がゆっくりと中性子を捕獲しながら、より重い原子核が合成されることが知られている。
    つくられた粒子はその後、β崩壊して(鉄よりは重いが)安定な元素に落ち着く。
    このスロープロセス(s-process)のタイムスケールは約1000年で、文字通り、とてもスローなプロセスだ。
    「魔法の数」と呼ばれる特別な組み合わせの陽子数と中性子数をもつ、安定した元素がこのスロープロセスでつくられる。


    内部環境が急激に変化する状況では、定常状態では起こり得ないような反応も起こり、金や銀そしてウランなど鉄より重い元素が生成されうる。
    超新星爆発はまさにそのような状況で、鉄より重い元素は超新星爆発で合成されるというのが定説だった。

    重力崩壊型の超新星爆発ではニュートリノが大量に放射される。
    そしてそのニュートリノが中心に作られた原始中性子星から中性子をはがすということが起こる。
    鉄を核として、極めて短い時間にそれらの中性子が大量にくっついた結果、金、白金、ウランのような超重力級の元素ができるという。
    このプロセスは1秒以下とタイムスケールが非常に短く、早いため、ラピッドプロセス(r-process)と呼ばれている。
    中性子はβ崩壊する前にどんどんくっついていくので、これらの重い原子核になれるのだ。
    だが、このシナリオでは元素の観測量が十分に説明できないことが指摘されている。

    それに対し、最近は新しいシナリオが提案されている。
    そのひとつは、中性子星連星系の衝突・合体による元素合成だ。
    中性子星は況芯郷契映発によって誕生するが、2個の中性子星が互いを周回しているものも考えられる。
    中性子星連星系は、数億年かけて徐々に軌道を縮め、接近し、しまいには衝突・合体すると予想される。
    合体した後は高い確率で1個のブラックホールになる。
    そしてそのような衝突・合体の際には、あたりに飛び散った中性子が大量の重元素を作るはずだ。
    中性子星連星系の衝突・合体は、超新星爆発よりもずっと稀な出来事だ。
    しかし、1回の衝突・合体で作られる重元素が多いため、元素によっては超新星爆発よりも貢献が大きい可能性がある。

    重力波望遠鏡LIGOが、2017年8月17日に検出した重力波は、中性子星連星系の衝突・合体だった。
    そして様々な観測の解析結果は、重元素が大量生産されたことを示していた。
    中性子星連星系の衝突・合体は思っていたよりも稀な現象でないのかもしれない。

    鉄より重い元素の合成は、超新星爆発と中性子星連星系の衝突・合体、どちらでも実際に起こっているのだろう。
    そして、中性子星連星系の衝突・合体のほうがより貢献しているのかもしれない。

    LIGO のサイトでこんな表を見つけた。
     
         画像はLIGOのサイトからお借りしました。 → こちら


     
    参考図書
      ・「宇宙入門」、池内了、角川ソフィア文庫、2015年
      ・「輪廻する宇宙」、横山順一、講談社ブルーバックス、2015年
      ・「宇宙の物質はどのようにできたのか」、日本物理学会、日本評論社、2015年
      ・「宇宙はどのような時空でできているのか」、郡和範、ベレ出版、2016年
      ・「宇宙はどこまでわかっているのか」、小谷太郎、幻冬舎新書、2019年


     








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