最近公開している星野写真の画像処理に関して記述します。
ただし、まだ試行錯誤している部分が多いので、自分の備忘録的な意味合いが強いです。
ご意見等を頂けたら嬉しいです。
昨日の記事の画像「いっかくじゅう領域1b」を例題にします。
最初に大まかなフローを記述して、それから各ステップの詳細を説明します。
[0] ダーク減算 (注)今はダーク減算は行なっていません。
[1] Raw現像
[2] コンポジット
[3] フラット補正
[4] カブリ補正
[5] トーンカーブを使ったコントラスト強調
[6] StellaImageでの色彩強調,スターシャープ処理
[7] レベル補正を使ったコントラスト強調
[8] 明るさ調整、色合い調整
一番手間がかかって何度もやり直す部分は、[4]のカブリ補正です。
実際は[5]のコントラスト強調を行なった画像の状態を見て、パラメータ等を追い込んでいます。
コンポジットした画像をベースにして、それ以降の処理ステップは、Photoshopのレイヤーとして保存しています。
でもファイルが凄く大きくなるのですよね。
この例題の場合(60Da,16bit)は477MBにもなっています。
レイヤーの状況を下にお見せします。
上で説明したフロー以外にも、途中で変な処理をしていますが、あまり突っ込まないで下さいね。
ここからは、各ステップの詳細な説明をします。
[0] ダーク減算
ダーク減算で低減できるのは固定パターンノイズであり、ランダムノイズは低減できないと考えています。
ランダムノイズを低減するには、ライトフレームを数多くコンポジットすることが重要です。
またイメージセンサの温度を下げることも重要で、冬場の撮影は有利です。
私は星野写真の撮影に60Daを使っていますが、このカメラはノイズが少ないので、今はダーク減算は行なっていません。
夏場になったら、もう一度考えてみようと思っています。
RGB画像にする前にダーク減算すべきと思うので、やるならRAP2を使うことになるでしょうかね。
[1] Raw現像
Raw現像は「Camera Raw Ver.6.7」を使っていますが、とても気に入っています。
この後でフラットフレームを使ったフラット補正を行なうので、ここではコントラスト強調等は一切行ないません。
ここで設定するパラメータは、
・カメラプロファイル → Camera Neutral
・レンズ補正 → ゆがみ補正、色収差の除去、フリンジ低減 (周辺減光補正はOFF)
・シャープ処理、ノイズ低減処理
・色合い調整(色温度、色かぶり補正) → 背景をニュートラルグレーにする
・露光量調整 → ヒストグラムのピークが64になるようにする
・コントラストは0、トーンカーブはリニア
・ビット数は16bit
ヒストグラムのピークが64になるように調整しているのは、一連の星野写真で処理を同じようにするためと、フラットフレームを使ったフラット補正のためです。
64という値が適切なのかどうかは、まだ判断できていません。
淡い星雲などが対象の場合はもっと大きな値にしたほうが良いでしょうか?
連続して撮影した画像でも、空の状態等によって画像の状態が変化していきます。
色合いと露光量は1枚毎に調整しています。
[2] コンポジット
8枚の画像を、トーナメント方式で加算平均してコンポジットしています。
StellaImageでは何故かうまくいかないので、Photoshopで手動で行なっています。
各画像は微妙にずれている(数ピクセル程度)ことがあるので、フィルターのスクロール機能でシフトさせてから合成します。
[3] フラット補正
星野写真に限らず、星空写真の背景は、明るさも色合いも均一にはなりません。
要因も症状も単純ではなくて、複数のことが複雑に絡んでいます。
・光学系の周辺減光
・イメージセンサやフィルターに起因したムラ
・街明かり等によるカブリ
2番目のものは、最近私が特に気にしているもので、過去に実験記事を書きました。
・カメラとレンズの組み合わせによっては、画像の周辺部で色バランスが崩れることがある
→
記事はこちら
・LPS-P2フィルターによって、画像周辺部の色バランスが崩れる
→
記事はこちら
最初は、これらを一気にグラデーションツールを使って補正しようとしました。
しかし、天の川の領域ではムラのように見えるのが実在するものかどうかがとても悩ましいです。
補正によって消してしまったり作りこんでしまったりしそうです。
そこで、1番目と2番目はフラットフレームを使ってフラット補正することにしました。
フラットフレームとライトフレームは、色合いと明るさが同じことが要求されると考えています。
そこで以下のようにフラットフレームを作りました。
光源には、ライトパネル(キャビン製のCL-5000N(光源は冷陰極管))を使用しました。
レンズのフォーカスは無限遠にして、絞りは撮影条件(F4.0)にします。
ISO感度は撮影条件(1600)にして、ヒストグラムのピークが64程度になるように露光時間を調節します。
全ての撮影条件がライトフレームと同じにできれば良いのですが、露光時間を犠牲?にすることになりました。
実際の露光時間は1/8000秒になってしまったのですが、これで大丈夫なのかちょっと不安があります。
ライトパネル上のレンズの位置をいろいろと変えて16枚撮影し、ライトフレームと同様にRaw現像して、コンポジットします。
なお、Raw現像ではニュートラルグレーに補正しきれなかったので、レベル補正のホワイトバランスツールで調整しました。
下に示すのが出来上がったフラットフレームです。
一連の星野写真で共通に使います。 (だからセンサー上のゴミ等は除去できません。)
実際に使う時は、明るさや色合いをライトフレームに合わせて微調整します。
フラット補正前の画像
フラット補正後の画像
補正後の画像を見ると、四隅が少し赤っぽくて、補正過剰になっているような気がします。
そこで今回は、フラット補正後の画像を不透明度60%で合成しています。
このあたりは今後の課題だと思っています。
なお、実際の演算は「ぴんたんさんのFlatAide」を使わせて頂きました。
元画像とシェーディング画像をそれぞれ指定して、以下のような条件で実行しています。
このフラット補正は、コンポジットした画像に対して行なっています。
1枚毎にフラット補正して、それからコンポジットしたほうが良いのですかね?
また、銀河(天の川)から遠く離れた領域の場合などは、フラットフレームを使わずに「ぴんたんさんのFlatAide」で一気に補正することもあります。
[4] カブリ補正
街明かりなどによって、明るさや色合いに偏りが生じてしまいます。
これを「カブリ」と呼んでいますが、写野が広いほどその影響は大きくて、補正が厄介です。
私は今のところ、 Photoshop でグラデーションマスクを使って、手作業で補正しています。
グラデーションマスクの使い方に関しては、よっちゃんさんのブログ「星の牧場2」で詳しく説明されているので参考にされると良いでしょう。
→
ブログはこちら 2013.01.02の記事です。
今回の作例では、補正しなければならないカブリは少なかったです。
それよりも、四隅の微妙な赤さが気になったので、それを補正しました。
上述のフラット補正がうまくいっていない証拠で、お恥ずかしい限りです。
なお、実際の補正は、この後のトーンカーブによるコントラスト強調を行なった画像を見ながら行ないます。
コントラスト強調前だと、画像が軟調で何が何だか分かりません。
また客観的な判断をするために、補正したい領域のヒストグラム(RGBそれぞれ)を見ながら行なうのが良いと思います。
補正前と補正後の画像(トーンカーブによるコントラスト強調を行なったもの)を示しますが、微妙な差なのでよく分からないかもしれません。
補正前
補正後
左下の領域(400ピクセル角)のヒストグラム 左が補正前で、右が補正後
長くなったので、今日はここまでとします。