星空が好き、猫も好き

しばらく「宇宙物理学」のブログになります。
星空がきれいな晩はどこかへ出かけたいなあ

<< November 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

<< 宇宙物理学  量子論が考える真空とは | TOP | 宇宙物理学  多世界解釈 >>

2020.10.25 Sunday

宇宙物理学  プランクスケール

0
    ***** 基礎物理学 > 量子論 *****



    プランクスケール

    物理や化学では定数というのが出てくる。
    代表的なものを幾つか示す。 (数値は何故か出典によって多少異なっている。)
        h(プランク定数)=6.62607×10-34(m2・kg/sec)
        アボガドロ数=6.02214×1023
        真空の誘電率=8.85419×10-12(F/m)
        電子の電荷=1.60218×10-19(C)
        c(光速)=2.99792×108(m/sec)
        G(ニュートン定数)=6.67384×10-11(m3・kg-1・sec-2

    私も学生の頃は幾つかを必死で覚えたが、
    物理学者でも多くは大まかな桁数ぐらいしか言えないそうだ。

    ところで、こういう定数って、数値が半端で、しかも非常に大きかったり小さかったりする。
    それは、長さ,重さ,時間などが、メートル(m),キログラム(kg),秒(sec)という人間の都合で決められた単位を用いているせいだ。
     

    1900年にマックス・プランクが、3つの定数(光速c、重力定数G、プランク定数h)が全て1となるような長さ、質量、時間の単位を思いついた。
    この3つを選んだ理由は、以下の3つの自然法則が真に普遍的と考えられたからだ。
      ・宇宙のあらゆる物体の最高速度は光速cである。
       この最高速度制限は、光だけに当てはまる法則ではなく、自然の中にあるあらゆるものに
       当てはまる法則である。
      ・宇宙のすべての物体は、それらの質量とニュートン定数Gを掛けたものと等しい力で
       互いに引きつけあう。
       すべての物体とは文字通りすべての物体であり、例外はひとつもない。
      ・宇宙の中のどんな物体でも、その質量と、位置の不確定性と、速度の不確定性を掛けたものは
       プランク定数hより決して小さくならない。

    長さの単位は「プランク長」とか「プランク長さ」と呼ばれている。
    それは陽子の直径の10億分の1の、そのまた10億分の1の、そのまた100分の1で、
    約 1.6×10-35 メートルだ。
    陽子を太陽系のサイズまで拡大したとしても、プランク長さはウィルスほどの大きさにしかならない。
     
     

    時間の単位は「プランク時間」と呼ばれている。
    さらに考えられないほど小さなもので、約 5.4×10-44 秒だ。
    これは光が1プランク長を進むのにかかる時間になる。

    質量の単位は「プランク質量」と呼ばれている。
    プランク長さとプランク時間が人間の日常的なスケールからは信じられないほど小さいのに対して、プランク質量は人間が取り扱えるスケール内にある。
    その値は約 2.2×10-8 キログラムで、肉眼で見ることができる最も小さな物体、例えばほこりなどの質量とほぼ同じだ。



    プランクスケールの意味するもの

    長さと時間は、どこまでも細かくすることができると思っていたが、どうもそうではないようだ。
    どんどんこまかくしていくと、空間も時間もとびとびの構造が現れてくるらしい。
    その最小単位が、「プランク長」と「プランク時間」なのかもしれない。

    その世界では、重力の効果と量子現象の効果の重要性が等しくなってくる。
    大きな物体では、量子論や相対性理論は忘れて差し支えない。
    しかし、プランクスケールまで下りてくると、それを考慮に入れる以外に選択肢はなくなる。
    そんなスケールで宇宙を記述するには、量子重力論が必要なのだそうだ。



    ブラックホールとプランクスケール

    極微の世界を探るために、素粒子実験では粒子加速器を使う。
    高エネルギーで加速された粒子を衝突させることでミクロの世界が見えてくるのだ。

    エネルギーを高めれば高めるほど、解像度が高くなるので、粒子加速器はどんどん巨大化してきた。
    その最先端にあるのが、CERN(欧州原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)だ。
    一周27kmもある円形の装置内で陽子と反陽子を加速させ正面衝突させることで、≪100億×10億≫分の1メートルというミクロの世界を見ることができる。

    では、加速器のエネルギーを際限なく高めることができたとしたら、果てしなく小さなものが見えるのだろうか?
    特殊相対性理論の「E=mc2」を思い出してほしい。
    この式は、エネルギーが質量に転換されることを意味している。
    粒子同士が高エネルギーで衝突した瞬間、そこには「重いもの」が生まれる。
    極めて小さな領域に大きな質量が集中すると「ブラックホール」が生まれてしまい、「事象の地平線」の内側は見ることができなくなってしまうのだ。

    LHCの一京倍のエネルギーを実現できる加速器を考えてみよう。
    今の技術では、その加速器の半径は銀河系の厚みと同程度になってしまうので、これはあくまでも思考実験だ。
    そのエネルギーで加速した粒子の波長は≪1億×10億×10億×10億≫分の1メートルになる。
    これは、その粒子が衝突した際に生まれるブラックホールの大きさと同じになる。
    つまり加速器の分解能とブラックホールの大きさが同程度になって、観測したい領域が覆い隠されてしまうのだ。
    そこから先は、エネルギーを高めるほどブラックホールは大きくなるので、ますます意味が無くなる。
    従って加速器実験でミクロの世界を見る手法は、≪1億×10億×10億×10億≫分の1メートルで限界に達してしまう。

    実はこの大きさが「プランク長」なのだ。


    マックス・プランクは、光が粒だとする自分の理論と重力理論を組み合わせると、≪1億×10億×10億×10億≫分の1メートルが特別な長さとして表れるのに気がついた。
    この「プランク長」は、量子力学と一般相対論がどちらも同じぐらいの影響を及ぼす領域なのだ。


    また、レオナルド・サスキンドによると、プランクスケール(プランク長,プランク時間,プランク質量)は、存在可能な一番小さいブラックホールのサイズ,半減期,質量なのだそうだ。
    これは偶然の一致などでは決してない。
    ブラックホールは単なる天体ではなくて、宇宙の根源的なもののような気がしてならない。


    さらに

    さらに、クーロン定数とボルツマン定数も1になるようにすると、
    「プランク電荷」と「プランク温度」が追加される。
     

    いかなるものも、プランク温度より高い温度には到達できないらしい。
    すべての物質は温度を十分上げれば溶ける。
    もし世界のある領域がプランク温度に達したら、空間の幾何学の構造そのものが溶けてしまうと考えられている。


     
    参考図書
    ・「量子宇宙への3つの道」、リー・スモーリン、(訳)林一、草思社、2000年
    ・「対称性から見た物質・素粒子・宇宙」、広瀬立成、講談社ブルーバックス、2006年
    ・「宇宙のランドスケープ」、レオナルド・サスキンド、(訳)林田陽子、日経BP社、2006年
    ・「ブラックホール戦争」、レオナルド・サスキンド、(訳)林田陽子、日経BP社、2008年
    ・「不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?」、須藤靖、講談社ブルーバックス、2019年


     








    コメント

    コメントする









    ▲top