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2020.10.20 Tuesday

宇宙物理学  量子力学

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    ***** 基礎物理学 > 量子論 *****

    宇宙物理学を勉強していくなかで、量子力学の方程式を実際に解くことはないだろう。
    まあ、やろうと思っても、量子力学の数学は非常に難しくて、まったく歯が立たないが、、、。
    でも雰囲気だけでも触れておきたいと思う。
    と言っても、内容はほとんど受け売りですが、、、(涙)。



    複数の量子力学

    実は、量子を表現する方法はひとつではない。
    ハイゼンベルクの行列力学、シュレーディンガーの波動力学、ファインマンの経路積分法などなど。
    見た目こそ違うが、これらはすべて同じ予言能力を持ち、量子を正しく記述するという。



    ハイゼンベルクの行列力学

    ヴェルナー・ハイゼンベルクの量子力学は、量子の位置と運動量を行列で表現することが特徴であり、それゆえ「行列力学」と呼ばれる。
    この理論はかなり形式的なもので、その直観的な意味は分かりにくい。
    しかし数学的な取り扱いには適しているので、専門家にはよく使われるそうだ。


    古典力学(ニュートン力学)では物体を質点として扱い、位置や速度を普通の数(実数)として表す。
    量子の位置や速度は確定した値を持たないために「量子本来の位置や速度」を普通の数で表すことはできない。
    一方で、量子を観測して得られる「測定された位置や速度」は普通の数で表される。
    ただし、1回の測定で得られる物理量を予言することは原理的にできず、物理量の分布に付随した平均や分散のような統計量ならば予言できる。

    ハイゼンベルクは、量子の位置と運動量を行列で表現することで、上記の量子の自然観が自動的に満たされることを見抜いた。

    行列は本質的にベクトルに作用する存在だ。
    ならば、行列で表現された位置や運動量が作用するベクトルとは何か?
    このベクトルこそが「位置や速度の分布」という情報を担う量子の状態そのもので、「状態ベクトル」と呼ばれる。
    不確定性関係を認めるなら、私たちが予言できるのは位置や運動量の平均や分散のような統計量だけなのだ。
    行列で表された位置や運動量とベクトルで表現される量子の状態(分布)を使って、測定される物理量の統計量を計算するのがハイゼンペルク流の量子力学だ。
     

    ある時刻に位置や運動量がどんな行列になっているかを予言するには、運動方程式が必要だ。
    古典力学の場合はニュートンの運動方程式であり、ハイゼンペルク流の量子力学では「ハイゼンベルク方程式」と呼ばれるものだ。
    この運動方程式を解いて位置行列と運動量行列を求め、そこから計算される統計量を通じて量子の運動を理解する。

    目には見えない量子の状態を「状態ベクトル」が表し、「行列」がそこから物理量を読み取る働きをする。
    量子力学が機能するには、両者が必要なのだ。

    ところで、「量子とは行列が運動するものである」と考えても、「量子とは状態ベクトルが運動するものである」と考えても、どちらでもよい。
    ハイゼンベルクの行列力学では、位置行列や運動量行列が時間変化するが、状態ベクトルは変化しない。

    シュレディンガーの波動力学では逆に、行列が動かずにベクトルが動く。
    計算方法やプロセスが全く異なるのに、結論は完全に同じになる。



    シュレーディンガーの波動力学

    ド・ブロイは、「波と固く信じられてきた電磁波(光)が粒子として振る舞うのなら、同じく粒子と固く信じられてきた電子は波として振る舞うのではないか?」と考えた。
    一般に量子論的考察に従った波を数学的な式で書いたものを「波動関数」と呼び、複素数で表現される。
    光子と違って電子は質量を持っているので、ド・ブロイ波は「電磁波」に対して「物質波」と呼ばれるようになった。

    エルヴィン・シュレーディンガーはド・ブロイ波の満たす「波動方程式」を考え出した。
    この「シュレーディンガー方程式」は今日でも広く活用されている。
    この波動方程式を解くと物質波が得られ、原子に当てはめて解くと、原子の中の電子の様子が分かるのだ。
    しかし複素数で表現された波は観測できるはずがなく、「架空の波」みたいなものだ。

    マックス・ボルンは、複素関数で表された物質波の絶対値の2乗が「粒子の存在確率」を表すという物理的解釈を考えた。
    これ以降、シュレーディンガーの波動方程式を解いて得られる波は、物質波とはいわず「確率波」と言われるようになった。
    電子のような小さな粒子が波として振舞うとき、その波は確率波になっているのである。
    なんとも奇怪な波だ。


    シュレーディンガーの波動方程式を解くことによって得られる量子の波は観測不可能であるが、実在波と同じような数式で表される。
    従って、通常の波と全く同じように振動数,波長,伝搬速度,振幅を持っている。
    さらに、この決して見ることのできない波は、スクリーン上に目にはっきりと見える干渉縞を描き出すのだ。


    シュレディンガー流の量子力学では、時間変化する状態ベクトルがまるで波のように振る舞うので、「波動力学」と呼ばれる。

    奇妙なことに、行列力学と波動力学という、見かけのまったく異なる2つの量子力学がほぼ同時に発見されたことになる。
    しかも、その見かけの違いとは裏腹に、実験を説明するという具体的な問題については、どちらも同じ結果を得たのだ。
    その後、数学的には同じもので等価的な理論だったことが判明した。
    波動力学は視覚的な理解を可能にし、馴染みの方法で計算できるので、物理学者こちらを使うことが多いようだ。
     
         図は佐藤 勝彦「量子論を楽しむ本(PHP研究所 (2000/3/31))」より引用



    ディラック方程式

    アインシュタインは質点の運動が特殊相対論に従うことを示したのだが、量子力学では粒子も波動の性質をもつ。
    それを記述する波動関数というものは一種の場と考えてもよい。
    波動関数はシュレーディンガーの方程式に従うが、これはニュートンの古典力学を量子力学に翻訳したものだから、特殊相対論の枠の中には入っていない。
    すなわちシュレーディンガーの方程式は非相対論的な量子力学にとどまっているのである。

    相対論的な量子力学の答えは、ディラックにより最初に与えられた。
    電子の波動関数を規定する「ディラック方程式」というのがそれである。
    ディラックの方程式はシュレーディンガーの方程式にはなかった新しい性質をいろいろ含んでいる。
    例えばディラックの電子はスピンという属性をもっていて、それはある意味ではコマのような自転を表すものとも考えられ、また光の偏光のような内部状態を表すものと考えてもよい。
    いずれにせよスピンは電子の固有角運動量に相当する。
    電子では上向きと下向きの二つの独立した状態があるが、どの方向を上と決めるかはもちろん勝手で、光の場合に偏光を互いに垂直な2つの方向に分解するのと同じ事情である。
    電子のスピンはディラックが初めて導き出したものではないが、ディラック方程式から自動的に出てきたことは、相対論的量子力学の輝かしい勝利であった。
    スピン以外にもう一つディラック方程式のもたらした新しい結果は「反電子」または普通「陽電子」と呼ばれている粒子の存在である。
    すなわち電子の状態に対して、逆の電荷をもった陽電子の状態もディラックの波動関数の中に含まれていたのだ。



    ファインマンの経路積分法

    行列力学とも波動力学とも異なる奇妙な形式の量子力学が1948年に提案された。
    考え出したのはリチャード・ファインマンだ。
    行列もベクトルも使わない。
     

    ニュートン力学の運動方程式では、物体の動きは最短経路になる。
    でもファインマンは、運動方程式にとらわれずに、可能性のある動きをすべて考える。
    「あったかもしれないことは、全部あった」と考えるのだ。
    そして、それをすべて考えた上で、それぞれの「効果」を足し合わせる。
    効果とは観測結果に与える影響のようなものと思えばよい。
    具体的には「作用凡関数」と呼ばれるものらしい。
    すべてのルートの効果を足すことで、最終的にどのように観測されるのかが計算できるというのが、ファインマンの考え方だ。

    可能性のある動きをすべて考えると言っても、無数にある経路のすべてが同じ割合で現実に寄与するわけではない。
    経路ごとに「実現されやすさ」が異なる。
    ファインマン流の計算でも、効果の小さいルートは現実の実験や観測に与える「効き目」が小さいので、結果的に無視できることになる。

    ニュートン力学では、あるひとつの経路だけが現実に寄与する。
    しかし量子の世界では、その周辺の経路が色濃く実現され、それ以外の経路はうっすらとしか実現されない、という結果になる。

    「経路積分法」と呼ばれるこの理論は、数学的取り扱いは不便な点もあるが、直観的な意味が分かりやすい。
    量子力学が確立されてから20年近くたった頃だったので、ファインマンは最初、自分がまったく新しい理論を提唱していると思ったそうだ。
    だが実質的にはこの理論も、シュレーディンガーやハイゼンベルグのものと同等であることが、まもなく証明された。


    この見方は、慣れ親しんだ古典力学と一見ミステリアスな量子力学の間に橋を渡してくれる。
    量子力学は「緩さ」を備えている。
    作用凡関数が最小になるような経路は確かに最も実現されやすい経路だが、そこからちょっとズレたような経路も十分に現実的だ。
    その緩さ加減を決めているのがプランク定数だ。
    古典力学とはプランク定数がゼロになった量子力学である、と言える。


     
    参考図書
      ・「宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体」、ブライアン・グリーン、(訳)青木薫、草思社、2004年
      ・「クォーク 第2版」、南部陽一郎、講談社ブルーバックス、1997年
      ・「量子力学はミステリー」、山田克哉、PHPサイエンス・ワールド新書、2010年
      ・「重力とは何か」、大栗博司、幻冬舎新書、2012年
      ・「目に見える世界は幻想か?」、松原隆彦、光文社新書、2017年
      ・「量子力学が語る世界像」、和田純夫、講談社ブルーバックス、1994年
      ・「「場」とはなんだろう」、竹内薫、講談社ブルーバックス、2000年
      ・「量子とはなんだろう」、松浦壮、講談社ブルーバックス、2020年


     








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