カラーマネージメントに関して、少しまとめてみました。
1.きっかけ
デジタルカメラで写真を撮って、PCで処理をして、ブログに投稿したりプリンターで印刷したりします。
さて、ディスプレイが表示した画像の色ってどうなっているのでしょうか?
自分のPC環境は、色を正しく表示しているのでしょうか?
さらには、ブログを見てくださる人は、自分と同じように見えているのでしょうか?
また印刷のときにプリンターの色が合わなくて四苦八苦します。
比較対象はディスプレイで見た画像の色ですが、それと印刷されたものとが違うのです。
またPhotoShopから印刷しようとすると、「カラー管理」だの「プリンタープロファイル」だのといった設定があります。
これは何でしょう?
そこで、カラーマネージメントを少し勉強してみました。
以下の本が参考になります。(「星の牧場」のよっちゃんさんがお勧めしていました。)
・「すぐにわかる!使える!!カラーマネージメントの本」
上原ゼンジ著 毎日コミュニケーションズ
でも結構難しいです。
理解できた範囲で、私なりにまとめてみました。(おかしな箇所はご指摘下さればうれしいです。)
2.RGBって?
画像データの基本は「RGB」です。
3原色のそれぞれは8bitが基本なので、0から255までの256階調で表現します。
そして、256×256×256で1677万7216種類の色の組み合わせができます。
例えば「R=255,G=0,B=0」は「赤」ですが、「赤」と言ってもいろんな色が存在しますよね。
どの色なのでしょうか?
実は「RGB」は相対的な定義なのだそうです。
一方で、CIEカラーという絶対的な色の定義というものが存在しているそうです。
そこで、「RGB」とCIEカラーとの対応が定義されています。
でも、この定義は1種類ではなく、様々な色空間(カラースペース)があります。
よく耳にするのは「sRGB」と「AdobeRGB」でしょうか。
下の図のようなものを一度は見たことがあるでしょう。
同じ「RGB」でも、両者の色は異なるのです。
3.ICCプロファイル
3.1 色はデバイス依存
さらに色は厄介な性質を持っています。
出力装置であるディスプレイもプリンターも、その色がデバイスに依存するのです。
つまり機器によって色が変わってしまうのです。
ディスプレイだけを交換して、設定や調整を行なわなければ、同じ色を表示してくれません。
メーカーや機種によって、3つの原色の色が違うだろうから、当たり前の話です。
印刷では、インクの種類や銘柄、さらには印刷する紙が千差万別なのだがらこれも当たり前の話です。
プリンターでは、機種毎になにやらインストールをし、使用する紙によって設定を変えなければならないのは、そのためなのです。
3.2 ICCプロファイル
このやっかいな相対的表現を絶対的表現に変換するときに使うのがICCプロファイルなんだそうです。
これは、独立したファイルで存在する場合と、画像データなどに埋め込まれる場合があるそうです。
画像データなどに埋め込まれたプロファイルには、どの色空間で定義したものかが記述されているんじゃないかと思います。
ディスプレイのプロファイルは、WindowsXPでは以下をたどると分かります。
「コンパネ」→「デスクトップの表示とテーマ」
→「画面(のプロパティ)」→「設定」→「詳細設定の色の管理」
プリンターでは、いわゆる「プリンタードライバー」なるものがそれに相当するのでしょうか?
4.画像の表示とCMS
コンピュータでカラーマネージメントを行なっているのがCMS(Color Management System)です。
「画像ファイルを開いてディスプレイで見る」という場合、CMSは受け取った画像ファイルの色に以下の4つの処理を加えてディスプレイに送信するそうです。
1.画像ファイルに埋め込まれたICCプロファイルを読み込みます。
2.画像ファイルのICCプロファイルを基に、相対的色空間から絶対的色空間に変換します。
3.ディスプレイのICCプロファイルを基に、絶対的色空間からディスプレイの色空間に変換します。
4.ディスプレイのICCプロファイルを基に、ガンマ補正を行います。(GPUやビデオカードの作業)
4.1 Macintosh (Mac)
マックでは、CMSである「ColorSync」がシステムの基幹部で動作し、全ての色を総合的に管理しているため、完全なカラーマネージメントがなされるそうです。
だから昔から、画像を扱う人はマックなんですね。
4.2 Windows (OSがXPやVistaの場合です)
一方でウィンドウズでは、OSやアプリケーションによって、上記の4つのプロセスがきちんと行なわれるわけではないそうです。
・ブラウザ
・IE(Internet Explorer)は、ほとんどカラーマネージメントができていないようです。
・Vista以降での「Safari」や「Firefox」では、1〜3はきちんと行なわれるようですが、4はダメ?
・XPではどうなんでしょう?
・一般用アプリケーション
・XPでは、ディスプレイの色空間への変換が正しくできないようです。
・Vista以降では、ディスプレイの色空間への変換も正しくできるようですが、4はダメ?
・PhotoShopは、1〜3はきちんと行なわれるようです。
・4を正しく行なうには、ガンマ補正データを与える必要があるようです。
・キャリブレータや、モニタ補正ユーティリティ(AdobeGammaなど)を使用します。
マイクロソフトは当初、全てのデバイスを「sRGB」という色空間で統一しようと考えたようです。
そうすれば、色空間の変換などは必要無いですからね。
VistaでCMSを一新したそうですが、まだまだ発展途上のようです。
5.同じ画像を見て、同じように見えるだろうか?
ここでは、同じ画像ファイルを見たときに、皆が同じように見えるのかどうかを考えてみます。
影響を及ぼす要因とその内容を簡単に述べます。
5.1 ディスプレイの設定
設定は主に以下の3点です。
・色温度
・ガンマ値
・ブライトネス(明るさ)
これらの設定が異なっていると、同じ画像ファイルを見ても、色合いやコントラストや明るさが違って見えます。
参考にした本によると、Web用の設定は色温度が6500Kでガンマ値が2.2というのがルールだそうです。
5.2 ディスプレイのキャリブレーション
上記の設定を同じにしても、機種によって見え方は同じでなく、また経時変化で変わっていきます。
そこで、厳密にはキャリブレーションという作業で調整を行なう必要があるそうです。
でも、私はそこまではやっていません。
「Adobe Gamma」を使って、目視でブライトネスやガンマを調整しています。
・これはPhotoShopと一緒に自動でインストールされます。
・でも実際にやってみると、目視での調整は悩ましいものです。
・この調整は、WindowsXPではPhotoShopだけにしか効かないのかも?
5.3 画像を見るソフト
PhotoShop と IE(Internet Explorer)とでは、同じ画像ファイル(「sRGB IEC61966-2.1」というプロファイルを埋め込んでいる)でも少し違って見えます。
色合いの差はさほど大きくはないのですが、コントラストは IE のほうが強めになります。
これは、PhotoShop はカラーマネージメントに対応しているのですが、IE が対応していないためと思います。
なお、ブラウザでは「Safari」や「Firefox」はカラーマネージメントに対応しています。
プロファイルが「AdobeRGB」の場合はちょっと注意が必要です。
例題の画像を「ブラウザ」の項に用意しました。
5.4 部屋の環境
明るい部屋と暗い部屋とでは、特に画像の明るさが違って見えます。
また蛍光灯には、色温度だけでなく、DTP作業に向いているかどうかの指標があるそうです。
5.5 画像の背景
同じ画像でも、背景によって見え方が異なります。
顕著な例では、白地に置いた場合は暗く見え、黒地に置いた場合は明るく見えるでしょう。
背景に色が付いている場合は、画像の色合いの見え方にも影響を及ぼすと思います。
Webでは人それぞれに背景(background)を設定していますよね。
5.6 人間の目
同じようなものを見ていると、見え方が変わってきます。(私だけでしょうか?)
暗い画像ばかり見ていると、だんだん明るく感じてきます。
これは順応性でしょうか?
色合いはもっと複雑です。
微妙な色合いの画像では、しばらく経ってから見ると異なる色合いに感じることがあります。
これは目ではなくて脳の範疇なのでしょうね。
5.7 まとめ
厳密に言えば、様々なことに対処しなければ、同じには見えないでしょう。
でもブログの閲覧などでは、作る側も見る側も、そこまでは求めていない場合が多いのではないでしょうか?
画像の色合い
・注意点はディスプレイの設定だと思います。
・作る側と見る側の設定が同じかどうかがポイントです。
・でも、作り手の設定は分かりませんよねえ。
・画像のプロファイルが「AdobeRGB」の場合は、使用するブラウザにも注意が必要です。
・この場合は、作り手が注意を喚起するのが良いのではないでしょうか。
画像のコントラスト
・違いに対して見る側の寛容性が大きいので、あまり問題は無いのではと思います。
・自分のPC環境(Windows)として、XPから卒業すべきと感じました。
画像の明るさ
・影響を及ぼす要因がとても多いのですが、そんなものだと皆さん分かっていらっしゃるでしょう。
・人間の目(脳)が適度に補正してくれるだろうし、、、。
6.ブラウザ
異なるプロファイルを埋め込んだ画像が、ブラウザでどのように見えるかの実験です。
・左は、「sRGB」のプロファイルを埋め込んだ画像です。
・右は、プロファイルを「AdobeRGB」に変換して埋め込んだ画像です。
PhotoShopでプロファイル変換を行ないました。
・プロファイル変換しても、画像は同じように見えますが、「RGB」の値は変わっています。
Windows の IE(Internet Explorer)で見ると、左右の画像は違って見えるはずです。
・上の画像は差が僅かですが、下の画像は差がはっきり分かると思います。
・画像に埋め込まれたプロファイルは無視されて、右の画像も「sRGB」として扱われているのです。
・ちなみに私の環境は、OSはWindowsXPで、IEのバージョンは8です。
・マックのIEは、環境設定でカラーマネジメントが切り替えられるそうです。
WindowsXPでも、「Safari」や「Firefox」などでは、左右の画像は同じに見えるはずです。
・これらのブラウザは、カラーマネージメントに対応しているからです。
・PhotoShopで見た画像と同じように見えます。
ブラウザがこのような状況にあることは知っておいたほうが良いと思います。
7.画像データの扱い
7.1 キヤノンのデジタルカメラのJPEG
デジタルカメラのJPEG画像にはICCプロファイルが埋め込まれていると思っていました。
しかし、デジタルカメラのマニュアルによると、ICCプロファイルは付加されないと書かれています。
そこで、「お客様相談センター」へメールで問い合わせてみました。(2011.07.20)
回答の要旨は、
・プリンタへは、レタッチ情報を含めたICCプロファイルを伝えた方がよい。
・だからカメラでは付加していない。
・「sRGB」の場合は、埋め込む必要がない。
・「AdobeRGB」の場合は、DPPで「変換して保存」で埋め込んで欲しい。
やはり埋め込まれていないようなので、画像ファイルを調べてみようと思いました。
だけど、ICCプロファイルを直接調べる手法が分かりません。
私の場合は、画像データを「EOS Utility」で取り込んでいます。
・この時点での画像ファイルのプロパティを見ると、
・「sRGB」で撮影したものは、色の表現は「sRGB」になっています。
・「AdobeRGB」で撮影したものは、色の表現は「未調整」になっています。
・これは、Exifが持っている色空間の情報と思われ、ICCプロファイルの有無は不明です。
・PhotoShopで画像を開くと、
・「sRGB」で撮影したものは、埋め込みプロファイル無しのアラームは出ません。
・プロファイルは、作業用スペースと同じ「sRGB IEC61966-2.1」と表示されます。
・「AdobeRGB」で撮影したものは、「AdobeRGB(1998)」が埋め込まれていると表示されます。
・ただし、これもExifが持っている色空間情報を利用しただけかもしれません。
この後に「DPP」が立ち上がって、星空の写真以外は名前を付け直して保存しています。
・この時点での画像ファイルのプロパティを見ると、
・「AdobeRGB」で撮影したものも、色の表現は「sRGB」になっています。
・DPPがプロファイル変換を行なったということでしょうか?
・PhotoShopで画像を開くと、
・「sRGB」で撮影したものは、プロファイルは「sRGB v1.31(Canon)」になっています。
・「AdobeRGB」で撮影したものも、プロファイルは「sRGB v1.31(Canon)」になっています。
・これは明らかにDPPがプロファイルを埋め込んでいます。
キヤノンのICCプロファイルの考え方はよく分かりません!
DPPが生成する謎のプロファイル「sRGB v1.31(Canon)」
・キヤノンのプリンター向けのプロファイルのようです。
・「sRGB IEC61966-2.1」との差は小さいそうです。 → ということは同じではないということです。
星空の写真の場合は、PhotoShopで処理をして、ICCプロファイルを埋め込んで別名で保存しています。
・プロファイルは「sRGB IEC61966-2.1」です。
7.2 キヤノンのデジタルカメラのRAW
RAWデータは、
・RAWデータには、ICCプロファイルは無いようです。
・でもExifが色空間の情報を持っています。
・RAW現像を行なってPhotoShopに画像データを引き渡すときにプロファイルが作られるようです。
・DPPのマニュアルにもそう書いてあります。
・DPPでもプロファイルは「sRGB IEC61966-2.1」になります。
・「AdobeRGB」で撮影した場合は未確認です。
星空の写真の場合は、PhotoShopでICCプロファイルを埋め込んで別名で保存しています。
・プロファイルは「sRGB IEC61966-2.1」です。