2013.07.31 Wednesday
宇宙物理学 一般相対性理論
「特殊相対性理論」に続いて「一般相対性理論」です。
アインシュタインさんが一般相対性理論に取り組んだ時、ニュートンの重力の法則をどう扱うかが問題だったそうです。
ニュートンさんは重力は瞬間的に働くと想定していました。
しかし、特殊相対性理論で明らかになったように、何物も光より速く伝わることはできません。
また物質でなくても、あらゆる形態のエネルギーは有効質量(つまり何らかの重さ)があることを特殊相対性理論で発見していたのですよね。
アインシュタインさんは、重力は加速度と等価であることに気づきました。
ある宇宙飛行士が上向きに毎秒9.8mの割合で加速度を増す部屋にいるとしましょう。
これは地球表面で落下している物体が受ける重力加速度と同じ大きさです。
話を簡単にするために空気抵抗は無視できるとします。
この宇宙飛行士が金槌と羽を床から同じ高さのところで手放すと、床に同時に落ちます。
でもこれを外部から覗くと、金槌と羽は動かないまま浮かんでいて床が急上昇するように見えるでしょう。
つまり重力と加速度とは識別不可能なのです。
これを「等価原理」と呼びます。
車などで急カーブを曲がるときに遠心力を感じますが、実はそのような力は存在しないそうです。
全ての重さのある物体は、いったん動き始めると一定の速さで直線上を動き続ける性質があります。
「慣性」と呼ばれるこの性質のために、遠心力を感じるのです。
重力に関しても同様で、そのようなものは存在せずに、物体は単に慣性の結果として運動しているにすぎないと考えたそうです。
でも、地球は太陽の周りを廻っていて、直線運動しているわけではないですよねえ。
直線は二点間の最短経路だというのは、平らな紙の上では真実です。
でも重力が存在するところでは空間は湾曲して、最短経路は曲線になるのです。
だから、地球は太陽の周りを廻り、光でさえ曲がるのです。
重力とは4次元の時空が歪んだものなのですが、残念なことにこれを視覚化するのは不可能です。
時空を通過して「最もまっすぐな」経路に沿って運動している物体は、自由落下しているのです。
そして自由落下しているから重力を経験しないのです。
地球は太陽の周りで自由落下しているので、私たちは地球上では太陽の重力を感じません。
国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士は、地球の周りで自由落下しています。
だから彼らは地球の重力を感じないのです。
重力が生じるのは、物体が自由な運動に従うことを妨げられたときだけです。
地球にいる私たちの自然な運動は、地球の中心に向かう自由落下です。
でも地面がそれを妨げるので、私たちはその力を身体に感じて、それを重力として解釈しているのです。
物質は時空を歪ませ、そしてこの歪んだ時空は他の物体に影響を与えるのです。
このアインシュタインさんの考え方をどのように感じられましたか?
目から鱗と感じられましたか?
詭弁のようで眉唾物だと感じられましたか?
時空と物質とが相互に関係し合う、つまり時空と物質とを統一した理論が一般相対性理論です。
一般相対性理論の最大の成果は、物質の存在によって周囲の時空が曲がることを明らかににした点だそうです。
これを表す方程式を、「重力場の方程式」または「アインシュタイン方程式」と呼びます。
左辺全体としては、時間と空間の幾何学(曲がり)を表しているそうです。
右辺全体としては、物質やエネルギーの分布の効果を表しているそうです。
時空の曲がりをイメージするのは難しいので、2次元平面の曲がりに置き換えて、2次元の薄いゴムシートで説明されることが多いですよね。
ゴムシートの上に鉄球を載せると、ゴムシートは下にたわみます。
これが物質によって時空が曲がった状態です。
画像はWikipediaよりお借りしました。
次にゴムシートの上に2つの鉄球を少し離して置くと、ゴムシートはやはり下にたわみます。
そして同時に2つの鉄球はたわみに沿って移動して近づき、最終的にはくっついてしまいます。
実はこれが万有引力と呼んでいる力が働くしくみなのです。
時間と空間に分けて考えると、次のようになるそうです。
物質があると時間の進み方が遅くなる。
物質があると周囲の空間が曲がる。
光は曲がった空間の中で最短コースをとって進みます。
これを少し離れたところから見ると、光が曲がって進むように見えるのです。
太陽の表面付近では時空が100万分の1ほど曲がっているそうです。
これは太陽の表面付近を通過する光の進路が360度の100万分の1ほど曲がることを意味します。
日食の際に太陽の周囲に見える星の位置を調べて、その位置のずれから一般相対性理論の正しさが証明されたことは有名ですね。
また時間については、太陽の表面付近では100万分の1ほど時間の進み方が遅くなるそうです。
火星が太陽をはさんで地球のほぼ反対側にあるときに、火星にレーダー信号を送ってその往復時間を測定するという実験が1960年代に行なわれました。
レーダー信号の往復時間が250マイクロ秒(1万分の2.5秒)だけ長くなることが確かめられたそうです。
特殊相対性理論を改良して一般相対性理論を生み出すのに、アインシュタインさんは10年もの長い歳月をかけています。
これは、時空の曲がりを記述するためのリーマン幾何学の習得に時間がかかったためだそうです。
私たちが学校の数学で習うのはユークリッド幾何学です。
三角形の内角の和は180度であるという定理が成り立つ空間です。
でも、地球儀で赤道上の2点と北極点とをつないだ三角形では、内角の和は180度よりも大きくなります。
このように曲面(曲がった平面)や曲がった空間における幾何学の理論がリーマン幾何学で、これは当時の最先端の数学理論でした。
参考図書
・相対性理論から100年でわかったこと
(佐藤勝彦さん、PHPサイエンス・ワールド新書、2010年10月発行)
・量子論で宇宙がわかる (マーカス・チャウンさん(訳:林一さん)、集英社新書、2011年12月発行)