2020.08.30 Sunday
宇宙物理学 HR図
***** 宇宙の構造 (2) 天の川銀河内 > 恒星 *****
HR図
正式には「ヘルツシュプルング・ラッセル図(Hertzsprung-Russell diagram)」と言うが、学校で習った記憶がないだろうか?
縦軸に絶対等級、横軸にスペクトル型(表面温度)をとった恒星の分布図のことだ。
デンマークのエニュア・ヘルツシュプルングさんとアメリカのヘンリー・ラッセルさんの2人の天文学者によって提案されたので、頭文字をとって「HR図」と呼ばれてる。
元々のHR図では横軸は星のスペクトル型をとるが、星の表面温度を用いる場合もある。
縦軸の絶対光度とは、天体が仮に我々から見てある基準となる距離(10パーセク(約32.6光年))にあったとしたときの明るさだ。
スペクトル型は「Oh Beautiful American Fine Girl Kiss Me」と高校生のときに覚えたが、皆さんはどうだろう?
その後、赤外線を観測できる望遠鏡によって褐色矮星が発見され、1999年以降はL型とT型の2つの区分が加わっている。
そして広視野赤外線探査衛星と呼ばれる赤外線衛星が、さらに温度の低いY型に分類される星を発見した。
このHR図でいろいろな恒星の明るさと色合いをプロットしてみると、まんべんなく分布するのではなくて、いくつかのグループに分かれる。
大部分の星は図の左上(明るくて高温)から図の右下(暗くて低温)に延びる狭い帯状の領域に集中してしまう。
この帯状に集まった星のグループを「主系列」と呼ぶ。
これらは中心部で水素の核融合反応が安定に進行している星で、いわゆるふつうの星たちだ。
太陽も(今は)この主系列星に属している。
星は一生の90%ほどの期間を主系列星として輝くそうだ。
主系列の帯のどのあたりに位置するかは、主に星の質量で決まる。
質量が大きいほど左上に、小さいほど右下に位置する。
また星の寿命もその質量で決まる。
私たちの太陽の寿命は約100億年といわれている。(現在は半ばにさしかかったところだ。)
太陽の2倍の質量をもつ星は、太陽の10倍の明るさで輝き、約20億年で寿命を迎える。
質量が5倍の星は約1億年、10倍の星は約2600万年、100倍の星は約270万年だそうだ。
太陽の半分の質量の星は1700億年、10分の1の星は数兆年も寿命があるそうだ。
主系列に属さない星の大半は、主系列の右上と左下にさらに2つのグループをつくる。
右上のグループに属するのが、表面温度が低いのに明るい星で、老齢期を迎えて太った「赤色巨星」だ。
それらの中でもベテルギウスのように特に大きな星は「赤色超巨星」と呼ばれている。
左下のグループに属するのは、表面温度は高いのに暗い星たちで「白色矮星」と呼ばれている。
シリウスの伴星(シリウスB)はこの白色矮星で、太陽と同じくらいの質量があるのに、半径は地球と同程度しかない。
私は知らなかったのだが、青色超巨星というものもある。。
直径が太陽の数十倍以上あり、光度が太陽の1万倍(全エネルギー放射で太陽の10万倍)以上もあるそうだ。
リゲルはこの青色超巨星だ。
プレアデス星団(若い散開星団)のHR図
画像は New Mexico State University のサイトからお借りしました。 → こちら
横軸が一番上の図と少し違うが気にしないで欲しい。
プレアデス星団は誕生してから数千万年程度の若い星の集団で、約15光年の広がりの中に数千個もの星がある。
肉眼でも見える明るい星は青く輝く高温の星で、太陽の数倍以上の質量を持っていて、表面温度が1万5000度以上もある。
これらの星は、主系列星の左上に位置している。
そして明るさと温度がほどほどの星や、低温で赤くて暗い星もちゃんとあり、主系列の帯がしっかりできている。
ただし、赤色巨星は無い。
最近の赤外線望遠鏡の観測によると、プレアデス星団の中に褐色矮星がたくさん見つかっている。
これらの星は低温であるため赤外線を放出しているが、それを捉えるためには赤外線望遠鏡でなければ観測できないのである。
このHR図は、生まれてまもない星がどのような様子なのかを教えてくれる。
光度も温度も高い状態で生まれる星もあれば、光度も温度も低い状態で始まる星もあるのだ。
ただそういうふうに生まれているのだ。
M13(球状星団)のHR図
画像は NASA の APOD からお借りしました。 → こちら
球状星団はどの星も古い。
写真の大部分を占めるのは、最も明るい赤色巨星だ。
HR図は、主系列から左上側の青っぽい星を除き、主系列でない赤色巨星を加えたものとなる。
主系列では光度が低く温度も低い天体しかない。
主系列の左上側の星も生まれたであろうが、すでに赤色巨星になってしまったのだ。
??? 中段左側の青っぽい部分はよく分からない。
参考図書
・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
・「宇宙へようこそ 宇宙物理学をめぐる旅」、ニール・ドグラース・タイソン 他、(訳)松浦俊輔、青土社、2016年
・「宇宙の果てを探る」、二間瀬敏史、洋泉社、2009年
・「宇宙へようこそ 宇宙物理学をめぐる旅」、ニール・ドグラース・タイソン 他、(訳)松浦俊輔、青土社、2016年